殺し屋?いいえうちの嫁です 番外編:『殺し屋ユリア』の過去

沙水 亭

第1話『ユリア』と『血染めのシンデレラ』と『カレン』


「姉さん、まだ怒ってるの?」

「…言ったわよね、貴女にこの道は望ましくないって」

ジュリアは珍しく怒っていた。

「それでも私はやりとげるつもりだ」

ユリアは真剣な眼差しでジュリアに言った。

「…最後の忠告よ、ユリア」

ジュリアも真剣な眼差しで忠告した。

「貴女が進もうとする道は人を『殺める』道、それがどれくらい辛いか…貴女にはわかるはず…それでも進むと言うなら私は止めない」

「進むさ、私はまだ『若い』からな」

満面の笑みだった。

「…はぁ、進んで欲しくなかったなぁ」

「姉さんは過保護過ぎる」

「だってぇ」

「大丈夫、姉さん私ももう立派な大人だから」

「うぅぅぅ…わかったわよぉ、行ってらっしゃい」

ジュリアは耐えきれなかったのか涙を流し鼻声になった。

「…行ってきます、姉さん」

こうしてユリアは旅立った。


「…カレンちゃぁん」

ジュリアは後輩にして信頼のおけるカレンに電話した。

『…なんですかBOSS、今映画が超良いとこなんですけど』

お気に入りの映画を鑑賞中のカレンは少し不機嫌だった。

「ユリアがぁ…組織に入ってたぁ…」

ジュリアは涙しながらカレンに愚痴っていた、その光景はまるで酔っ払ったOLのようであった。

『そう言えばそうでしたね、たしかSランク合格で』

組織の入会試験にはランクが存在している。

ランクはE~Sで構成されていて、 Eランクは一番下っ端の仕事しかまわってこない。

しかしAランクにもなると危険人物の暗殺、テロ組織の鎮圧など幅広く仕事を受け持つことができる。

そしてSランクに到達すると重要人物の警護、悪質な大統領の暗殺など世界的に影響を与える仕事を依頼される(指名で)。

「Sランク!?なんで私に言ってくれなかったの~」

『知りませんよ、私は映画に夢中なんですよあっ、この俳優結構好み』

「聞いてよ!?」

『はぁ~、BOSS流石に過保護すぎますよ。ユリアはユリアなりに目指す道を決めたんです、静かに見守るのも姉の務めなのでは?』

「…そうなのかなぁ」

『そんなもんですよ』

「…ありがとうカレンちゃん、ユリアをよろしくね」

『はいはい…え?ユリア?ちょっとボ…』

プツン。

「よしユリアのことはカレンちゃんに任せよう」

その後一週間カレンがユリアに手を焼くことになる。

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