第103話 きらきら星
11階層に移動して配信をしていると、多くのスーパーチャットが投げられている事に気が付いた。
「すみません、あまりにチャットが早く流れるのでスーパーチャットの中から抜粋して読ませていただきます。配信の最後には読まれなかったスーパーチャットの方も全て読みますので宜しくお願いします」
「ほんとチャットが流れるのが早いー。読めないから、すとっぷぅ! なんちゃって」
今宵がチャットが早いので止まれと言うと滝のように流れていたチャットがピタリと止まった。
「お、おお……凄いなアステル。時を止める能力者か? なになに、『11階層は前回見ました』……うん。そうだね」
「シュ、シュテルンさん。大丈夫です。10階層以上を配信する人は殆どいないので2度目だろうが見てもらえますよ!」
イオリさんが慰めてくれはするが、それでもやはり同じ階層ならもう少し捻って面白くするように考えるべきだったかもしれない。
「
今宵がまた何か言うとチャットが滝のように復活する。
普通のチャットが読みたい時は今宵に頼めば読めそうだなと思い、気を取り直してスーパーチャットを読んでいくことにする。
『4545円:全裸待機で待ってました』
「えっ。一番初めのスーパーチャットが全裸待機ってどういう事だろう? イオリさんわかりますか?」
「い、いや~なんでしょうね? お、お風呂に入る前とか?」
なるほど。
「あ~。午後からって言うあいまいな告知だったので、お風呂に入らずにまってくれていたんですね。ありがとうございます」
『4649円:楽しみに見ています』
『4649円:ミノタウロスが消えた!』
『4545円:アステルちゃんハァハァ』
スーパーチャットを読み進めて行くが、なんだか読まなくていいようなのばっかりなんだが……。
「しかし4649円の人と4545円の人が多いですね。これは何か意味があるのかな」
「あ、シュテルンさんそれはヨロシクっていう意味と…………可愛いよって意味ですね」
「なるほど。こちらこそよろしくお願いします」
「ありがとー!」
俺はお金でよろしくのゴロ合わせをされている事をしり、今宵とそれについてコメントする。
ってかイオリさんはかなり良いように教えてくれたけど語呂合わせならシコシコじゃねーか!
だれだよ、うちの妹をそういう目で見るやつは!
「えー4545円はなんだか嫌な気分になるので、今後はこの金額のスーパーチャットは読みません」
「え! お兄ちゃん 可愛いって言ってくれてるのに? ならアステルが読むよ! えーっとなになに、『4545円:アステルちゃんぺろぺろ』……」
「な? わかっただろ?」
「うん……」
「あ、アハハ」
その後は4545円は読み飛ばし読んでいると高額なものが投げられ始める。
「ちょ、5万円!? そういう高額なのはやめてください。えぇ……? 配信してスーパーチャットを読んでいるだけですよ……?」
『50000円:アステルてぇてぇ』
『50000円:アステルてぇてぇ』
てぇてぇってなんだろう?
「イオリさんてぇてぇって何ですか?」
「てぇてぇは萌えを含んだ尊いって意味ですね。
ほうほう。
って普通はライバー同士のやり取りのことらしいのに、ここでは俺とのやり取りではなく今宵だけにってことは視聴者からは俺はいらないって事か!?
ま、まさかね?
「ほー、アステル大人気だぞ」
「ありがとうございまぁす! でも金額が多いとちょっと怖いので止めてくださいね!」
おお……俺といる時は金銭感覚がちょっとおかしい子になっていたのに今はまともなようだ。
そして『てぇてぇ』と言われたのが嬉しかったのか、今宵が何やら歌いだす。
「
……。
シュピンは歌いながらリザードマンの首を落とした音です。はい。
「
「おに……シュテルンもイオリさんもさんはい!」
「「「ティンクル ティンクル リーロ スター
ハー ワイ ワンダー ワッ ユーアー! 」」」 シュピン!
俺たちは歌うだけで今宵は魔力感知で敵を発見して、素早く歌いながら移動して首を落とす。
まあ……お星さまになって魔物が消えて行くから合ってるような気はするけど、これ子供がよく聞きそうな曲だろ。
大丈夫か?
そう言えばこれと同じで、父さんが『ABCの~海岸で~、カーニにち〇〇ん挟まれた~♪ 痛いよ~痛い! はーなすもんかソーセージ』とか子供の頃に歌ってたのを思い出した。
「お、12階層への魔法陣が近くなってるから12階層にいこう」
今宵はノリにノっているが、情操教育に悪そうなので階層を変えて歌をやめさそうとする。
これなら
オークがいないのでここではあの歌を今宵が歌うことはないだろう。
12階層に移動して俺たちは魔物を探す。
「ここは広いので走りながら移動します。あちらにガラドクヘビがいるようなので移動しますね」
俺はそう言うと2人を促して移動を開始する。
「え~送られてきたスーパーチャットの中に投げ銭かスパチャと略してくださいというものがあったので、これからはそのどちらかを使います。それからイオリさんが空気ですというのも送られて来てますね。たしかにゲストの見せ場が少なかったですね。ここからはイオリさん単独で戦ってもらいたいと思います」
「ちょ、えぇ? シュテルンさん? ここ12階層ですよ? 一人でなんて無茶ですよ」
「いえ、イオリさんのレベルであれば余裕です。あの茂みにガラドクヘビがいるんでお願いします」
俺がそう言うと、イオリさんはしぶしぶ茂みの方へ向かってガラドクヘビを探す。
キョロキョロと探しているが、見つけられないようだ。
今宵がこちらを見て、投げる? と目線を送って来ているが……クナイを投げたらさっちゃんの時のように結局は驚かせることになるのではないだろうか?
