第88話 スタミナポーション(黄金)

 ガラドク蛇を倒した俺たちはまた移動を開始する。

 移動時の平均時速って停止すると、加速をしていく時間を含めて一気に落ちるからそこにも配慮して時速配分をして行く必要がある。

 魔獣を狩りながら進むとロスが多すぎるので戦えそうな距離に魔獣がいても今回は放置している。


 

 ビッグロックまであと半分という所まで進んだ辺りで進路上に魔獣の気配を感じた。

 ガラドク蛇に感じた気配ではないからラダックだろう。


 「お兄ちゃん」


 「わかってる。みんなもう少ししたら進路上に魔獣が出るから少しずつペースを落として」


 俺は全員に声をかける。


 

 それから少ししてラクダのようにコブがある生き物を発見した。あれがラダックだろう。


 「ハァハァ……。あれがラダックですか? 普通の動物にみえますね」


 走って息を荒くしているさっちゃんが言う。

 たしかに見た目は普通の動物に見える。

 攻撃をして来ないとは講習でも言っていなかったし、ギルドで調べて読んだ資料にも書かれてなかった気がするが……。


 「お兄ちゃんどうするの?」


 うーん。

 強さ的にはどうなんだろう? 

 リザードマンを1対1で倒せる実力があれば問題はなさそうには思える。


 「七海さんと葉月さん、それとキィちゃんとさっちゃんの4人で倒してみて」


 「「はい」」 「了解ー」 「うん!」


 4人はそういうと、ラダックを囲んで剣を構えた。

 ラダックは囲まれるとこちらを敵と判断したようで後ろ足で真後ろにいるキィちゃんに砂をかけると前方に突進した。


 今までノロノロとした動きだったし見た目も鈍重そうであるのにかなり素早い。

 ラダックの正面で剣を構えていた葉月さんはそれを横にかわして剣で切りつける。

 切り付けられたラダックは『ボエー―』と鳴きながら葉月さんに向かう。


 そこを最初に葉月さんの左側に陣取り、今はラダックが葉月さんが身をかわした方向へ向きを変えたために真後ろになった七海さんが斬りつけた。


 そしてそれに反応したラダックはさらにそちらに対応しようとして向きを変えようとするが……、葉月さん、キイちゃん、さっちゃんの3人が同時にラダックに攻撃を仕掛ける事によって倒す事に成功した。

 

 4人なら余裕があるね。

 というか攻撃が突進だけだったから、かなり楽な部類に入る気がする。

 擬態で居場所が分からなかったガラドク蛇の方が圧倒的に脅威だろう。


 「あ! 何か落としてる!」


 葉月さんが声をあげるので見に行くと、確かに黒い塊が落ちていた。


 「ドロップ品か?」


 「それっぽいけどなんだろうねー?」


 うーん。

 近づくと何となくお布団の匂いがするが……。

 触って良い物なのだろうか?


 「どうするんですか?」


 キィちゃんが聞いてくる。


 うーん、うーん。どうしよう。


 「お兄ちゃんとりあえずアイテムボックスにしまっておけば? それなら触らなくてもいいし、後でギルドに持って行ってみてもらえば良いんじゃない?」


 俺はそれもそうかと思い了承する。


 「そうしようか。じゃあ俺がアイテムボックスに入れておくよ」


 「はーい」 「わかったー」


 「しかしラダックは突進さえかわせばそれだけっぽかったね」


 俺は先ほどの戦闘の話をする。


 「うんうん! ちょっとだけ突進力はあったけどリザードマンの剣の攻撃を考えれば速さは問題なかった!」


 そうか。

 突進力は動物的というか筋力での速さがラダックの方があったとしても、リザードマンは剣を振るう。

 その剣速を考えればそれに対応できればラダックも対応できる感じかな。


 他のみんなもそれぞれで先の戦いの感想を言い合っていた。

 この話し合っている時間も良い休憩になるだろう。

 数分間の話しながらの休憩を挟んだ後に俺はさっちゃんに話しかける。


 「さっちゃん、ここでビッグロックまではあと半分くらいだからみんなにスタミナポーションを渡しておいて」


 「わかりました」


 そう言うとまずは俺に1本くれようとするが……、確か5本しか持ってなかったよなと気付く。


 「それは今宵に渡してやって。俺は大丈夫だから」


 「はい。わかりました」


 さっちゃんはそう言うと今宵に1本を渡した後に、みんなにスタミナポーションを渡していった。

 実際の名前がスタミナポーションかどうかはわからないけどね?


 「じゃあ疲れてたら飲んでから行こうか。余裕がある場合は疲れたら飲む感じで」


 俺がそう言うとさっちゃんとキィちゃんと七海さんはすぐに飲むようだ。

 葉月さんがまだ大丈夫なのはJOBによるステータスの上昇が魔法方面ではなくて肉体方面だからだろうか。

 キィちゃんが飲むのは、葉月さんと同じ剣士ジョブであってもステータスの耐久や敏捷が少し低かったからかな?


 あの時からはステータスもあがってはいるのだろうけれど、葉月さんも成長している事を踏まえれば差が縮まっていないだろうしね。

 俺は飲み終わるのを確認してから時計を見てビッグロック迄の時間を想定すると、みんなを促してまた進み始めるのだった。



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