衝動

@FutonX

おやすみなさい。

 イライラする。本当にイライラする。あいつの姿を見るだけで嫌気が差す。少し前まではまだマシだった。あの状況でずっとよかった。なのに、なのになんで来るんだよ。

 下で泣き声がする。適当にゲームをしていたから気づかなかったけど、確かに聞こえる。母親の泣き声か。嫌な予感がした。そっとドアを開けて聞き耳をたてた。妹の泣き声だった。

 まったくまた泣いているのか。こんな時間にケンカとは迷惑なやつだ。しかしいつもとは違う、低い音が聞こえた。肝が冷えたとはこの事か。

 「うっぐふぇっふ。」

 「いつもママにばかり頼って。あれしてこれしてって、三人もいるのにそんな頼んでばかりで。」

 「うぅ!わぁぁん!あぁ!!」

 「そんなことばっかりしてたらママ倒れちゃうよ。」

 はぁ?なんだそれw

 「だってこんな大変だとは思わなかったんだもん!毎回テストあるし!」

 「おまえな、世の中上手くいかないことなんてたくさんあるんだから。そんなんでうじうじいったってしょうがねぇだろう?」

 「そんなことしってるし!」

 ドンバンバンバン

 「他の二人にしてもそうだし、○○も○○もよぉ。自分がやりたいっていったんだから、休んでどうすんだ。」

 「うるさい!だってこんな大変だとは思わなかったんだもん!」

 なるほどね。塾の話しか。まぁ受験もあるしそうだよな。明日もテストがあるとか言ってたな。まぁ寝ながら聞いてるか。

 その話を聞き続けているとイライラが止まらなかった。どの口が言ってるんだクソが、とも思った。

 俺の父親は俺が高校生になるまで家にいたが、出張で別居することになった。だかそれまで本当に最悪だった。俺が中学一年の時は酷かった。うちの両親はよくケンカをしていた。ただの口喧嘩ではない。殴ってもいた。でも殴り合いではない。殴っていたのだ。それをいつも見ていた。誰も止められない。ただ見ていた。そのうち兄妹の誰かが泣き出す。さっきの泣き声よりかは遥かにか細くはあったが。この意味がわかるだろうか。この家庭環境に置かれた俺らの、子供の気持ちがわかるだろうか。自分達の喧嘩が親の喧嘩になる。そんなこともあった。

 父親はずっと部屋にいった。二階のあの部屋。床はほとんど見えないぐらいに埋まっていた。パソコンを開いてパズルゲームをしていた。煙草の嫌な匂い。部屋に入ることもほとんどなかった。そんな父親はお風呂ぐらいしか下には来ない。ご飯を一緒に食べることも多くはなかった。仕事はしている。毎日のように休んだ日を見たことがないぐらいに仕事をしていた。しかし、家事や子育てをしたところも見たことがない。行事にもほとんど来なかった。

 母親は俺たちとずっと一緒にいた。コンビニで働いていたので、俺らが学校にいる時間はいなかった。だから体感はずっと家にいたみたいな感じだ。優しいしめちゃくちゃ好きだった。話にも付き合ってくれる。世界一の母親だと思っている。

 そんな母親が殴られた時は泣いていた。とても苦しかった。あいつが怒号を吐いて上にいってからみんなで抱き合った。知っていますか?力ずくで押さえつけようとした時、声というのはすこし苦しいように聞こえるんですよ。本当に怖かった。

 高校一年。あいつが出張でいなくなる数ヵ月前。また喧嘩が起きた。だけど、もう黙ってはいられなかった。

 「もうっ、もういいから!二階に行って!」

 「○○、いいからちょっとどけ。」

 「嫌だ!いいから行って!」

 そんな感じで止めに入った。母親と妹たちは自分が守らなければならないのだと思った。

 こうした経緯があって、あっちで仕事を挫折したあいつは、仕事をやめて帰ってきた。正直、誰も歓迎してない。だが少しはおとなしくなったみたいだった。仕事もアテはあるみたいだか、それまでの数ヵ月間の話は聞いていないし、何かするという訳でもないようだ。クソが。それは俺が大学生になった年の話だ。

 生活をするにはもちろん金がいる。だが金は入ってこない。どうするのか。俺の奨学金だ。まぁ仕方ないと思った。今まで稼いできてくれたのは事実。文句はない。だが、恩に着せるような父親にはなりたくないとおもった。

 「今まで稼いできてあげたんだからいいでしょ?wずっとこのままな訳でもないし。」

 協力をしてこなかったやつが、急に助けを求めてくるのは本当に嫌なものだ。これまでいじめや嫌がらせなど、さまざまなもの経験してきたつもりだ。だが、これが一番に嫌なものだった。

 そして今にいたる。どうだろうか。普通の家庭なら、親が子供にたいして叱ることは別に特別なことではないはずだ。しかし、なぜかその普通なことが私にとっては物凄くイライラした。

 なぜそんなことがその口からいえるのか。自分のしたことを、今の状況を、こちらの気持ちを理解しての発言なのだろうか。

 これが家庭ということだ。家族しかいない。外部からの影響がない。もし洗脳をするとしたら、私は家庭という環境ほど素晴らしい場所はないとおもった。そして、きっと洗脳されていない自分にすこしホッとした。この環境はおかしいのだと。あいつはおかしいのだと。明日はどうしようか。大学のテストも近いことだし、そろそろ眠ろう。ちなみに小説を書くのは初心者だ。

 もしこのような状況にある人がいるならば、後悔する前にやるべきことをしよう。もしかしたら止めたれたかもしれない最悪の状況に備えよう。私はこれからも嘘と偽りの顔を周りに見せ続けるだろう。

 おやすみなさい。

 






 この小説はフィクションです。

 

 

 

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