第317話 華辻 2
決して遠慮してのことではない。
いきなり
「なんだ? 食わないのか? 遠慮なんてつまらないことはするなよ」
「そんな大層なものは持ち合わせてないんだけど、さすがに手が止まるでしょ。だって・・・つまりさ、それって、食い物なの? 飾りじゃなくて」
「君たちまさか、ボクが想いを込めた花籠を君達に贈ったとでも思ったのかい?」
この言葉には、
これ以上ないほど可笑しくて仕方ないという笑い声を立て、
薄紫に透き通るそれを
「冥府では祝い事なんかで見かける食べ物さ。値は張るが、うまいんだ」
なんだか妙に色っぽい
慌てて顔をそむけ、誤魔化そうと花弁を口に突っ込む。
「
花弁を口に含んだまま目を見開いて黙り込んでしまった
もぐもぐと口を動かし、ごくりといい音を立てて中のものをのみ込んでから、
「これ、すっげー美味い! 食ってみろよ」
それを口に入れ、
もったりと厚い花弁は、手で触る分にはひんやりと心地よい触り心地なのだが、口に入れた瞬間、それは一変する。
冷たすぎるくらい口の中で涼を放つそれは氷菓子のようだ。
花弁を覆う薄い膜が淡く口内で弾けると、
続いて白い花弁を口にいれてみれば、今度はリンゴのシャーベットのような爽やかな冷たさが酷く喉に心地よい。
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