第4話 初めての出会い
平原と森を探索しながら、進んでいると……遠くから騎馬に乗った集団がやって来た。
身を隠す場所もない平原に居た時に発見したせいで、向こう側もこちらに気づいているみたいだ。
初めての異世界人との出会い。言葉は通じるんだろうか?
見えてきた服装からは、盗賊とは思えないけど……いつでも戦闘行動に移せるようにと、刀の
「こちら迷宮都市の警ら隊だ! 話しを聞きたい事がある」
馬上からそっと地面に降り立った、白地の軍服のような恰好をした人物から声を掛けられ、言葉が通じる事にほっとする。
「いったいなんでしょうか?」
なんとか上手く話をあわせて、この場を乗り切らないとなぁ。
そんな事を内心で思いながら、ポーカーフェイスを意識して、警ら隊の話しに応じる。
「この平原の先で、光の柱を見た者が多数いる。何か知っている事はないか?」
まるで警察が職務質問をするように、問いかけてくる警ら隊。
「光の柱というのは、見ていないのでわからないです。それに、この場所に来たのは初めてで、荷物を無くして、道に迷っていただけなんです」
光の柱という単語を聞いて、一瞬ドキリとしたけど……なんとかごまかしながら、知らないフリを貫き通す。
もしも正直に知ってるなんて答えると、やっかいな事に足を突っ込みそうだ。
「ふ~む……さようか。服装から察するに、武家の方だと思われるが、桜木家の家紋に似てはいるが、見た事の無い文様をした家紋。確かに、この辺りの方ではないようですな。道に迷っているならば、この先に行けば街道があり、そこから左手に進んで行けば、走っていくなら夜までには迷宮都市に着きますぞ」
迅人の服装を確認しながら、質問に丁寧に答える警ら隊。
「迷宮都市までの道案内、ありがとうございます。恥ずかしながら……荷物を無くして、着の身着のままで、お金も持ち合わせていません。迷宮都市に入る、何か良い方法はありませんか?」
和服についている家紋を確認されたりもしたが、どうやら武家の人物だと思われたみたいで、なんとか信用してもらう事が出来た。
その後も、これからどうしていいのか困っていたので、話しを聞いてみると……。
迷宮都市では、戦う力を持った者は優遇されるようで『討伐者組合』という組織があり、戦う実力によって、等級というランク制度のような物があるみたいだ。そして、魔物と戦っていく意思さえあれば、最低限の住居と食事は保証してもらえるみたいだ。
迷宮都市への入場にもお金は必要ないみたいで、これならなんとかやっていけそうだ。
討伐者組合って、まるで小説なんかでよくある、冒険者ギルドのような場所みたいだなぁ。着の身着のままで、お金なんて持ってなかったので、本当にありがたい。
「それでは、我らは調査を進める為、これにて失礼する。小鬼などの魔物も出る道ゆえ、気を付けられよ」
「ありがとうございます。そちらこそお気をつけて」
別れの挨拶をして、再び馬に騎乗し、平原を駆けていく迷宮都市警ら隊。
まるで映画のワンシーンみたいな感じで、かっこいいなぁ~。いつか自分も、あんな風に馬に乗って、平原を駆け抜けてみたいな。
心配していた言葉が通じる事もわかって、親切な案内までしてもらい、一気にテンションが上がって楽しくなってくる。
「よ~し。まずは……目指せ迷宮都市だ!」
先程までとは違い、心なしか足取りも軽くなり、ゴブリンのような魔物、小鬼を警戒しながらも、平原を進むペースは速くなっていく。
◇ 迷宮都市警ら隊サイド ◇
「隊長、あの人物はおかしな感じがしましたが、あのままでいいんですか?」
最初は一人旅の魔物討伐者かと思ったが、あまりにも不自然な状況と格好を思い出し、思わず隊長に質問する隊員。
「確かに、何かおかしな感じはしたが……喋ってみた感じは、悪人などではなさそうだし、旅人の事よりも、光の柱についての調査の方が重要だ」
平原で出会ったおかしな武家装束をした旅人の事は、頭の片隅に残りながらも、忠実に自分達の任務を優先してこなそうとする警ら隊。
この世界では、ちょっとした出来事がきっかけで、魔物の氾濫などといった、様々な問題が起こる可能性もある。
見知らぬ旅人一人の事よりも、付近の魔物などに異変が起きてないか、周囲の状況に気を配りながら、平原や森を見回して、周囲の状況を観察していく。正体不明の光の柱に関して、何か問題が起きていないか、魔物の動向に真面目に意識を傾けていく……。
◇――――
まるで安全な町中を出歩いているような感じで、一人で外の世界を歩く旅人。
重要な荷物を無くす事すら珍しいのに、水筒などの身近な必需品の品々すら持たず、護衛も付けずに徒歩のまま、一人で出歩いている武家の人なんて、違和感を覚えない人の方が珍しいだろう。
常識知らずの迅人は……バレていない。上手く誤魔化せたー!
そんな風に内心で勘違いしながらも、迷宮都市へと向かって旅路を進む。
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