旅に出ることにした

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プロローグ「支度」

 旅をするのが昔から好きだった。


 初めは旅なんていう大げさなものではなかった。近くの公園に行ったり、知らない通りを歩いてみたり、裏道を探索する程度だった。何を探すわけでも、どこを目指すわけでもない。ただ、旅が好きだった。

21歳の時、車を購入した。中古で一括。金は有り余っていた。旅をするためだけに働いて、旅をするためだけに貯蓄をした。それ以外にやりたいことも何もなかったし、人付き合いも得意じゃない。

 浪費グセはないが、マメに管理する方でもない。ただ、使わなかったから溜まっていった。それだけだった。


 28歳になって、俺は仕事をやめた。システム関係の仕事だった。苦労はしなかったがやり甲斐もなかった。だから未練もなかった。


 そして俺は、旅に出ることにした。

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