第5話 初心者には絶対倒せないはずの魔物を倒せた

 マナボールを放ってはすぐ次のマナボールを生成、レッサーロックゴーレムに向かって放つ。

 俺はその動作を、一秒あたり4発くらいのペースで繰り返した。


 マナボールがレッサーロックゴーレムに当たるたびに、レッサーロックゴーレムは少しよろめき、身体の一部の破片が飛び散る。

 ……どうやら、攻撃が全く通っていないわけではないようだ。

 俺はその確信を得つつ、マナボールの連射を更に続けた。


 そして……十秒くらいが経過すると、一気に変化が起こった。

 レッサーロックゴーレムが派手に砕け、木っ端微塵になったのだ。

 地面に散らばったレッサーロックゴーレムの破片は、だんだんと薄くなっていき……代わりに一個の魔石が姿を現した。

 どうやら、討伐完了のようだ。


 魔石を拾いに行こうとすると……脳内にこんな音声が流れた。


<古谷浩二はレベルアップしました>

<スキル:「マナボール」が「マナボールV2」に進化しました>


 ……今の戦闘で、いろいろステータスに変化が出たみたいだな。

 ちょっとどうなったか確認してみようか。


 俺は魔石を拾いつつ、「ステータスオープン」と呟いた。


 ─────────────────────────────────

 古谷浩二

 Lv.2

 HP 20/20

 MP ∞/25

 EXP 60/400


 ●スキル

<アクティブ>

 ・マナボールV2

<パッシブ>

 ・ダンジョン内魔素裁定取引

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 ステータスは、このように変化していた。

 レベルが1上がって……HPは10、MP上限は15増えてるな。

 てことは、これでまたマナボールの威力を上げれるようになったわけか。


 そしてマナボールといえば……音声通り、マナボールがV2に進化しているな。

 これ、具体的にどんな変化なんだろうか。

 確か……スキルは、ステータスウィンドウの該当スキルをタップすれば詳細が見れたはずだ。


 俺はマナボールV2をタップし、詳細を確認した。


 ─────────────────────────────────

 ●マナボールV2

 マナボールの進化版。

 MP1あたりのダメージ量がマナボールの1.2倍になっている。

【進化条件】マナボールを40〜4000回使う(何回で進化するかは使用頻度次第)

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 マナボールV2は……シンプルに、マナボールの強化版って感じだった。


 何というか……進化条件、凄くアバウトだな。

 俺の場合、今進化したってことは、使用頻度の高さゆえに最小の40回前後で条件を満たした感じか?


 まあそりゃ、あんな頻度で連射して最小条件を満たさないなら、逆にどうやったら40回で進化するんだって感じだよな。


 結果論だが……<ダンジョン内魔素裁定取引>を持つ者としては、マナボールのグミ撃ちは最適解だったようだ。

 この先V3やV4があるのかはまだ分からないが、もしあるとしたら、今の戦い方で最も効率よく進化させられるってわけだしな。


 結論としては、俺は今の戦いを通して、三倍の威力のマナボールを放てるようになったってとこか。

 一通り確認し終えた俺は、ステータスウィンドウを閉じ、工藤さんたちの方を振り返った。



 振り返ってみると……工藤さんは、口をあんぐりと開けたまま固まっていた。

 他の参加者たちも、目を丸くして茫然自失としている。


 ……なんかちょっと話しかけづらいな。

 そう思ったが、今手元にある魔石は工藤さんからの借り物なので、俺はそれを返しに工藤さんの元へ歩いた。



「な……何なんだ今の連撃は……!」


 魔石を渡そうとすると……工藤さんは、何が起きたか理解できないと言わんばかりの表情でそう言った。


「なぜ全魔力分のマナボールをあんなに間髪入れず撃てる!? というかお前……一体何回MPを完全回復させられるんだ……」


 掌の上に魔石を置いても、反応がない。

 というか……工藤さんは手の震えで、魔石を地面に落っことしてしまった。


「なんであんなにって、魔力が即時回復するからですよ。そしてMPの完全回復は……回数制限とか、特に無いはずです」


「なんだそれ! 一体どんな異常なスキルを取ったらそうなる!」


 説明すると、即座に勢いよく叫ばれてしまった。



 ……なぜこういう反応になる?

 あれくらいのことができないと思われていたなら、そもそも俺を四階層の魔物で試そうとかしないと思うんだが……。

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