柏帝国

鷹山トシキ

第1話 ゴブリンを倒せ!

 遥か昔、下総に『アリビカン』と呼ばれる鉱石で出来た隕石が落ちてきた。やがてその地下総で5つの部族が戦争を始める。一人の戦士が『アリビカン』を摂取し、超人的な力を持つ『ドラゴン』となった。彼の下に4つの部族が集まり、柏市となった。だが松戸族だけは参加せず、姿を隠した。


 何世紀もたち、柏市は世界から隔絶された、高度な科学技術を持つ超文明となった。1992年、当時の国王・財前大輔ざいぜんだいすけは、松戸に潜入していた弟の万二郎ばんじろうを訪ねる。 財前大輔は、密偵の銀次ぎんじを通じ弟が柏市から得た武器を武器商人の陣内じんないに渡していたことを知り、彼を問い詰め、そして亡き者にした。


 それから26年後の2018年、備前郡司びぜんぐんじが起こした爆破テロによる財前大輔の死とそれに伴う柏市での内乱の後、大輔の息子、髄天ずいてんが新国王に即位する運びとなる。戴冠の儀式で、彼は松戸族の挑戦者・豊前ぶぜんを打ち負かし、晴れて柏は新たな国王を迎えた。


 それからしばらくして、源馬げんまという男が陣内と結託して柏国の博物館を襲撃した。髄天は友人、膳場ぜんばに彼と因縁のある陣内の逮捕を約束し、親衛隊長の伝馬でんま、恋人の星子を連れ、裏取引が行われている裏カシへと向かう。  

 柏駅周辺はストリートミュージシャンが多く、連日多くの若者が集まり、若者層をターゲットとした商店も多い。このため「東の渋谷」と表されることもあり、特に柏駅東口側(柏神社・柏郵便局付近)は個人商店が多く、裏原宿のようになっていることから、それに倣って「裏かしわ(通称:裏カシ)」などと呼ばれることもある。

 同じく潜入していた千葉県警の別所剛べっしょごう捜査官と手を組んで陣内を捕らえるが、取り調べ中に源馬の襲撃を受け奪還されてしまう。星子をかばい重傷を負った別所を救うため、髄天は別所を連れて市役所へ戻ることを余儀なくされる。


 医者の増上寺坊丸ぞうじょうじぼうまるが別所の治療に当たっている間に、膳場のもとに源馬が現れる。彼は手土産として陣内の亡骸を引き渡し、国王との謁見を求める。源馬の本名は愛太郎あいたろうといい、亡き万二郎の息子にして王位継承権を持っていた。


 髄天の問いにズリはかつて起きた事を話す。源馬は父を失った後、『ゴブリン』とあだ名される兵士に育ち、祖国・柏の技術と武器をもって世界中のニートを迫害から救うために帰還し、王位を求めて現れたのである。再び儀式が行われ、ゴブリン源馬は仲裁に入った銀次の首を跳ねて殺害すると、髄天を谷底に突き落とし、ついに王位を得る。そして『ドラゴン』の力と鎧を得ると、柏の武器を全世界の同胞へ輸送するよう命じる。


 星子、坊丸、そして一命をとりとめた別所は密かに柏国を脱出し、松戸族に援助を求める。髄天は豊前によって仮死状態で保護されており、星子のキスによって息を吹き返す。そしてゴブリン源馬を倒すべく、再び鎧を着用する。


 坊丸と星子、源馬に反旗を翻した加賀三郎かがさぶろうは膳場と彼の軍隊に挑み、別所は坊丸のサポートを受けてジェットを遠隔操縦して兵器を搭載した輸送機を撃墜していく。豊前率いる松戸族が髄天の援護に加わり、アリビカン採掘場では髄天と源馬、2人のドラゴンが中断された王位継承の儀式を再開させる。髄天の一撃が源馬を貫き、ついに戦いに終止符が打たれる。 

 源馬は治療を拒み、投獄よりも自由ある死を選択する。髄天の計らいで祖国柏の美しい景色を眺めながら、ついに源馬はこの世を去る。


 全てが終わり、髄天はグアム島に旅立った。

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