第30話 川名 光弘の物語>出会い 5

 野崎たちが立ち去った後、真也しんやしょうの2人は、言葉少なに教室の片づけを始めた。


 いつものように教室を片付けようとした俺は都古に止められ、無理矢理椅子に座らせられる。


 都古みやこは、真也がゴミ箱から拾ってくれた服を俺に手渡すと、下を向き自分の手提げバッグの中を漁り始めた。

 見られることでこれ以上俺が嫌な思いをしないよう、気遣きづかってくれているのだろう。


 だが視線をらすその直前。

 俺に服を渡した都古が、ある一点を見つめ驚きに目を見開いたことに、俺は気づいてしまった。

 都古が見つめたその位置に、野崎たちからの仕打ちのあとはついていない。

 目を留めていたのは、俺の左の鎖骨さこつあたりだった。

 そこには、俺にしか見えていないはずの、まわしいのろいのしるしが刻まれていた。


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