はぐ。

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1.なにも変わらないよ

プロローグ

 「終わりがあるから頑張れる」


 「未来はまだ決まってない」


 「運命は変えられる」


 そう、僕たちは未来が分からないから。

 そう、僕たちは未来を変えられるから。

 だから、僕たちは夢を見るのです。


 ならば。


 結末を知ってしまった彼女は一体

 未来に

 今に

 過去に

 世界に

 僕に


 何を見ていたのでしょう。

 何を見出していたのでしょう。


 何が見えていたんでしょう。











 僕は彼女を救えなかった。

 僕は全てを愛せなかった。

 僕は本当を変えられなかった。


 急に容態が悪化した彩彩は、最期の言葉らしいものを残すことなく、僕の前から去っていった。


 僕が彼女に最後にあげられたものは、軽蔑を込めた軽口だけだった。


 「またどうせ明日も決まってるんだろ」


 これが決められた未来だったと言うのであれば、彼女はそれすら知っていた上で、この結末を選んだのか。

 それともこれも〝神様〟の意志なのか。


 とにかく僕は、彼女に涙一粒残せなかった。


 そんな自分を、僕は肯定する。

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