大型アップデート後
土日はゆっくり寝ると決めていた。
今まではそうしていた、しかし今は違う。
何だって、ワルオンの大型アップデートがあるのだから。
「ふぁぁ……」
ワルオンのアップデートの二分前に起きた。
咲はスマホを手に取り時間を確認する。
ひたすら眠気と戦いながら待っていた。
「ブー」
ワルオンから通知が届きスマホのバイブが鳴った。
通知が届いた瞬間……、さっきまで眠いとは思わせないほどの速さで起き上がった。
早速ワルオンにログイン。
『アップデートしていただきありがとうございます。これからもワルオンをよろしくお願いします。それでは今日のお知らせ♪』
・新職業 ガンナーの実装
・課金アイテムの追加
・自然のグラフィック強化
・新マップの実装
・第二回大型イベントのお知らせ
・ステータス追加振りの開発
・メリル鍛冶屋オープンのお知らせ
「ん?一番最後のお知らせは……、私何も知らないんですけど?まぁ見て見よ」
メリルは鍛冶屋オープンのお知らせの詳細をタップした。
ワルオン日本サーバーで唯一の鍛冶師である、メリルさんが遂に鍛冶屋をオープンしました。
作って欲しい武器や、欲しい武器があったら是非メリル鍛冶屋へ行きましょう。
「…………?」
メリルはしばらくその場で沈黙していた。
自分の鍛冶屋からログインしたメリルは、ソファーに座りながら未だに沈黙していた。
鍛冶屋をオープンすることを知らせたあの紙を、運営が読みお知らせに公開したに違いない。
「カランカラン」
オシャレで付けた鈴の音が鳴り響く。
鈴が鳴れば人が入ってきたことが分かる。
メリルはゆっくりと顔をドアの方に向けながら、「どうぞ」と言う。
入ってきたのは、初心者らしき小柄な男性であった。
「今日は何の用で?」
「この剣を直してもらいたくて。いいですか?」
「その初心者の剣なら500Gで直すけど?」
「500Gです。よろしくお願いします」
初心者の剣はハンマーで一回叩けば、新品みたいに元通りになる。
叩き過ぎると逆に剣が壊れてしまう。
「どうぞ」
「ありがとうございます! 流石鍛冶師さんですね! ありがとうございました!」
初心者らしき男性は満面の笑みをしながら帰っていった。
しかし、メリルの表情は良くなかった。
「今日は自然を楽しむんだ……!」
メリルは外に出るとCLOSEの看板をドアに掛け、そのまま広場へと向かっていった。
せっかくの最高に楽しいゲームで、縛られながら遊びたくない。
そんな気持ちがメリルから感じ取れた。
メリルが目指す場所は新マップでもある『草原の丘』だ。
モンスターが一体も出現することなく、ワルオンのメインでもある自然を、この身で感じることが出来るマップだ。
始めたての初心者がモンスターと戦うことなくワルオンの世界観に浸れるため、平和なマップである。
「さぁ行くぞー!」
草原の丘に行くために草原を歩いていく。
草を食べている鹿を見つけ、改めてワルオンのシステムが凄いことに気づいた。
途中でたくさんの初心者を発見し、「私もワルオンに初ログインしたらまずやるべき事は自然を楽しむことだったなぁ」と初心者を見ながら思うのであった。
「チュンチュン」
その辺を飛び回っていた小鳥が肩に乗ってきた。
メリルは、可愛すぎておもわず小鳥たちに話し掛ける。
「小鳥さんもここのマップが好き?」
「チュン、チュチュ!チュンチュン!」
「やっぱそうだよね!私もここの空気めちゃくちゃ好き!空気本当に美味しいよね~」
「チュンチュンチュン!チュ!チュン!」
「じゃあね~!小鳥さんたち~」
もちろん小鳥の言葉は分からない。
もしかしたら、あれで小鳥は怒っていたのかもしれないし、楽しく話していたのかもしれない。
しばらく歩いていると奥に大きな滝があった。
そしてその手前に草原の丘があった。
メリルは草原の丘を見つけると突如走っていった。
「ゴロゴロゴロゴロ~!」
草原の丘を下からダッシュし頂上へと登り、上から転がり落ちていく。
痛みは無いがメリルはこれをやりたかったようだ。
頂上から下までは20メートル程ある。
メリルは楽しくなってしまい、6往復した後にもう一度転がり落ちようとしたが、体が動かなかった。
「馬鹿みたいなことが楽しすぎる」
草原の上で横になりながら上を向き、両手を挙げた。
「ワルオンだからできることもたくさんある」
現実世界だと武器は振り回せないが、ワルオンならどれだけ振り回しても許される。
ワルオンなら普段、人と喋るのが苦手な私でも普通に会話ができる。
ワルオンで宿題は出来ないけど、解いてもらうくらいならできる。
実際に言ったら身バレしてしまうかもしれない。
「そういえばまた大型イベントが来るよね?
ついに初期ステータスから追加振りが実装されるし、今度の大型イベントは難易度がもっと高そうだなぁ」
そう言いながら、そのまま寝てしまった。
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