第三十話 『ゴブリンデスボール』
「おやおや。仲間割れですか」
味方であるはずの俺がぶん殴られて吹っ飛ばされた光景を見て、敵であるエンペラーゴブリンが苦笑いしながらサダンさんに尋ねる。
「仲間ぁ?」
「おや、殴った人間はあなたの
「正確には
「……いえ。害虫。そうですか……」
【六皇】でゴブリンの帝王であるはずのエンペラーゴブリンでさえ、サダンさんの言葉にちょっと引いていた。
そして俺も倒れながら二人の会話を聞いているが、なんて俺に優しくない内容だろう。もうそろそろ立てそうなくらいまで体は回復しているのに、ダイヤより硬いはずのオリハルコンハート(自称)の方が粉々に砕けてしまいそうだ。
「はいはい。パパ。冗談はそこまでにして」
「む。ワシは冗談など一度も口にして――」
「いいからとっととあの【放送禁止用語】ゴブリンを【放送禁止用語】してさらに【放送禁止用語】しなさい!」
「はい!」
美少女の口から出たとは思えない汚い言葉でエンペラーゴブリンをディスりながら、こめかみに怒りマークのついたミイナに怒鳴られたサダンさんが上官に命令された兵士のように慌てて剣を抜き、ついに(俺の中で)魔王がエンペラーゴブリンとタイマンで戦うようだ。
が、俺は別の事に感動していた。
あのサダンさんがビビるなんて凄い。流石はミイナ。略して『さすミイ』。
なんだか猫のように目がクリッとして『ミィ』と鳴く可愛い生き物が刃物で殺そうとしているような発音だけど、まあいいか。さすミイ!
「ホッホッホ。口の悪い小娘は引っ込んで今度は父親が相手ですか」
「口の悪いだと? テメェ、それは娘を侮辱するつもりかオラァ!」
土煙を残し、サダンさんの体が消え、エンペラーゴブリンの背後にパッと現れた。
早い! それとお言葉だがお義父さん。ミイナはかなり口悪いぞ。可愛いくて愛らしいからミイナの何もかもを俺は受け入れているけどな!
指輪の呪いでかき氷を食べたような頭痛が俺を襲う中、サダンさんの剣がライトセ◯バーのように黒々しく光り。
「死ねオラァ『ダークエンドスラッシュ』」
剣から月◯天衝のような黒い斬撃が飛ぶ。
だがしかし。今度はエンペラーゴブリンの姿が消え、サダンさんの後ろに突然現れた。
「ホッー。その程度のスピードで私の背後を取るつもりだったのですかぁー『ゴブリンデスシザー』」
エンペラーゴブリンの手からクリ◯ンの気◯斬にしか見えないのに『ゴブリンデスシザー』という名前の平たい斬撃がフリスピーのように放たれ、普通の剣で切られようが逆に剣の方が折れてしまうだろうサダンさんのダイヤモンドの背中を切った。
「ぐぅっ――!」
更にエンペラーゴブリンはサダンさんにまた高速移動で近づき、今度は蹴りを入れて空高く打ち上げた。
「これでトドメですよぉー。『ゴブリンデスボール』」
間髪を入れず、人差し指と中指を合わせたエンペラーゴブリンの指から元◯玉のようなバレーボールサイズの黄色い球が現れる。
アレはヤバイ。星は破壊しないだろうが孫◯空の最強技にクリソツだから絶対にヤバイ。
「【九将軍】よ、死になさい!」
『ゴブリンデスボール』という名前の元気◯が一直線に空高く投げられた。
「逃げてパパ!」
「旦那様!」
技の危険を感じたミイナとマカの叫びも虚しく、もう姿の見えないくらい高度にいるサダンさんに直撃したのか『ゴブリンデスボール』が一瞬だけ太陽のように輝いた。
そして、おとずれたのは核兵器としか思えない威力の爆発だった。その衝撃波は凄まじく、エンペラーゴブリンと既に寝そべっている俺以外のミイナ、マカはサダンさんに殴られた俺のように吹っ飛ばされていた。
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