第15話 ポーション
****
今日は入学式から約3週間がたった木曜日の放課後、今までダンジョン1階で狩りをし続けて手に入れた金額がやっと15万となった事で当初から欲しかった低級ポーションをギルドの売店に買いに来ている。
3週間の間に何度かダンジョンの2階にも行きゴブリンを倒したが、小鬼と呼ばれるだけあって120センチ程度と小学2年から3年生くらいの身長であるので、負ける事はないが、棍棒を振りかぶり積極的に攻撃を仕掛けてくるために危険度は跳ね上がった。
今の所大きなけがをした事はなく無事ではあるが、やはりソロでやっている以上は回復の手段は持っておきたい。
各種ポーションは人気も高く高価であるが、剣で切られて流血した場所が1ヵ所であれば低級ポーションで治療が可能となる(ヒールと同程度)
この低級ポーションの小瓶が1本13万、そして帯剣ベルトに付けられるポーションが6本入れられて衝撃に非常に強く劣化がしにくくなるポーチが2万弱するという事もあり15万円が貯まるまで1階で資金稼ぎをしていたのだ。
お金を払い、ギルドを出る。
「これで安心して2階に狩場をうつせる」
俺は一人そうつぶやいてダンジョンに向かった。
ダンジョン前の広場に差し掛かるとこの3週間で見慣れた3人の子供が目に入る。
彼らはポーター(荷物運び)としていて活動していて、1階でポータがいればと思っていた俺は一度話を聞いてみた事があった。
3人は何時もボロボロな服を着て道を行く探索者にポーターで雇ってくれないか聞いていた。
話を聞くと、3人は児童養護施設の子供らしく一般の公立(私服)に通い放課後ここにきているそうだ。
1人ずつ別々に雇われる事は拒否していて、しかも2階層まで限定、時給1人1000円×3、18時までという条件を付けていた。
これは一般の探索者からすれば、まず雇う事がない条件だろうと思う。
個別の時給自体は問題ではないが、3人一緒となると跳ね上がる。
更にダンジョン1階層から2階層は人も多く、魔獣と遭遇する事も少ない。
そして何より雇える時間が短い事と1階~2階でポーターを雇って迄狩りをしても儲けが少なくなるという事が挙げられる。
しかし、俺の目線で見れば自分専用になってほしいくらいである。
何故なら主要の道から大きく外れた場所でマウスが狩り放題だからだ。
リヤカーを引いてもらって往復すれば大きく稼げるだろう。
ただ、結局その時は雇う事はなかった。
理由としてはリヤカーも持っていないし、何度も往復していれば他の探索者も旨味に気づいて直ぐに狩場は稼げなくなると思ったからだ。
彼らと話をした時を思い出しながら3人を見なおすと、1人が横たわりもう2人が必死で周りに何かをお願いしている。
近づくにつれ声が聞こえるが、遠巻きに見るだけで力を貸す者はいない様だ。
「誰かマコトを助けて!」
「マコト、しっかりしろ! お願いです誰か助けて下さい!」
流石に会話をした事があるのにスルーは出来ない。
俺は早足で近づいて声をかける。
「大丈夫か? 何があった?」
「あ、お兄さん!」
話を聞くと、どうやら何時ものようにポーターとして雇ってもらえるように声を掛けていたら、うるさいと言われて殴る蹴るの暴行を受けてその後にマコトの様子がおかしいそうだ。
倒れてるマコトを抱き起し顔を覗く。
多少のあざはあるが、顔はそれほど殴られてはいない様だ。
「うっ」
痛みのせいか声をあげるが視点が定まっていない。
病院に連れて行くべきか悩んでいると、マコトはもう一度声をあげると血を吐き出した。
俺自身がパニックになりそうになる。
これは口の中が切れているのか内臓からの出血かで大きく状態が変わってしまう。
口の中を開けて確認してみるが、血で何処から出血をしているかはわからない。
体に痣などがあるか確認するために俺はトップス……シャツの前ボタンを外す。
「くっ‥‥‥、ブラ‥‥‥」
姿かたちと名前から男性と思っていたマコトはそうではなく、平坦ではあるが胸部に女性用の下着をつけていたために動揺する。
しかし逆にパニックがそれで収まり腹部を確認。
うっすらと内出血を起こし膨らんでいるように見える。
もしこの膨らみが血によるものなら、一刻の猶予もない可能性がある。
俺は先ほど買った低級ポーションを取り出し、マコトの口から少しずつ流しいれた。
「ぐふっ、、」
一度目は飲みこめずに吐き出してしまった。
「マコト、これはポーションだ。飲み込んでくれ!」
俺は何度も声を掛けながら、ゆっくりと少しずつもう一度ポーションを口に流しこんだ。
痛みが取れてきたのか苦しそうなうめき声はいつの間にかなくなっている。
他の2人も落ち着いたようだ。
しかしこの後はどうするか。
ここまで見た以上、じゃあさようならと言う訳にも行かない気がする。
病院か治療院に連れて行きたいが今の俺には金もない。
俺は他の2人に話しかける。
「低級ポーションを飲ませたが、治っているか俺には判断がつかない。マコトを連れて施設に行ってそこから大人の力を借りて病院で診察を受けるべきだと思うがどうだろうか?」
すると2人からではなくマコトが返答した。
「も、もう大丈夫。お兄さんの薬でさっきまでの痛みはなくなったよ」
「しかし‥‥‥、念のため、診察は受けておくべきだ」
「「そうだよ、マコト!」」
「わ、わかった。これから近くの病院で診てもらう」
「金はあるのか?」
俺は気になった事を聞いた。
「少しだけならあるよ。もし足りなければ施設にお願いするから大丈夫」
「そうか」
俺は気にはなるが、何処まで付き添うのかという事もあり、病院に行く事を念を押してから3人が移動するのを見送った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます