第14話 小野寺 都古の物語>出会い 2

 私の家は、少し特殊な場所にある。

 世界を繋げる役割をもつ彼呼迷軌ひよめきと呼ばれる場所だ。


 私の両親は彼呼迷軌にたずさわる諸事を生業なりわいとしており、任をすために不可欠な、様々な能力をつかうことができた。


 両親の生業は、俗にお化け、妖怪、妖精、幽霊と呼ばれているような者や、空間に発生したひずみやよどみなどが起こす、様々な"さわり"を改善することだ。


 「何もないところで転んだ」「突然激しい眠気に襲われた」そんな場所には大抵ごく小さなひずみなどが発生している。

 そういったひずみを巻き取りつむぎ直すことも、私の両親・・・・・そして、私の請け負っている仕事のうちの1つであった。


 そこで生きる宿命にある私は、幼い頃から「学校へ通う必要はない」と思っていたしそれに対する不満も全く感じてはいなかった。


 ただ「両親のように強い者になりたい」と憧れ、修行あるのみとばかり考えていたのだが、当の両親からの強い勧めで結局小学校へ通うことになったのだった。



 いまさら後悔しても仕方がないのだが、入学直後の私はあまりにも幼く、そして迂闊うかつだった。


 両親から、「能力や生業などが知れると良くないことに繋がる恐れがあるから」と、友人には極力我が家のことについては口外しないよう、関わらせないよう言われていたのに、ある1人のクラスメイトの誘いを断り切れず、家に連れてきてしまったのだ。


 結果、そのクラスメイトと私との関係は断ち切られ、さらには他のクラスメイトたちまでも不安にさせる結果となった。


 それほど深い間柄でなかったとはいえ、その時の固く冷え切った感情は、痛みを伴って私の心の奥深くへ刻まれた。


 忘れられるわけがない。

 あまり話したことのない友人を一人失った、それだけでも息をするのが苦しいほどの痛みを感じたのに。

 もしかしたら、真也しんやしょうを失っていたかもしれない・・・失うことになるかもしれないのだ。


 胸の奥に乱暴に手を突っ込まれ、心臓をわしずかみにされるような恐怖に、私はおびえた。


 入学後すぐに仲良くなった2人は、私にとってかけがえのない特別な存在になっていた。


 隠し事をすることで心に抱える後ろめたさなど、2人を失うことに比べれば蚊に刺されるようなものだ。

 私はそう決意し、それ以来かたくなに秘密を守り続けた。


 しかし4年経った今日。

 秘め続けていたもののかけらを思いもかけず、2人の前にさらすことになった。

 正確に言うと、私のために強引に動いてくれた者がいたのだ。

 

 白妙しろたえだ。

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