第228話 毛むぐり 4
なんだか得意げな
幸せでたまらないという表情の
その首筋は瞬く間にほんのり桜色に染まっていく。
とてもわかりにくくはあったが、
勝の手の平では一匹の毛むぐりが顎をあげ目を細めていて、なんだかとても気持ちがよさそうだ。
「・・・・・・真也。まずは、どの色を使ってもこいつらを掴むことができるよう鍛錬しろ。」
いつの間に俺のすぐ後ろに移動してきたのか、
「君の力の使い方は、根本が違っている。昨日君が出した刀は、力を刀の形に固めただけだった。木刀で殴り斬っているような状態だ。力の乗せ方と想像力を磨けば、もっと自由に・・・強力な能力を使えるようになる。」
今の俺は、粘土を固めるみたいに力を無理やりこねて形にしている。
「完璧に使いこなせるようになれば、他人の身体を自分の妖力で覆い、力や念を無理やり抑えこむことだってできるんだ。ただし、互いにかなりの危険を伴うし、全身を覆うとなれば、恐ろしいほどの妖力を必要とする。だから普通はやらないし、よほどの奴じゃなきゃできないけれどね。」
確かに。
指先をぴたりと包み込むイメージを形にもっていくだけでも、かなりの精神力を使う。
さらにその状態を保ちながら動かすとなれば、相当な鍛錬が必要になるだろう。
ましてや相手の動きに合わせ、その全身を隙間なく覆うなんてこと・・・・・・考えただけでも気が遠くなりそうだ。
「ここにいる毛けむぐりの捕獲・・・しばらく続けろよ。昨日のやつらのことは気にするな。どうせしばらくは動けない。・・・焦らなくていい。色々試してみるんだ。」
「ありがとう。やってみます。」
俺が笑顔で答えると、
ふと蒼の後ろへ視線をやると、いつの間にか
黒く澄んだ双眸で、海神は
はっとして目をわずかに見開いた光弘に、海神は深く落ち着いた声を聞かせる。
「光弘・・・。お前が離れている時に、黒に危険が及ぶようなことは、絶対にさせない。あまり気をもむな。」
「・・・
光弘はふとした瞬間に、黒を心配するあまり不安に飲み込まれてしまうのだろう。
「ありがとう。・・・黒のこと、お願いします。」
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