【詩集】やがて水になるまで

雨伽詩音

第1話やがて水になるまで

嘘をついてまで募る想いを押し殺して

海月になりたいと云うと

あなたはイルカになりたいと

なんでもないように笑う

なにものにも縛られない自由と

光に満ちた知性とを

その両手に抱いて

柔和なほほえみを浮かべるあなたが

あまりにも遠くて

いいえ

私は海月になりたいのではなく

ただ無になりたいのだと

流されてゆく群像の中の

もの云わぬままさまよう

無明の無知の一尾になって

泡のように消えてしまいたいのだと

あなたに告げられればよかった

やさしさを遠ざけ

灯台の光から逃れて

ふわふわとただよって

やがて水と同質になるまで旅はつづくのに

身体は弱ってゆくばかり

あなたの見上げる空は

知らない色をしている

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