第216話 フィクション
日曜日。
今日はアステリズムでダンジョンパーティの効果が付与されたプラチナの指輪を販売するためにゲリラ配信を行う予定となっていた。
ただ、俺がアクセサリー店で購入をした指輪は20個ほどで、俺たちの素性がバレないようにそのアクセサリー店へと対応をしてくれた矜侍さんが言うには、この数では少なすぎるらしかった。
俺からしてみれば、攻略道で使いたいだけなので、たまたまアステリズムのチャンネルを見ていたら手に入った! という感じで桃井先生に渡すつもりであったのだが、登録者数が現在では一千万人近くいる俺たちのチャンネルで偶然だとしても手に入るのはおかしいとの指摘を受けたのだ。
また、ダンジョンパーティの効果にしても、直接的に魔物をあまり倒せない探索者にとっては、喉から手が出るほど欲しい商品となっていて、超高額で転売されたりダンジョン内での強盗や殺人すら起きる可能性があるらしかった。
その結果、合計で200個ほどを先行販売することになり、残りの180個は矜侍さんが作ってくれることとなった。
ちなみにその180個のうちの50個は国防軍や警察関係、探索者協会への販売を優先したらどうだと勧められている。
国防軍はスタンピードや災害、警察関係は犯罪者に対して、探索者協会は探索者の救援に向かう職員がレベルアップすることは、救出できる可能性が上がることになって重要だと教えてくれた。
「お兄ちゃん、矜侍さんとの待ち合わせ時間の前に、お昼ご飯で昨日行ったファミレスに行こうよ。サラダバーが美味しかったし」
午前から配信をする予定が午後からになったので、今宵たちは訓練をしていたはずだが、昼食を食べに早めに出ようと俺を呼びに来たようだ。
俺は昨日、今宵から精神的イケメンはこういう行動をとるんだよ! と注意をされたので、スマートモテ男子を目指し調べて見ていたMeTubeを閉じた。
見ていた動画によれば、会計の時に現金支払いをしない方がスマートでモテるようなので実践をしてみようと思う。
会計なんて現金で支払いをしても同じだと思うし、そもそも現金払いしか使えないことだってある。
それに機械の故障なんかだってあるだろうから、どちらでも構わないように思うが……。
地震大国日本だと、災害時に現金払いしか使えなかったと聞いたこともある。
どんな場面でも確実に対応ができるのは現金支払いじゃないのだろうか?
一番重要なのは払えることじゃないの?
まあ、それほどモテているとは思えない二人組の女子の動画ではあったが、私たちモテてるんです、モテ男子になる秘訣を教えますって自信満々に言っていたからそうなのだろう。
俺はそんなことを考えながら今宵たちの元へと向かった。
「用意できてるか~」
「もーぅ。用意ができていなかったのはお兄ちゃんでしょ!」
俺は子リスをなだめると、昨日のファミレスへと移動するのだった。
ファミレスへ到着をして、俺は昨日のミスを犯さないように、サラダバーとドリンクバーを全員分注文する。
まあ、どっちにしても支払いは全額俺なんだけどね!
昼食を食べ終わり、ここまで精神的イケメンムーブをこなしている俺はスマートモテ男子を目指して最後の会計へと向かう。
「ぺーイッペイでお願いします」
俺はそう店員さんに告げると、スマホを取り出してバーコードを見せた。
「ぺーイッペイ♪」
支払いが完了した音がなり、これでミッションは完了だなと退店をしようとすると、
「ドゥルルルルル 当り! イエーイ!」
急にドラム音が鳴り始めたかと思うと、大きな音で何かの当選を知らされる。
「え!? な、なんだこれ!?」
俺はスマート男子を実践しただけなのに、これほんとにスマートか!?
俺は咄嗟に今宵たちを見ると、なぜか呆れられた表情をしている。
困った俺は店員さんを見た。
「ぺーイッペイジャンボの当選おめでとうございます(ニコッ」
おかしい……。
店員さんの可愛い笑顔を見てなぜか俺に羞恥心が……。
俺は急いでファミレスを退店する。
「ねぇ……お兄ちゃん。なんで昨日は探索者カードで支払いを済ませていたのに、急に支払い方法をそっちにしたの?」
今宵が急に支払い方法を変えた俺に理由を聞いてくる。
まあ、探索者カードでの支払いは音なんてならないしね。
探索者カードは探索者しか持っていないから、モテ男子を目指すなら誰でも使えるキャッシュレス決済が良いと思ったんだよ……。
クレジットカードを高校生が使うのもおかしいだろうし、一番普及をしていて人気のQRコード決済アプリを使用したのだ。
「今宵が精神的イケメンとか昨日言っていたから、モテ男子で検索をしたらヒットしてな。誰でも使える決済サービスの方が良いかと思って」
俺は決済方法を変えた理由を今宵に動画を見たところから詳しく説明する。
「だいたい、その女の子たちって本当にモテてるの? しかも男が絶対に奢るべき? たしかにお兄ちゃんには出して貰っているけど……うーんなんて言ったら良いんだろ」
「今宵ちゃんは同級生の男子に奢るって言われても絶対にワリカンにするよね!」
さっちゃんが今宵はワリカンにするよねと言っているが、中学生が中学生に奢るっておかしくない!? と俺は思ったが、今宵は断っていると聴いてちょっと安心する。
「いやだって、どう考えても下心とかカッコいいとこを見せようって言うのが丸わかりなのは、今宵の値段がその奢られた値段みたいに言われているようで嫌なんだよね。それに比べてお兄ちゃんは――」
「「下心とかなさそう!!」」
キィちゃんとさっちゃんは何でハモッたの?
三人にはたしかに下心なんて一切ないが、俺はモテ男子を目指してますけどぉ!?
暗に安パイって思われているだけだよね!
「でもお前、他の動画では女性は用意にお金がかかるから、男性がーって言ってたぞ? コスメとか服に使うんだろ?」
「まあそうだけど、もし会う人のために服を買ったとして、じゃあその日に着たり使ったものは捨てるの? って話かな? もし矜侍さんが颯爽と超高級スポーツカーでやって来たら、その車の値段をかけて会いに来てる事になるよね。その日のためっていうなら女性側も捨てないとおかしい気がする」
いやなんでそこで矜侍さんなんだよ。
そういや前にスィーツ奢ってもらったとかいってたっけ?
ってお前、俺以外にも奢られてるやんけ!
まあ、矜侍さんはたしかに今宵にそういう下心的なものはなさそうだけども。
俺たちはそんな話をしながらダンジョンに入り、25階層に転移をすると、チェンジで全員がアステリズムの衣装へと着替えた。
そして矜侍さんとの待ち合わせ時間になった瞬間、俺たちの前に矜侍さんが現れる。
「お、待たせたか?」
「いえ、今来たところです」
「矜侍さん聞いて下さい! さっきお兄ちゃんが――」
挨拶もそこそこに、今宵が先ほど俺がモテるために動画を見てしでかした話を力説している。
「ふむふむ。なるほど。俺に任せておけ! 矜一、お前はもう貯金額が凄いことになっているだろ? それで株券でも買って……そうだな最低でも5000万ほど預託しておけ。今だと探索者が中一からなれるから、クレジットカードも未成年から審査が通る。お前なら年収、役員などの条件でプラチナカードが持てるからそれを1年間使用しまくるんだ。そうやって使用実績を積み上げると翌年には招待が届くから、このブラックカードになれる。これをチラ見せするだけで……お前はモテ男子――」
「ちょっと矜侍さん!?(怒」
プレミアムダイナ〇スクラブと書かれた黒いカードを俺に見せたところで、今宵が矜侍さんに怒声をあげる。
「あ、ああ。わかってる、わかってる。今宵ちゃんにもちゃんと情報を教えるよ。今宵ちゃんは将来、きっと多くの物を貢がれるだろう? その時に使えるのが銀座や六本木にある
「いや、矜侍さん今宵に何を教えているの!?」
矜侍さんが暴走を始めてしまったので今度は俺が叫ぶ。
いや、この人、急に今宵を夜の蝶にしようとしてない?
世界で一番美しいとされるモルフォチョウにでもなっちゃうの!?
そもそも俺に教えてくれたブラックカードも見ただけで通用するって、そう言う高額な貢物をしてもらう人しか一目みただけじゃわからないでしょ!
今度はキィちゃんとさっちゃんに話しかけようとしている矜侍さんを俺は引き止めると、今日の本来の目的の話へと話題を戻すのだった。
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題名にもありますが、何か思い当たる決済音だとしてもフィクションです。
現実世界のお話ではありません。
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