第50話 いいこと考えた!
「えっ、ここ、どこ?」
私は目を覚ますと、見た事がない部屋で裸にバスタオルを巻いて、その上からタオルケットを掛けられてベッドに横たわっていた。
部屋の灯りは落とされていて暗かったけど、ベッドにもたれ掛かるように悟さんが寝息を立てているのがすぐ分かった。
あ、私、悟さんと一緒にお風呂に入ろうとして、ガチガチに緊張してたんだった。
悟さんにその事を悟られて、優しく包んでもらったら気が抜けてしまったんだわ。
わー、恥ずかしい。
お風呂に突撃した事も、ここまで裸のまま運んできてもらっちゃったことも。
悟さんを起こすべきかな?
あ、私はまだお風呂に入ってなかったんだ。
悟さんを起こさないように、そっと。
抜き足差し足でお風呂に入ってきちゃおう。
ごめんね、悟さん。もう少しこのままで寝ていてね。この体勢のままだと体痛くなっちゃうかな?
私は悟さんの部屋に寝せられてたんだ。
多分学生の頃から使っていた机、400冊は下らないと言っていた本がたくさんある書棚。窓の外から差す月明かりで仄かに見える。
ここで悟さんは育ってきたんだな。
タオルケット、ちょっと悟さんの匂いがした。
少し男臭いけど、悟さんの匂いだってすぐ分かる匂い。
ダメダメ、浸ってないで早くお風呂に入って来ないと。
そっとベッドから抜け出て、音を立てないように悟さんの部屋を出た。
階段を降りる。
音を立てないように気をつけていても、少し軋む音がでちゃう。
それでもどうにか一階に降りて、お風呂場に。
買ってきた下着はもう脱衣所に置いてあるからこのまま入ってしまおう。
「お、悟さん、Dr.ブロナーなんて、なかなかいいシャンプー使ってるのね」
男性用のトニックシャンプーとかでも我慢しないと、と覚悟していたけど、私も使った事があるラベンダーの香りがするシャンプーとリンスで助かった。
髪と身体を丁寧に洗った私は、湯船に浸かって今日のことを思い出していた。
他所のお宅でお風呂に入ると、それが親戚の家であってもすごく気を使う。
また、自分の家との違いを色々発見できて面白い所もあるんだけど。
しかし、自分でもびっくりするほど大胆な事を、悟さん相手にしてしまうなあ。私。
今朝のキスは正直半分寝ぼけていた。
なんか夢の中で悟さんにキスをしたつもりだったんだけど、途中で現実だって気がついて、慌てて電車を降りちゃった。
誰もいなくて、本当に良かった。
でも、あんなキスが悟さんとの最初のキスで悪かったなあ。
悟さん気にしていないかな……
それにしても悟さんをひどい目に合わせた元カノさんには本当に頭にきたな。
自分でもたまに自分がわからなくなるほど頭に血が昇っちゃってあんな電話の切り方しちゃったけど、恨まれないかな。
私が恨まれる分には構わない。
でも、これがきっかけで悟さんなまた纏わりつくような事を元カノさんがし始めたら、どうしよう。
えええい! 考えたってしょうがないわ!
なるようにしかならないし。
でも、私、絶対に悟さんを守ってみせる。
どんな事があったって。
あ、結構長風呂になっちゃった。
あのまま悟さんを寝せるわけには行かないな。
私はお風呂からでて、買ってきた下着をつけて、気が付いた。
部屋着を貸してもらうんだった!
どうしよう、このまま上に行って悟さんを起こしたら単なる変態女じゃない……
あんなに悟さんはこんな私のことを大切にしてくれようとしているのに。
あ! 名案考えちゃった!
またタオルを巻いて寝たふりをすれば良い良いんだわ!
私はそう決めると、ドライヤーを借りて髪の毛を手早く乾かし、下着の上からバスタオルを巻いて悟さんの部屋に戻ろうとした。
すると、リビングの方から私のスマートフォンから着信音がした。
なんだか嫌な予感。
スマートフォンをカバンから取り出すと待ち受け画面には「お母さん」と表示があった。
しまった、今日の外泊のこと、言ってなかったんだ。
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