第14話 部活づくり(青春)

 七海さんと葉月さんと一緒に食堂に行く。

 道中では昨日のダンジョン探索の話で盛り上がった。

 魔石だけで17000円弱だった話をすると目を輝かせた後に、取り出すのにも慣れなきゃねと二人で落ち込む姿は可愛らしい。


 食堂に付き、二人は食券を買いに行った。

 その間に俺はセルフで水をコップに入れ、3ヵ所において席を確保した。

 お茶もあるけど、水で良かったかな?

 少し待っていると、まず葉月さんが戻ってきた。

 きつねうどんだ。


 「蒼月君、水を取ってくれてるんだね。ありがと!」

 「ああ、場所取りもついでに出来るしね。お茶もあったからそっちが良かったらごめん」

 「ううん、家以外で食べる時って飲み物を頼んだ時以外は水って感じない?」

 「わかる」


 セルフサービスの水一つで言葉のキャッチボールが出来る嬉しさ。

 同級生とこんなにしゃべるなんて数年ぶりだ。


 「遅くなってごめんねー。あ、お水ありがとー」


 少し後に七海さんも戻ってきた。

 定食のようだ。


 「全然、学食ってすぐ来るんだね。水とお茶もあったよ。あそこでセルフ」

 「あはは、ありがと。大丈夫だよー」


 じゃあ食べようかとなって俺も弁当に手を付ける。


 「そう言えば蒼月君聞いてよー、昨日あの後に部活紹介を聞きに行ったんだけど1-5クラスで入れるような部活がなかったのー」


 「そうそう、何なのあの人達! 最初から1-5は募集していないので来ないでみたいに言うの!」


 弁当をつついていると二人が憤慨した様子で昨日の話をしてくる。


 「部活紹介? でもパンフでは入りたい所に入れるみたいな感じだったよね?」


 「そう! 部活紹介自体は普通なんだけど、最後に1-5クラスからは募集していませんだとかね。それを言わなくても1-5の人たちが質問をしたら、3年間部室待機ですだとか、3年間装備品磨き専門としてだとか明らかに他のクラスと対応が違うのよ!」


 ばーん! と言う感じで葉月さんが立ち上がる。

 えぇ……。ステイ! ステイ!!


 「ちょ、葉月さん興奮しないで」

 「あ、エヘヘ。盛り上がっちゃった」


 ごめんねと舌をだして体の前で手を合わせる。

 可愛い。

 と言うか、装備品磨きって普通の部活でいう1年生は球拾いとかかな?

 それを3年間って……。

 もっと酷いのは3年間部室待機ってなんだよ!?

 大企業に存在すると言う、出社して何もすることがない部屋で1日過ごさせる追い出し部屋リスペクト?

 入部はできるけど、雑用や何もしない待機ならその部活に入る意味はない。


 「て言うか、この学校ってそもそも外部受験組を馬鹿にして見下してるよね!」

 「ねー。でもね、教員の方が一応脇に控えてたけどそういう発言をしても対処してくれなかったのよねー」


 なるほど。

 俺が感じていた通りにこの学校は差別が大きいのかもしれない。


 「でも1-5クラスでも成績が良ければ、他のクラスに上がれるって話なのに最初から除外って不思議だね」

 「そうなの! でも彼らの言い分では、私たちは落ちこぼれらしくて才能はないし努力をしても上のクラスには上がれないから、部活に入るだけ無駄って言うの。他のクラスの子は既にできることをいまさら教える時間もないんだって」


 葉月さんがこぶしを突き上げながら教えてくれる。

 そこまで馬鹿にされたの? とビックリする。


 「じゃあ、1-5クラスの人は部活動できないのかな? それで結局はポイントも少なくて上がれないって話?」

 「うーん。一応上級生の5クラスの人達がやってる部活動もあるみたいなんだけどね‥‥‥」

 「そうなの? ならそこに所属する感じになるのかな?」

 「でもねー。5クラスの先輩方の部活動って部室が学校内にはないし、練習とかは公園だったりダンジョン内でするらしいのよね‥‥‥」


 ふむ。

 話だけ聞くと部活動ではなく単なる地域サークルみたいだな。

 それでも部活動としてポイントが増えたりするならそこに所属するしかないのだろうか?


 「その部活でもポイントとかは加算されるの?」

 「えっと、確かそのはず。大会にも一応は出れるみたいな事は言ってた気がする? でも凄い不利な感じの話し方で不安だったんだよね」


 なるほどね。

 ただまあ、学校関連のことは俺にはどうにもできそうにないな。


 「うーん、、それだと部活をせずに放課後は独自にダンジョンに入って研鑽するか自分で部活を作るとかになるのかな?」

 「「それだ!」」


 二人の声が急に合わさってビックリする。

 高校生の憧れと言えば、部活づくりは基本だよね。

 新規に作られたSNS団とか奉仕部、隣○部なんて有名だし。


 「蒼月君に話してみて良かった。上級生達の5クラスの部活動の話をもう少し聞いたりしてみて、並行して自分たちで部活を作る事も視野に入れて考えようかなー」

 「力に慣れたなら良かったよ。何時でも話を聞くから何かあれば相談してね」


 ボッチにならないためにも予防線を張っておく。


 「うん、ありがと」

 「ありがとねー」


 食事を終えて俺達は授業に戻る。

 二人も少し気分が回復したようだ。

 しかしやはり既存の部活動では入れたとしても雑事を任されたりイジメられたりしそうな感じだ。


 

 

 昼の座学をすべて終えて放課後になる。

 昨日の夜にステータスを確認したが、やはりレベルは上がっていなかった。

 金額的にも手ごたえ的にも昨日は悪くなかったので、俺は今日も1階層で狩りをしようとダンジョンに向かうのだった。











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