第27話
「どうして……。どうして、私じゃいけないのよ。どうして、あの女なの。よりによってなんであの女なの。どうして、私じゃないの。どうして、ねえ、どうして。どうしてかしら?どうしてなの?ねえ、どうして?どうして?どうして?どうして私じゃないの?どうして私は本物の聖女になれないの?ねえ、どうして?どうしてなの?」
マリルリは壊れたように「どうして」を繰り返す。
いや、もうすでに壊れてしまっているのかもしれない。
本当の聖女じゃないのに、聖女になってしまったことにより精神的な負荷で壊れてしまっているのかもしれない。
ヒューレッドはそう思うと、怖かったはずの聖女マリルリがどこか哀れにも思えた。
傷ついて震えているように見えるマリルリにヒューレッドはそっと手を伸ばした。そして、マリルリの頭をそっと撫でる。
「……っ!!?」
マリルリの頭を撫でたヒューレッドは声にならない悲鳴を上げた。
マリルリが頭を撫でているヒューレッドの手をギュッと掴んだのだ。マリルリの体温を感じさせないほど冷たい手がヒューレッドの手首を女性の力とは思えないほどの強い力で掴む。
「うふふふふっ。つーかまえた。ふふふふ。ヒューレッド様はとても優しいのね。私に同情してくださったのかしら?ふふふふふ。とても優しいヒューレッド様。捕まえましたわ。もう、私からは逃げられませんよ。ヒューレッド・さ・ま♪」
マリルリは嬉しそうに口端を上げた。
「……演技、だったのか。」
「ふふふふふ。優しいヒューレッド様は私とても好きですわ。さあ、私と一緒にまいりましょう。」
「……離してくれ。オレはマリルリ様とは一緒に行けない。」
「まあ、何故ですの?戻って私と婚礼を挙げましょう。嫌だとは言わせなくてよ。」
ヒューレッドが力いっぱい手を引いても、マリルリの手はビクともしなかった。マリルリの表情からはそんなに力を入れているようには見えない。だが、ヒューレッドの手首を掴むマリルリの力はまるっきり緩まなかった。
「どうして、オレなんだ。失礼だが、マリルリ様のお腹の子の父親はオレではないはずだ。その子の父親と一緒になった方がマリルリ様も幸せでいられるはずだ。」
「あら。まあまあ。」
ヒューレッドが告げると、マリルリは驚いたように目をパシパシと瞬いた。
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