第29話 ゴールデンウィーク④

 帰りにギルドで昨日と今日、手に入れた5階層までの魔石をスポーツバッグに入れて納品すると、合計金額が1万9100円だった。

 4~5階層の魔石は1つ200円か……。

 買取所で35万越えを見た後だと物凄く安く感じる。


 「7階層の魔物の魔石って一つ幾らになりますか? 後ミノタウロスの魔石の値段も教えてもらえれば嬉しいです」


 俺は対面していた受付嬢に魔石の値段を聞いてみた。


 「7階層……、オークね。それなら1つ1000円で買い取っているわよ。ミノタウロスは1つ10万円ね。ボス狙い? ミノタウロスの魔石は値段が高いけど、倒してから10時間きで多くは倒されていていないし、いない場合は何時に倒されたかもわからないからいたらラッキーくらいで狙うのがちょうど良いわよ。でもさすが、第一東校の生徒さんね。魔石も多かったし。気を付けてね」


 ふむふむ。

 そうなると企業の魔石・素材買取所の方は魔石だと1.2倍の値段か。

 ミノタウロス10万の1.2倍が12万、そこから1.5倍の18万。端末で入金などのやり取りをするけど、このお姉さんの反応だとレベルなんかの詳細はそれだけだと見ないって感じかな。


 偽装後のステータスなら5Fまでは行けるはずだけど、レベル判断なら2階層だし。レベルで今までさげすまれてきたので、何となく好意的程度の会話でも嬉しい。


 「はい。心配してくれて有難うございます。気を付けて頑張りますね」


 お礼を言って俺はギルドを退出した。

 それにしても、ミノタウロスは10時間湧きなのか。

 昨日今日で2回とも居たのは本当にラッキーだ。


 時計を見ると、18時30分を過ぎた所だった。

 楓さんは18時までって言っていたから、今行けば会わずに魔石が売れるな。

 と言うかオーク肉も売りたいが、アイテムボックスを隠すとすれば運び方が思いつかない。


 ポーターを雇って運んでいるのが一般的だが……。

 今の俺の魔法レベルと魔力ではアイテムボックスの容量がオーク2匹分程度しかなく、装備なども入れてあるため今回は1匹しか持って帰って来ていない。

 とはいえずっと入れておくわけにもいかない。


 肉を売ったりする場合にこのままずっとアイテムボックスを隠すというのも非効率か……。

 解体所の人にだけ知られるのなら大丈夫かなと考えて、オーク肉を売る事を決意する。

 先に魔石を売りに来ていると、隣のブースで話している男の声が聞こえてくる。


 「今日はラッキーだったよ。10階層のボス部屋を覗いたらミノタウロスが倒されたまま放置されててさー。戦う事無く50万ゲットよ。9階層で狩りをする予定を切り上げちゃったよ。ハハッ」


 えぇ……。ミノタウロスって肉は50万なの? 

 魔石を取りだす時に切っているから多少の血抜きもしちゃってた? 

 そうかオークが豚ならミノタウロスは牛か……。


 ハッと対応してくれている魔石買取の女性を見ると、俺がミノタウロスの魔石を売った事は知っているので目が合い少し気まずそうにした。


 「魔石買取金額の合計が20万3800円です。それぞれの買取の詳細がこちらです。  お肉の値段より低いですが(ボソッ」

 「はい……」


 後半は小声とは言え、対面なので普通に聞こえるからね?

 6階層の魔石は1つ220円か。

 ギルドでは5階層の魔石は1つ200円だったのでやはりギルドの買取の1.2倍らしい。

 少し気まずいまま取引を終え、気を取り直してすぐ隣の解体所にやって来た。


 「すみません、オークの買取をお願いしたいんですが何処に置けば良いですか?」


 「おー、こっちに持って来てくれ」


 少し移動して場所を指さされたので、俺はそこへオークを取り出す。


 「おお、アイテムボックスか。兄ちゃん今年東校に入った1年か? 有望だなぁ」


 「はは、あまり見せると面倒が増えるんでここだけの話でお願いします」


 「わかってる、わかってるって。血抜きは出来てるようだな。状態も悪くねぇ。毒とかは使ってないよな? 解体する分その値段は引くが、買取でいいんだよな?」


 「はい、毒は使ってないです。お願いします」


 鮮度や傷の有無を確認しているのだろうか、忙しなくオークの状態を調べている。


 「そうだな、完全な査定は解体した後になるから入金は明日以降になる。それで良ければこれにサインした後にギルドカードを……東校の生徒さんなら端末か。ここに端末を翳してくれ。明日そこに買取予定金額が表示されたら、そこで承認してくれれば入金後に取引は終了だ。承認が1日放置された場合も同意とみなされ入金されるから気をつけろよ。金額に同意できない場合は承認前に端末でやり取りするかここに来てくれたら良い」


 「わかりました」


 放置しておいても入金されるのは逆にありがたいかもしれない。

 俺はそう思いながら帰路についたのだった。

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