俺はとりあえず、待ての合図をしてイオリさんを見守る。
イオリさんは業を煮やしたのか剣で茂みを払い始めた。
それはさすがに悪手では?
茂みを払っていると、当然ガラドクヘビが飛び出してきた。
「きゃっ! アッ アー!!」
……イオリさんは足に噛みつかれ、放送事故のようになってしまっている。
「……アステル」
「うん」
シュピン
今宵が一撃でガラドクヘビの首を落としたが、イオリさんは噛みつかれて体をビクンッビクンッと震わせている。
毒か……。
俺は急いでイオリさんに駆け寄って回復魔法のキュアを使った。
「クリーン、キュア、ヒール!」
「イオリさん、大丈夫ですか?」
しかしこの間、みんなが買い物に行くと言って一人でダンジョンに潜る事になった時に回復魔法のレベルが上がっていて良かった。
まあ、もちろん回復魔法のレベルが上がっていなかった場合は毒消しのポーションも買って持っているので、それを使えば良かっただけだが節約にこしたことはないからね。
「……大丈夫じゃない。一人では無理だって言ったよね? まだ私に試練をかけるの? うわーん」
「ちょ……」
ゲストが急に泣き出すという失態を犯してしまった。
しかも相手は美人有名MeTuberだ。
これはまずい。炎上してしまう。
「イオリさん大丈夫ですって、噛まれたところを見てください。ほら痛くないーい、傷もなーい!」
「うう……怖かった」
「それは……すみません」
いやでも17レベルだぞ?
さっちゃんたちよりレベルが上でしかも1つ分壁を多く超えているから余裕だと思うよね。
もしかしたら手に入れたスキルがあまり良くないものだったのかもしれない。
スキルや魔法を聞くのはマナー的にどうかと思ったので聞いていなかった事も失敗の一つだったか。
「イオリさん、ガラドクヘビは気配をとらえるのは難しいけど、襲ってきた瞬間にこうシュパってやれば防御力は低いから一発だよ!」
「そ、そうなの?」
「うんうん! 驚いちゃったから動きが遅くなっていたけど、よく見て剣を動かせば対応できるよっ」
今宵が空気を変えてくれて助かった。
しかしこのままガラドクヘビとの対戦を終わらせると嫌なイメージが残ったままになるので、それを払しょくしてもらわなければならない。
「イオリさん、このままだと嫌なイメージが残ったままになるのでもう一度やりましょう。大丈夫今度は絶対に怪我はさせません。信じてください」
俺は目に力を込めてイオリさんに話す。
「う、うん。お願いね」
イオリさんはプルプルと震えながら立ちあがり、頷いた。
「イオリさん、今回は茂みではなく地面を這っているようです。あそこですわかりますか?」
「え、ええ」
「じゃあやってみましょう。大丈夫、守りますから」
俺がそう言うとイオリさんはガラドクヘビに向かっていき、ガラドクヘビが飛びかかってきたところに剣を一閃して倒したのだった。
「た、倒せた!」
イオリさんは倒せた喜びで一度俺に抱き着いて、そしてそのあとは今宵とハイタッチをして喜んでいる。
何とかダメなイメージを払拭できたかな。
俺はそう思い、時間もそろそろ遅くなる事もあって、もらったスパチャのコメントを読み上げると、
「この配信が面白いと思った方は
と言って今宵とイオリさんの方を見る。
すると今宵は何もない空間の下を指さしながら「
と今宵も言った所で、二人を画面にうつしながら配信を終了したのだった。
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○○:「矜一。装備品を買った店の情報も俺に送っておけ。対策が必要だからこっちでやっておく。今後はお前の配信を見たら正体が気にならなくなるような緩い暗示でもかけておくか。一度カメラを回収して付与を掛ける。お前も早めに契約魔法は覚えておけよ」
○○:「ああ……気づけませんでした。耳付きフードは妹の話だと○○という店で他の装備は○○です。契約魔法……努力します」
きらきら星(原曲)とABCの歌(原曲)は18世紀フランス末の曲ですので
著作権はありません。なお、翻訳の方ではありません。よろしくお願いします。
ジャス〇ク怖いです。原曲ですよ! 切れてますからね(著作権)
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