第33話 川名 光弘の物語>出会い 7
服を着て振り返ると、用意していたタオルで都古が俺の濡れた髪を拭こうと手を伸ばしてきた。
俺は慌ててその手を止めた。
汚れた水で濡れた俺の髪を拭いたら、都古のタオルが汚れてしまう。
毎日繰り返されることは分かっているので、俺は自分のタオルを用意していた。
「大丈夫だ。自分のがある。」
そう言って都古の手を
すると突然、都古が後ろから俺の頭を乱暴に抑え込んできた。
「っ・・・!」
驚き、慌てて離れようとする俺の頭に自分のタオルを被せ、都古はグシャグシャかき回すように無理矢理髪を拭き始めた。
都古から逃れようとその腕を
泣いてくれているのか・・・・・俺のために・・・・・。
俺は静かに腕をおろした。
そのままもたれるように都古に身体を預ける。
背中に伝わってくる都古の体温が温かかった。
それにしても、女の子なのにこの豪快なやり方は、ちょっとどうなんだろう?
されるがままの状態でそんなことを考えていた俺は、なんだかおかしくなってきて、久しぶりに少しだけ笑ってみた。
笑ったはずだった。
それなのに、喉の奥から熱い大きな塊が、どうしようもないくらいせり上げてきて・・・・・俺は声を出さずに泣いた。
真也も勝も都古も、一瞬のためらいもなく、最後まで俺のそばにいることを選んでくれた。
伝わってくる強さと、尽きることのない優しさに胸が締め付けられる。
乱暴に髪をかき回していた都古の手が、いつの間にか俺の頭を抱きしめ、髪を静かになでていた。
「お願いだから。・・・・・もう・・・独りになろうとしないでくれ。」
都古の透き通るような小さな声が、俺の耳にやわらかく響いた。
都古の服から、ふんわりとお日様の柔らかな香りがする。
毎日ずっと雨が続いているのに。
不思議だな・・・・・。
そんなことをぼんやり考えながら、俺はそっとまぶたを閉じた。
今だけでいい。俺が3人と共にいることをゆるしてくれるだろうか。
心の中に重くのしかかっていた氷の塊が1つ、静かに溶けていくのを感じながら、俺の意識は温もりの中に埋もれていった。
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