門の守護者
木浦 功
第1話 ブラウン・チャイルド
とある王国の辺境に1つの門があった
これはその門を守る2人の〈門の守護者〉
ゲート・ガーディアン の物語である
「おっと そろそろかな?」
―――カツヤが
彼らと称したがもしかしたら彼女かも知れないし もっと言えば性別なんて無いかもしれない 実のところ生物かどうかもあやしかった というのも彼らは大体僕のヒザ位の大きさの不定形の存在だからだ
共通しているのは みんな茶色っぽいという事だけ その見た目から彼らは
どこからともなくこのゲートに集まってきて ある程度の数が集まるとゲートに近づいて出て行きたそうにするので その時にゲートを開閉するのが僕の役目だった
このゲートの外は〈外界〉と言われていて
不思議な事に僕達はこのゲートを通れないしゲートの先を見る事も出来ない
ゲートを開けると先を見通せない何かがあって そこを通れるのは
ゲートの外は〈こことは違う空間〉に通じているらしくて ゲートの外は真っ白な何もない空間だ とか 土と緑の大地だ とか
最後の
僕の役割は
ゲートの前には大きな広場があって 広場の奥の
「カツヤ!」
「やあ キーン」
「やあキーン じゃないわよ ゲートを開けるときは教えてって言ったでしょ! それと私の名前はキーンじゃなくて ‘’ク・キーン‘’ よ 何度言ったら分かるの?」
「ごめん 思ったよりも集まるのが早くて行きたそうにしてたから 待たせちゃ悪いかなと思って」
彼女はキーン(ジロリとにらまれる)
いや 彼女はク・キーン ク族のキーンという意味で 僕と同じゲート・ガーディアンだ ク族である事に誇りを持っていてキーンと呼ぶとその度に訂正してくる キーンの方が呼びやすいんだけど…
白い肌に金髪金眼のとても可愛い女の子だ
キーンは
そして王国に居る全ての生き物がパルスを強制接続されていて 喋らなくても考えが分かったり遠くの人と会話が出来る…らしい
僕には出来ないし 本当かな?と思っていたんだけど…
ある日いきなり頭の中でピキーンッ!
みたいな音というか感じがして声が聞こえてきたんだ
「「 われは王なり! 今この時よりわれの許可なくゲートを開門する事を禁ず これは勅命と心得よ! 」」
「カツヤ!」
キーンがあわてて走ってくる
「え 何 今の? キーンがやったの?」
「違うわ 私じゃない!今のはこの国の王様よ!」
「王様?本当に?」
「間違いないわ!私には分かるの!」
そこでまた王様の声が聞こえた
「「 門の守護者よ 新たな力を授ける 受け取るが良い 」」
何かが起こると思って身構えたけど何も体に変わった事は起きなかった
でも僕はその時 4つのマインドが使える事が分かったんだ ずっと前から使えることを知っていたみたいに
1つは
2つ目は
3つ目が
4つ目が
キーンは僕とは違うマインドが使える様になっていて
パルスとシールドは僕と同じだけど
3つ目が
4つ目が
僕とキーンは2人で顔を見合わせて すごいすごいと喜び合った
この
と思ったんだけど…
そううまくは行かなかったんだ
なぜかって
そして
彼らは力がとても強い それも異常な位強いんだ
僕は始めマインドを使わずに普通に止めようとしたんだけど全く歯が立たなくて
キーンもまさかそんな事になるとは思っていなかったみたいで
僕とキーンはマインドの練習をする事にしたんだ
まずキーンの
だから僕達が立てた作戦は
常に
始めの内は
「ウォール!」
僕は目の前にうっすら光る透明な壁を作る
ぎゅぎゅぎゅ〜という感じで
「よし うまくいった」
ウォールを避けて回り込んで来るので
「エンハンス!まだ行っちゃだめだよ!」
身体強化して邪魔をすると
(カツヤ!反対側も来てるよ!)
