第三話 タオルの真相! ?

 一時限目が終わった後、宏之、彼は貴斗にタオルの真相を聞こうとしていた。

 理由はそれを知っておかないと、慎治と香澄に馬鹿にされる一日となってしまうとそう思っていたからだ。

 しかし、その矢先、香澄が既に貴斗にそれを問質していた。

「ネェ~、ネェ~、どぉーして、貴斗がタオルなんて持っているのかなぁ~?」

 香澄はニヤニヤした表情で話し相手に尋ねかけていた。

「べっ、別に隼瀬、オマエには関係ないだろ」

 いつも冷静なはずの貴斗は紅らんだ表情をして、そう口を動かしていた。

「おねぇ~様には分かっているのよぉ~、オッホッホッ、ずばり、しおりンでしょ!」

 宏之と慎治は貴斗と香澄の会話を黙って見守っていた。

「ギックぅ!!」なんて擬音を心の中で立てながらさも貴斗は平静を装っている。

「なっ、何の事を言っているのか、俺には全然サッパリ分からん!」

「貴斗、ネタは上がっているの、バックレても無駄ぁっ!」

「・・・・・・・・・・・・・・」

「今日の放課後、学校のプールでしおりンと一緒に泳ぐ予定だったんでしょ。

お優しいこと、貴斗がそぉ~すればしおりンも部活を休まずに貴斗と一緒に居られるもんねぇ」

〈香澄的ホ・ソ・ク!内の水泳部三年生は夏の大会まで自主トレとなっていため学生・一般開放プールでも部活専用プールでもどっちかに居ればサボリとは見なされない〉

 貴斗は香澄に聞かれた事で少し顔を赤くしていた。それを見ていた慎治と宏之は思った〝彼が赤く成っているのは藤宮詩織と言う彼女とデートの約束をしているのがばれたからだ〟と。

「あらっ、貴斗も純ね、こんなことで赤くなるなんて。何時ものクールは何処へ行ったのかしら」

 香澄は嬉しそうに彼をからかってあげていた。そして、そんな彼女の行動を見ながら宏之も慎治も、心の中で思った事がある。

〈俺達の仲間で隼瀬に勝てる奴いないのかも、悲しいかぎりだぜ〉

「どうして知っている?」

 顔を僅かに赤くしながらもなお貴斗は冷静を装った口調で香澄に聞き返してきた。

「だぁぁあ~~~って、昨日の夜11時ごろ、しおりンがわっざぁ、わっざあ、そのこと報告に来たわ」

 香澄と詩織は幼馴染み。

 家は隣同士、小学校から高校までずっと同じ学校だった。

 しかし、同じクラスだったのは三回とかなり少ない。そして、水泳を始めたのは詩織の方が先だったが、今では実力は香澄の方が上である。

 貴斗は沈黙しながら昨日のその時間帯の事を思い出していた。


~ 2001年7月8日、日曜日午後10時30分頃とある工事現場 ~


「藤原君、そろそろ小休止にしようか?」

 同じバイト仲間の先輩一人が貴斗に呼びかけていた。そして、彼はその言葉に、

〈もうそんな時間か〉とふと思って作業着のポケットからセルラーを取り出しそれについている時計で時間を確認していた。

「先輩ちょっと電話、掛けてきていいですか?」

「休止時間内に用事済ませろよ」と軽く笑いながら先輩は貴斗に答えを返していた。

 なぜバイトしているか、って聞かれたら即答できるような答えを彼は今、持ち合わせていない。

 一人暮らしだからって別に金銭的に困っているわけでもない。

 しいて言えば、家でじっとしているよりは幾分ましかな、って程度だ、位に彼は思っている。

 しかし、それは今だけ・・・。

 さっき仕事中に彼のセルラーが鳴っていたが手が空いてなかったので誰から掛かって来たのかも分からずじまいだった。

 今、不在着信一つ秘通。留守録マークが点灯していた。知留守録サービスに掛けていた。

『こちらはNTT、留守番電話サービスです。1件のメッセージが登録されています』

 機械的な音声説明がった後、次のようなメッセージが入っていた。

〔もしもし、藤宮詩織と申します。

貴斗君、アルバイト、お忙しいのでしょうか?もし少しの時間でもお話できましたらと思いまして掛けさせていただいたのですが・・・、

でも駄目みたいですね。それではアルバイト、頑張って下さい〕

 かなり丁寧な言葉でだが残念そうな感じで藤宮詩織と言う女性がメッセージを残していた。そのメッセージを聞いた後すぐに貴斗は恋人である彼女の自宅にコールバックをする。

『プルルルルッ、プルルルルッ、プルルルルッ♪』

 呼び出し音が数回鳴った後、向こう側の誰かが受話器をとったようだ。

「夜分大変申し訳ありません。藤原貴斗というものですが、藤宮詩織さんご在宅でしょうか?」などとよく分からない日本語を使いながら、彼は電話の相手に聞いていた。

「あら?貴斗君なの」

 電話に出た方はさも声を聞いただけで掛けてきた人物が誰であるのか分かっている様な言い方だった。

「詩織ね、ちょっと待ってくださる?」と丁寧な言葉でその主は貴斗に返えしていた。

 初めに電話に出たのは詩織の母親のようだった。そして、数秒後、その母親に代わって詩織が電話に出てきた。

「タっ、貴斗君なのですか?今日、お話し、しますの無理だとお思いしていましたから私とても嬉しいです!」

 本当に嬉しいという気持ちが彼女の言葉に乗って貴斗に伝わっていた。しかし、彼の対応はいたって平静である。

「話せても少しだぞ」

「お仕事の邪魔したくないですから、用事だけお伝えしますね」

「気、遣わせて悪い」

「明日の学校、終わった後、その一緒に学校のプールで泳ぎできましたらと思ったのですけれども・・・、駄目ですか?貴斗君」

 彼女はやや控えめではあるが甘える口調で彼に返事を求めてきた。そして、貴斗は少し間を置いて考えてから返した。

「わかった!ここずっと構ってやれなかったからな」と了承の言葉を彼女に返した。

「エッ、本当に宜しいのですか?」

「ああ、二言は無い」と臭い台詞を口にしていた。

「有難う御座います。それでは明日、ちゃんと用意してきて下さいね、忘れちゃ嫌ですからね!」と詩織なる人物はそう念を押すように彼に伝えていた。

「分かった・・・っと、そろそろ時間だ。それじゃなお休み詩織」

 今度はセルラーではなく腕時計の時間(10時58分)を見て彼は彼女にそう言った。

「貴斗君、無理しないでくださいね。それと明日のお約束お守りしてくださいね。それでは失礼いたします」

 その言葉の後、彼女が受話器を降ろすのを確認すると彼もまた携帯を作業着のポケットにしまい仕事場に戻って行った。


「すると詩織、俺が電話を掛け終わったと同時に隼瀬に会いに行ったって事か?」

 彼は一人で納得したようにブツブツと呟いていた。

「なぁ~~~に一人でブツブツ言っているのよ?惚気を聞かされるコッチの身にもなって欲しいわぁ~~~」とヤレヤレって気分で香澄はそう貴斗に言ってやっていた。

「それは、すまないことをした」と、淡々とした口調で彼女に返していた。

「別に謝ることじゃないでしょよ?」

「マジ、ホッとした、その事ばっか考えていて全然、授業集中出来なかったからな」

「ヒロユキが授業集中してないのは何時もの事でしょ?」

「そりゃ、言えてるな。貴斗のことだから変なもんは渡すはずが無いと思っていたが、理由が分かれば何てこと無い。あぁ~~~アッでも、宏之を一日中からかうネタが無くなったのが残念だ」と本当に残念そうな口調で宏之に向かってそう言葉にしていた。

「それは、悪いことをした」

 冗談か冗談でないのか表情に表さず慎治のそれに答えを返してもいた。

「そっか、そっか、今日、貴斗お前、藤宮さんとデートか?羨ましいですねぇ~~~~、にくいですねぇ~~~」

 さっきの怨みも込めて宏之はからかう様に貴斗に言っているように香澄の目には映っているようだった。

「宏之、お前には涼崎さんがいるだろ?羨む事など無いはずだが?

俺なんか相手にする暇があったら、その時間を涼崎さんにでも使ってやれ」と抑揚をつけず宏之にそう返していた。

「貴斗、アンタもそんなこと、言ってないでもっとしおりンと一緒に居てあげたら?別にバイトなんてしなくても十分生活できるんでしょ?」

「そんな事、隼瀬にとやかく、言われる覚はえない」

「関係なくないは、しおりンと貴斗の仲を取持ったのは、アタシよ。しおりンのこと、泣かせたら絶対許さないんだからね」と怒る口調で彼に言っていた。

「ヒロユキ、アンタも春香の事、泣かせちゃ駄目からね」

「ホラ、ホラ、そろそろ授業、始まるぜ。そこら辺で終りにしたらどうだ?」とそう言った後、丁度授業開始のチャイムがなり四人は各々の席に戻って行った。

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