どこにいても。


「なぁ俺からもいいか?」

「どうしたの?矢沢。」

矢沢が何やら思い詰めたような顔をしている。

「言うんだね。ミハ。」

「ああ。」

「なになに?どうしたの?矢沢くん。」

「何かしら?」

みんなの視線が矢沢に集まる。

「俺……アメリカ、行くから。」

え?アメリカ?どういうこと?

「なんの冗談?矢沢」

「冗談じゃない。本当。……俺、親が転勤するんだ。アメリカ支社の社長だって。すげぇよな。」

ハハハッとは笑っているけど、目の奥には光がない。……え?本当なの?

「いつ?」

「来週。だから、俺、文化祭にはいられないんだ。」

来週…。だから、あの時。

「見たかったな深瀬の店員衣装。聞きたかったよ、お前らの声。」

……私たちの、声。

「……見れるよ。」

今まで黙り込んでいた美澪が口を開いた。

「え?」

「見れるよ、聞けるよ、私たちの歌。だって、ネット配信だよ。」

「まぁ、麻紀の衣装は、麻紀次第ね。」

そうだ、大丈夫。だって、ネットは

「そうだよ。どこでも見れるよ、沖縄でも、アメリカでも、ブラジルでも……宇宙でも!」

「……ふっ宇宙は無理だろ。」

「深瀬チャンはバカって感じだね。」

「バカって…。とにかく、聞いてて!!矢沢」

「うん。期待してるよ。」

歌うんだ。絶対。こいつの、みんなのために。

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