とキーンからパルスが届く
「え え?どうしよう」
その瞬間 パンッ!という音ともにウォールが消える
カツヤの集中が途切れた為だ
「やばい!ゲートロック!」
バシィッと光がゲート全体に走りキーンのゲートロックが効果を表す
「エンハンス!止まれぇ〜!」
1人でも止めようと
キーンの方にも
キーンはゲートロックに集中していて気付いていない
「キーン!そっちに行った!シールドを張って!」
「くっ…シールド!」
慌ててシールドを張ると バリバリッ!と音がしてゲートロックが解ける
「あっ!」
「もう無理だ!キーン離れて!」
こんな具合だった…
それでも練習を重ね何回か繰り返す内に僕もキーンもだんだんマインドの使い方が上手になってきて最初よりも長い時間止められるようになってきた
どの位の時間止めていればいいのかは毎回違って 少しの時間で王様の許可が貰える時もあれば いつまでたっても許可が貰えない時もあるんだけど
ゲートの外 つまり〈外界〉を
マインドは使えば使うほど強くなって 3つ同時に使ったり長い時間使える様になって来て 不思議な事にどんな事が出来る様になるのかも分かるんだ
例えばパルスがもっともっと強くなると 前にキーンも言ってたんだけど 遥か遠くのたくさんの人達と同時に会話が出来る そしてもっとスゴいのがパルスを通してマインドの邪魔をしたり体を動きにくくしたり出来るんだ そんな事してどうするの?と思うんだけど王様はその位強いマインドが使えるみたいだ
マインドは僕とキーンでは得意なものが違って 僕はシールドとエンハンスが得意で キーンはパルスとゲートロックが得意 ロードクローズもだいぶ早くなった(使い道は無いけど…)
「ウォール!」
僕は四角く大きなウォールを2枚作る
ゲート全部はカバー出来ないけど1枚よりはずっとましだ
「エンハンス!」
(左が早いわ!)
キーンからパルスが届く
キーンは少し離れた所に居る 指示を出す為と挟まれるのを防ぐ為だ
「分かった!」
駆け出した勢いのままに
ウォールは外側からは通れないが内側からは素通り出来る
ちなみにシールドは最初から張りっぱなしだ
(次は真ん中!右は間に合わない!)
「真ん中だね!よぉーし!」
ウォールの強度を維持しながら走る
真ん中を押し出している内に右からウォール内に侵入される
(もう一度左よ!行ける!?)
「このぉーっ!」
ドンッ!体ごとぶつかるが止められない
右から入った
「行くわよ!ゲートロック!」
バシィッ!光が走りゲートがロックされ ゲートに取り付いていた
カツヤはすでに意味のなくなったウォールを解除 マインドをシールドとエンハンスに振り分け 少しでも時間を稼ぐ為に
キーンは安全な場所からゲートロックを維持するが最低限のシールドをかけておく事も忘れない
ここからは我慢の時間だ
僕は動き続け キーンはゲートロックを維持し続ける
「はあっ…はあっ はあっ」
エンハンスとシールドを使いながらなので体力の消耗が激しい
「くっ まだなの?」
キーンも限界が近いのか焦り始める
ピキーンッ!
と そこへ王のパルスが届く
「「 よくぞ耐えた 速やかにゲートを開放せよ! 」」
(カツヤ離れて ゲートを開けるわ!)
カツヤが離れた事を確認してゲートを開門
ゾロゾロと列が続き 最後の
2人でゲートを閉じる
「ふぅ~…やったね!キーン!」
「ふぅ~…やったわね!カツヤ!」
思わず声が重なり 一瞬の間が空き…
「あっはははは!!」
弾けるような笑顔のキーンを見て僕はとても嬉しかった 僕はキーンの事が大好きになっていた
2人とも限界近くまでマインドを使ってしばらく動けそうになかったから その場で寝転んで休憩する事にした マインドを回復する方法はこれしかなくて しかも少しずつしか回復しないんだ 朝までぐっすり眠れば全回復できるけど もっと早く回復出来る方法があればいいのに
それからも僕とキーンはゲートを守りながら練習を続けて
マインドももっと強くなって 王様の許可の前にゲートを通してしまうなんて事はなくなっていた
そんなある日
「なんだか最近
キーンの言うとおり
普通なら毎日来るのにパタリと来なくなって今日で3日目だ
「こんなこと初めてだね 楽ちんで良いけど」
「そうね 久し振りにゆっくり出来たわ」
そして4日目にソレは来た…
ピキーンッ!
「「
突然の王様からのパルスに2人は驚いた
「えっ…え?其奴らってなんの事?」
僕は慌てて辺りを見回したけど何も居ない
「待ってカツヤ! 何かがおかしい…この感じは…?」
そして キーンが気付く
「カツヤ!見て!ゲートロードの向こう!」
キーンに言われて目を凝らして見るとゲートロードの先 王国側の地平線に黒茶色の壁があり こちらに向かって来ていた
「何あれ!?あれも
「まだ距離がある!今なら!」
キーンが即座にマインドを発動する
「
ゲートロードの両側が動き道幅が狭くなっていく
「さすがキーン ロードさえ閉じちゃえば…」
「何か来るっ!」
僕の言葉を
ザザッ!!僕達の足元を
そのままゲート中央に取り付くと ズルリと外界に抜けて行く
「な! 何!今の!」
ピキーンッ!
「「 それ以上
通してはならんっ! 」」
「
王様のパルスに瞬時に反応してキーンがゲートロックを発動する!
ザザザッ!!また黄土色の存在が流れる様にカツヤの足元をすり抜けゲートに殺到する!そしてゲートをこじ開け
何体かが外界に抜けて行く
「そんな!ゲートロックしてるのに!?だったら…」
キーンがゲートに駆け寄り ゲートに触れながら叫ぶ!
「これでどう!?ゲートロック!!」
バシィッ! ゲートの表面に光が走りゲートロックが強化されると同時に黄土色の存在も動きを止める
「よし!これなら止めれるわ!」
「キーン!黒茶色のやつが来るよ!」
カツヤが叫ぶ
視線を向けると 黒茶色の存在がゲートロードの入口に差し掛かり そのままメリメリと音を立てて 半分程閉じていたロードを広げながら侵入して来る!
「なんて力なの!?信じられない!」
「だったらロードの出口で食い止める!」
「
カツヤはロードの出口を完全に塞ぐ様に2枚のウォールを張った
そこでまたキーンが気付く
「カツヤ黒茶の上を見て!見えない何かがあるわ!」
見えない何か?何言ってるのキーン?
と思いながらカツヤも視線を上げると
確かにそこには漂う何かがある ゆらめきの様な何かがあるが見えないのだ
その何かはウォールにすーっと近付き そのまま通過した カツヤも止めようと手を伸ばすがなんの手応えもない
「一体なんなんだ アレは?」
その見えない何かがゲートに取り付くと ビシビシッ!!ゲートロックが破られる音が聞こえた ゲートに圧力がかかっている証拠だ
「そんな!」
圧力はかかり続けゲートが押し開かれると バシューッ!と空気が流れる音が聞こえた ゆらめきの正体は圧縮空気だったのだ
空気と一緒に ゲートに取り付いていた黄土色も全て外界に飛び出して行く
「くっ せめて黒茶は止める!」
カツヤはウォールにマインドを集める
「うっ…大きい!」
近付いてきた事で分かったが黒茶は
そして ロードを押し広げながら近付いてきた黒茶がウォールに触れた瞬間!
パンッ!という音と共にウォールが飛び散る!
「なっ!?」
驚きに一瞬動きが止まるカツヤだったが
「わあぁぁーっ!!」
ガンッッ!!カツヤは弾き飛ばされる
「痛っ!」
黒茶の後ろから大量の
「ゲートロック!」
キーンがもう一度ゲートロックをかけるが
黒茶がゲートに取り付きゲートが開かれた もう
その後もしばらく間を開けて第2波 第3波の侵攻があったが 黒茶に体当たりした時に右腕を骨折していたカツヤと マインドを使い切ったキーンには何もできなかった…
――― 後に
実際の被害も大きく ゲートはひび割れ ゲート前の広場やゲートロードもあちこち損傷していたが 王国各地でも被害が出ていた ゲート侵攻前の3日間で王国全土を荒らし回っていたのだ だが最も大きな被害は 外界を
王はこの事態を重く受け止め 新たに確認された存在をそれぞれ
と呼称し
と呼称変更
そして総称を
更に王は
自身の傷や損傷を治す事が出来る 治療にかかる時間は損傷の程度による
自身以外の対象物の損傷を治す 治療にかかる時間 マインド量はキュアよりもはるかに多く必要
を授けた
――― カツヤとキーンの受けた傷は深かったが次の日以降も
しっかりと体を休めマインドを回復し
キュアでカツヤの骨折を治し ヒールでゲート等の損傷を修復していった
幸いにも
「キーン 僕はもっと強くなりたい! どんな相手からもゲートを守れる様に!もう2度とあんな思いはしたくないんだ!」
カツヤはキーンに そう宣言した
「そうよね いつまでもうつむいてばかりはいられないよね…私も強くなる!今よりもっと もっと!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます