第184話 臨時休校 1

 命逢を後にした俺たちの元へ学校から連絡が入ったのは、まだ登校時間までに1時間も余裕のあるタイミングでのことだった。


 『緊急事態につき、本日は休校とする。』

 ほとんどそれだけの内容しか伝わってこない突然の連絡に、俺たちは薄気味の悪い胸騒ぎを覚えながら、困惑して卓についた。

 が、その原因は父さんがテレビをつけた瞬間、知れるところとなった。


 「・・・・・真也。お前、今日学校休みって・・・・・これのせいか。」

 「これって・・・・?」


 なかば放心した口調で吐き出された父さんの言葉に、導かれるようにテレビを見た俺たちは、息をのんだ。


 テレビに、俺たちの慣れ親しんだ場所・・・・・中学校の正門が映し出されている。

 見慣れているはずなのに、スクリーン越しに見るその景色は、まるで知らない場所を見ているように思えて寒々しい。


 画面の隅には、『公立中学教頭 飲酒運転で川に転落 同乗の女子生徒死亡!!』と、センセーショナルな文字で書かれていた。


 興奮に満ちた取材風景に、胃が持ち上がるような寒気を覚え、俺は勝と都古を振り返った。

 二人とも俺と同じように、吐きそうな顔をしながら、テレビの画面に見入っている。


 「まさか・・・・。」


 そうつぶやくと同時に、俺たちの耳に、久遠から念話が届いた。


 『みな、無事か。』


 久遠の問いかけに、俺はごくりと喉を上下させてから落ち着いて答えた。


 『こっちは大丈夫。都古もここにいます。』


 俺が答えると、久遠がほっと息を吐いたのが伝わってくる。


 『学校からも連絡があったろう。お前たちの学校の教頭と、昨日の件に絡んでいた、真美という名の少女が殺された。』


 久遠の言葉に、つかの間息が止まった・・・・。

 二人は「殺された。」と、久遠ははっきりと言い切ったのだ。


 『早朝。偶然、秋津が訪ねてきた。彼に動いてもらい、すでに調べはついている。君たちに危険はないが、少し話したいことがあるんだ。後でこちらへ寄ってくれ。』


 少ししたら行くと伝え、念話を終えると俺たちは暗い表情で息を吐いた。


****************************


 俺たちが彼呼迷軌へ移動するとほぼ同時に、光弘もそこに現れた。


 「すまない・・・・・。」


 そういって苦痛の表情を浮かべる久遠は、心なしかいつもよりも疲れているようにみえる。


 「抱えるな。お前の罪ではない・・・・。」


 「海神の言う通りだ。謝るべきだとしたら、それはショクのやつだ。まぁ、あいつは口が裂けたって謝ったりしないだろうけどね。久遠・・・・君が頭を下げることじゃないのは確かだ。・・・・君には昨日やるべきことがあった。気に病む必要はない。」


 「海神っ。蒼っ。」


 声のした方を見ると、姿勢正しくたたずむ海神と、ゆるく腕を組み柱に身体を預けた神妖姿の蒼が目に入った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る