第11話 自己紹介

 罵詈雑言ばりぞうごんに耐えていると、教室に冴木先生が入ってきた。


 「席につけー。ホームルームを始めるぞー」


 緩い声で着席を促す。


 「んー、欠席はいないようだな。今日の予定だがまだ入学2日目という事もあってまずはこの後1限の終りくらいまで自己紹介をしてもらう。今日は授業自体はないのでそれが終わったら10分の休憩だな。その後は、端末の学校の地図を見ながら施設の紹介をする。武器のレンタルが出来る場所や武器防具の作成なんかを依頼できる所、訓練場、保健室や図書館などだ。その後は探索者活動を今まで一切していない人は俺が先導して、集団で探索者協会の見学とダンジョン1階に入って2階に行く魔法陣の所まで見たら帰還する。既にダンジョンに入った事がある者はその間ダンジョンで活動しても良い。その後、午後からは体育館で部活動の紹介があるのでそれを見たい人は学校に戻って体育館に行くように。今日はそれで終わりだ。部活紹介のパンフレットを配っとくぞー。部活は別に入らなくても良いが、入っているだけでもプラス査定のポイントがあるし大会成績でもプラスされるからなー」


 冴木先生はそう話すと、一番前の列にプリントを配布していく。


 「プリントは行き渡ったな? じゃあ成績順、窓際の九条から自己紹介してけー」


 「九条くじょう レンです。レベルは6でジョブは剣士についています。ギルド探索者協会ランクはDです、スキルで武器マスタリー、身体強化1を持ってます。今までレンと呼ばれていたので気軽にレンと呼んでください。宜しく」


 ザ、イケメン。

 1人目で教室はザワザワする。

 全体的に顔のバランスが良く、鼻筋が通っていて眉毛も綺麗に整っている。

 髪は染めているのか茶髪だ。

 1-5の外部入学1位は1度目の壁を超えてレベル6か。


 ギルドランクもDという事は既に新人レベルを超えて一般レベルだ。

 世界の約1%の人口に生まれながらにスキルか魔法があり、レベル5の壁を超えて6になるともう一つ選ぶ事が出来るようになる。

 更には基本職のジョブ(job)を選択が可能となる。


 ダンジョンが出来た当初はレベル6になると覚える事が可能になる生活魔法を殆どが取得した。

 しかし、ダンジョンを攻略するにあたって生活魔法では敵を倒す事も出来ず魔獣の身体能力の高さからレベル6になった時に生活魔法を選ぶのは愚策としられるようになった。


 魔法かスキルから選べスキルには身体強化というスキルがあり、今現在、レベル6で覚えられる魔法もしくはスキルでは絶対に身体強化を選ぶ事というのが鉄則である。

 ちなみに俺の父親と母親は生活魔法を取得している。


 レベル6で身体強化を選んでるだろうから初期スキルに武器マスタリーか。

 名前から言えば武器は何でも扱えるとかか? 

 30人のクラスで既に最初1人で初期スキル持ちがいて、1%の確率を超えている。


 「一ノ瀬 葵いちのせ あおいと言います。茨城から来ました。レベルは4でヒールが使えます。魔法から回復役の後衛を希望しています。スキルは持ってませんが杖術も使えます」


 2位の子は最初から回復魔法持ちか。

 見た目は犬顔と言うのだろうか? 

 目じりが少し垂れていて、大きな目元で愛らしい感じの中にキリリとするものもある。

 髪は肩まであり巨乳だ。


 回復魔法は最初から持っているスキル・魔法の中でもかなりレアだと聞いた事がある。

 確実に中学で国立第一中学から勧誘があったはずだが、その時は入らずに今回外部入学したようだ。


 そして、このスキルはないが杖術を使えると言う話。

 これは例えばステータスには表れてないが、昔から空手を習っていたとか剣道をしていたと言う場合にスキルには表れないが当然、何もしていない人よりも圧倒的に違いがある。


 スキルがあれば、知識や動きの基本をインストールされているような状態、ない場合は基本から学び、身につけるには努力や才能がスキル持ちより必要と言った感じである。


 「十六夜 椿いざよい つばきです。剣術スキルを持ってます。レベルは5です。薙刀を使います。ダンジョン経験は高校に入学するまでありませんでした。宜しく」


 凛としたその立ち振る舞いは人を引き付ける。

 正義感が強く、正直者が馬鹿を見る事を嫌い自分をしっかりと持っているために多くから慕われる性格をしている。

 幼い頃は少し猪突猛進のきらいがあったが、それも中学ではなくなり度胸があり困難に立ち向かう様な性格へと昇華された。


 ただし、俺への態度を除く。

 中3の時に薙刀で日本一になっているけど、薙刀って刀っぽいけどどちらかと言えば槍に分類されるはずなんだよなぁ。 

 そう考えると、適正ではない武器を選んでいる事になるのか?


 「堂島 海斗どうじま かいと。神奈川出身。レベルは5で氷魔法が使える。外部入学で同じクラスになった縁、このクラスの皆が欠ける事無く2年に上がれる事を願う。宜しく」


 「おーい、既に第一東の品格を落としてるやつがこのクラスにいまーす。欠けるんじゃね?」

 「「キャハハ」」

 「静かにしろ!」

 

 冴木先生から注意がはいる。

 人の自己紹介中に俺の悪口をいうとか、まともな教育を受けていないのか?


 堂島君はメガネをかけた見た目から判断すると冷静沈着なように見えるが、自己紹介を聞く感じ性根は意外とアツいのかもしれない。

 品格を落としているものと言うヤジでこちらを見て眼鏡をくぃっとしたのはなんだろう? 欠けないゾ!


 しかし真面目に聞いていたのにさっきのヤジで一気にどうでも良くなってきたな。

 しかも4人目まで全員初期スキルもしくは魔法持ち。

 受かるだけのポテンシャルがあるようだ。


 自己紹介は続いて行くが、誰しもヒーローやヒロインになり得るような人たちだ。

 これで1-5クラスだと言う事が本当に驚く。

 中学の事を知るのが椿だけなので高校デビューできるかと思ったが、今の所それはかなりピンチに陥っている。


 ちなみに椿と一緒にダンジョンに行っていた4人のうちのフツメンは6位の榎本えのもとといって気配察知のスキルを持っていた。


 椿たちは1~4位と6位でパーティを組んでダンジョンに入ったようだが、この並びだと5位はどうしてそのパーティにはいらなかったのかが気になってしまう。


 5位はそこそこイケメンの男子だったが、陽キャの中に入れない陰キャだったりするのだろうか? 

 たしか先天性のスキルも魔法も持っていなかったから、ハブられたんだとしたらそれはそれで悲しいものがある。

 まあわからんけど。


 皆の紹介が終わり、いよいよ俺の番がやってきた。


 「蒼月 矜一あおつき きょういちです。レベルは1です。趣味は小説を読んだり、アウトドアで活動する事も好きです。今後はダンジョンを通してスキルを磨けて行けたらと思います。自分は自宅からの通いですが、全国から来て寮の人も多そうですね。是非とも仲良くしてもらえたらと思います。宜しくお願いします」


 「プハ。レベル1だって。え? 趣味? この学校どこだか分ってる?」

 「仲良くしたらハブられそうだから嫌でーす」


 大きな声やひそひそ声が聞こえる。

 いや自己紹介なのに俺が間違ってるの?


 「よーし、じゃあ自己紹介は全員終わったな。10分休憩する。次は端末だして学校の地図をだしとけよー」


 

 休憩後、先生の指示に従い端末で学校の地図を出す。

 自分の今いる教室の場所から校舎や体育館、大きな建物を目印に職員室や図書館、保健室など他の施設の場所と使い方の話を聞いた。


 「各闘技場では闘技場と観客席の間にバリアフィールドが張られていて物理・魔法はそこで止められる。また闘技場内に入るとダンジョンコアシステムだかなんとかきちんと解明されてはいないんだが、ダンジョンルーラーと言う人が作ったもので闘技場内で死亡した場合は隣室にリスポーン、ダメージを受けた場合は闘技場から出ると回復する仕様になっている。痛みは普通にあるからな。詳細については聞くなー、そういうものだと思えー」


 闘技場が物凄く高性能な件。

 これがあれば実践的な練習はし放題だろう。


 「あー、闘技場は基本的には授業もしくは大会、部活で使用する事になるので個人で使う場合は申請して受理される必要がある。ただし、予約でいっぱいだから予約枠を譲ってもらうくらいでしか使えないと思ってくれ」


 なんだ、自由に使うのは無理そうか。

 死なずに練習できるなら物凄いアドバンテージだ。

 部活に入るつもりはなかったが、入るべきだろうか? 


 しかし今朝の掲示板事件を見ても、クラスの反応を見てもまともな人格者がいるように思えない。

 死なない事で逆に壮絶なイジメもありそうだ。


 「闘技場の隣のこの施設は初心者用だが、武器や防具をレンタルする事が出来る。ここの事務所は一応24時間開いている。この1棟では中にそれぞれ鍛冶施設や魔道具の工房なども入っている。今日この後ダンジョンに行く者で武器がない人はここで貸し出しを受けると良い。基本的には無料だが無くしたり壊すと金額がかかる様になるから気をつけろよー」


 ダンジョンは一度行ったので、集団見学には参加しないがダンジョンには行くつもりなのでここで武器をレンタルして行く事にしよう。


 「施設紹介はこのくらいかな? まあわからなければ再度俺に聞くか端末をクリックして詳細確認しとくように。では10分休憩後、ダンジョン見学に行くものはここに集合だ。午後からは体育館で部活の説明会もある。行くものは忘れないように。では今日はここで解散」


 入学2日目ともあって授業などはなく、これで家に帰っても良いようだ。

 俺はこの10分休憩の間に武器をレンタルしに行くか。

 その後だとダンジョン見学の全員と鉢合わせる事になるだろうしな。

 そう考えて、俺は武器をレンタルしに向かうのだった。

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