第225話 毛むぐり 1
一歩足を踏み出した途端、足元のフワリとした柔らかさに驚き、俺は立ち止まった。
しゃがみ込んでよく見ると、それは草ではなく、なめらかな毛のようなものでできている。
心地よい風が吹くたび、柔らかくコシのある毛並みを、ドキッとするほどの美しさで波立たせ、壮大で華麗な波紋を彼方へと寄せていく。
「君たちには、毛むぐりを捕まえてもらおうとおもってさ。」
「毛むぐり?」
「そう。・・・これのことだ。」
聞きなれない言葉を紡いだ
あっけにとられている俺たちの目の前に、掴んだままの毛の束をみせてくる。
俺たちの視線を恥ずかしがっているかのように、艶やかな黒髪の束はするりと動いて、
「ここはボクの友人が毛むぐりを育てている、いわば牧場なんだ。ボクのように変化を自在とする者には必要ないが、こいつらは懐けばとても便利だ。化けることが得意でね。思うままに髪の色や長さ、身体の一部に姿を変えることができる。・・・おい。ボクはお前に要はないと言っただろう。あっちへ行け。」
細長い狐のような正体を現した、小さな毛むぐりが、スルスルと艶やかな身体を
「
「
この人たちって、ホント・・・・・・。
俺は心底呆れながら、目に毒な二人の姿を視界から無理やり外すと、毛むぐりを探し始めた。
だが、どこにいるのか、恐ろしいほど見つからない。
俺の後ろで、毛むぐりを見つけたらしい勝と光弘と都古が、騒いでいる。
「
気づくと、
「お前は全ての色の妖気が使えるのだったな。・・・得意な色でいい。波紋を広げるように、その気を薄く広く、放つことはできるか。」
すると、俺の放った気の先にある様々な者の息吹や姿形が、手のひらで撫でて感じるように、繊細な感覚として流れ込んでくる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます