第102話:ルーカス陛下の誕生日パーティー 3
「それにしても、アクアさん。こうしてみると確かにルーカスの『身内』だねぇ」
「そう見えますか?」
「うん。そっちの子がディーンかな? で、こっちがバーナード? 色合いがバーナードだけ違うから、とてもわかりやすい」
……ルーカス陛下、ディーンとバーナードのことも話していたんだ。どういう友好関係なんだろう。ちょっと気になる。
「我々のこともご存知だったのですか? 申し遅れました、ディーンと申します」
「バーナードと申します。初めまして」
「うん、ふたりのことも良くルーカスから聞いていたよ」
……ルーカス陛下は二十一歳になった。で、ディーンとバーナードの年齢は十八歳。そしてディーンが『作られた』のも十八年前だとして、……もしかして、バーナードの幼馴染ってディーンじゃなくてルーカス陛下のほうなんじゃ……? ちらりとバーナードに視線を向けると、彼はただ微笑みを浮かべていた。……思いっきり、作った笑顔だとわかる。
……まぁね、ルーカス陛下の友人で、現ルガラント王国の陛下だから失礼なことしちゃいけないってわかってるのよね……。
「確かにアクアとは親族だもんな、色合いも似るか」
「微妙に違うけどね。薄かったり濃かったり」
「はは。……それにしても、ヒューイは聖職者のローブで来たのか」
「聖職者ですので」
わたしも聖職者のローブのほうが良かった。ひとりで着替えられるしハイヒール履かなくて良いし。……でも、これだけ綺麗にしてもらえたから、それはそれで嬉しかったのだけど……。うーん、複雑な乙女心。
「……おや、そろそろ始まるようだ」
パッと灯りが消えて、代わりに一点、灯りを照らされている場所がある。
コツコツと足音を響かせて、先程の格好でルーカス陛下がその場所で足を止めた。ざわざわしていた会場は一気に静かになって、現れたルーカス陛下の美貌に息を止めているように思えた。
ゆっくりとルーカス陛下が周りを見渡す。ぱちっと視線が交わった気がした。……でも、暗いし、多分気のせい。
「……この度は私の生誕パーティーに参加してくれて感謝する。時間が許す限り、楽しんで行ってくれ」
そういってにこりと微笑む。女性たちの「なんて麗しい……!」という声が聞こえた。うんうん、ルーカス陛下もイケメンだもんねー。声もいいもんねー。……そんな人が身内ってすごいなぁとどこか他人事のように思いつつ、パッと灯りが戻った。明るい。
ルーカス陛下は用意された椅子に座っていて、隣には恐らく護衛の人たちが左右にひとりずつ立っていた。
ルーカス陛下がすっと手を上げると、どこからか音楽が流れ始めた。
……わたし、この音楽を知っている気がする……。そう思ってディーンとバーナードに視線を向けると、彼らは悪戯に成功したように口角を上げていた。
「コボルト音楽隊?」
「正解。さすがに他国の人たちがいるから、録音したものだけどね」
いつの間にそんなことを……。とわたしが感心していると、ルーカス陛下の元にずらりと一列、いろんな人が並んでいた。どうやら、誕生日プレゼントを渡すつもりらしい。神官長たちはいかないのかな、と彼らに顔を向けると、
「モテモテだなぁ」
「モテモテですね」
そういって料理のほうへと向かって歩いていく。……どうやら渡す気はないようだ。
それにしてもすごい人! 老若男女、大きいものから小さいものまで……多分、全部高価なもの。
「みんなどこで用意してくるんだろう……」
「そりゃあ、貴族たちのお茶会や夜会から情報を仕入れるんじゃない?」
「そっかぁ……」
お茶会も夜会もいったことないなぁ……。あ、フィロメナのところでお茶を飲むのはお茶会に入るかな? ルーカス陛下との食事は……食事か。お茶会でも夜会でもない。
「アクア、喉は乾いていない? もらってこようか?」
「えっと、じゃあお願いしようかな」
「うん、待っていて。バーナード、アクアから離れないように」
「わかってるよ」
わたしから離れないように……? どうしてそんなことをいったのかわからなくて首を傾げると、バーナードに重々しくため息を吐かれた。
「な、なんでそんな反応……?」
「お前のつけているアメジストな、王族しか身に着けることを許されていないブローチなんだよ……」
「……えっ」
「ルーカス陛下の格好、よく見てみろ。お前と同じところにブローチつけているだろ」
ばっとルーカス陛下へ視線を向けると、いつの間にか、お揃いのブローチをつけていた。……このブローチ、そういう理由があるのなら最初にいってよ、と小声でバーナードにいうと、ツーンと無視された。
……それでわたしたちに視線を向ける人たちが多かったのね……。誰だ、こいつはってことか、なるほど!
ルーカス陛下、来年まで待つつもりなかったりするのかな……? 扇子を広げて口元を隠すように顔の前へ。ちらりと周りに視線を向けるとこちらを見ている人たちと視線が合った。みんな気にはしているみたいだけど、こちらに話し掛けてくるつもりはないみたい。なんというか、珍しいものをちらちらと好奇心から見ている感じ。視線が刺さってちょっと気になるわ……。
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