第240話 混乱 1
「・・・あれと同じ物が
「そういうこと。」
白妙の頭の中は、
胸の内は、どくどくと激しく脈動し、どうどうと荒れ狂う血流の音でふさがれた耳は、ほとんど何も聞こえない。
・・・・・・あの時、自分の意識を奪った笛の音は
神妖界を絶望の淵へと陥れ、
突然の混乱にその場が支配される中、すがるような思いで
気のせいだろうか・・・。
だが、彼の口から紡がれた次の言葉は、そんな柔らかい感覚を頭から冷水を浴びせかけたように、瞬時にザブリと洗い流してしまう。
わずかに目を細めた蒼は、刹那、何かに気づいたように眉間にしわをよせ表情をこわばらせると、冷たく刺すような紅い光を瞳に閃かせた。
「
鋭くつきつけられた蒼の声は、轟音を切り裂くように
色を失い、呼吸を・・・全身を震わせていた
「過ぎた事に囚われるな。・・・今の
混乱のあまり
突然強敵に目の前をふさがれた野ネズミが、恐ろしさのあまり心臓をキュッと引き絞られてしまった時のような様相をみせた
目撃してしまった者の目に、それはとても弱弱しく心細く映り、これ以上ないほど憐れを誘った。
いかなる時も威風をまとい悠然と雅に振る舞うのが、白妙という者だ。
いたずらにふざける時も、怒りに身を震わせる時も・・・・・・涙をこぼす時でさえ、
黒を前にするまでは・・・。
「なぜそんな言い方をっ・・・」
「
ふいに耳に飛び込んできた深く落ち着いた声に、感情の起伏は感じられなかった。
大きくも小さくもない淡々とした声で名を呼ばれ、
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