第20話
翌日の午後、早速佐原さんから電話があった。
僕は学食で昼食を済ませ、大学の図書館に歩いて向かっている途中だった。
佐原さんは仕事のお昼休みを利用して電話をしてきている様だった。
『律君、今大丈夫?話せる?』
『はい、大丈夫です』
『こんな風に電話で話すと何か変な感じね。ほぼ毎日職場では会って話してるのに』
『そうですね、何か新鮮な感じです』
『うん、ちょっと違う雰囲気だね。』
そう言った後、佐原さんはしばらく無言になった。
ちょっと居心地の悪さを感じたが、僕は佐原さんの言葉を待った。
『前に律君に今付き合ってる人居るかって聞いたじゃない?覚えてる?』
『はい、覚えてます。今も状況は変わってないですよ。そう言う女性は居ないです』
『それ、信じて良いのかな?』
『そんな事で嘘はつかないですよ。そう言う特別は人は居ません』
『そしたらさ、今週の土曜日の夜、ご飯食べに行かない?』
『私と二人で』
僕はバイトを始めた時からずっと佐原さんに一種の憧れの様な感情を抱いていた。
それは限りなく「恋愛」という感情に近かった。
佐原さんに話しかけられる度に気持ちが高ぶったし、バイトに行っていない時にもふとした拍子に佐原さんの事を考えたりする事もあった。
そんな佐原さんから電話を貰い、食事に誘われている・・・それは僕にとってこの上ない幸せな出来事であるはずだった。
『何かめっちゃ緊張します。俺なんかで良いんですか?』
『ここ以外で貴方に会いたいの。じゃあ、今週の土曜日の夜の7時。空けといてね。』
『わかりました。空けときます』
「ありがとう」
佐原さんはそう言って電話を切った。
今の職場でバイトを始めてたら、佐原さんは僕の事をずっと下の名前で呼んでいた。
それがさっき初めて僕の事を
「貴方」
と呼んだ。
歯車は1つだけではなかった?
僕は心の中でルカを想った。
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