第56話 飲み友達

「待ってました」

私が帰ると父はそう言って晩酌をはじめる。


今、私の唯一の飲み友達は父だ。



外食をするのも難しくなったここ数年。

友達とお酒を飲みに行くのが楽しみだったのに、全く行かなくなった。


家でひとりで飲もうという気にはならず。

夫は全くと言っていいほどお酒が飲めない。

だから家では私も全く飲まない。



なので、実家で父と飲むのが唯一の晩酌だ。


最近私たちは韓国のチャミスルというお酒にはまっている。

いろんな味を試してみたけれど、マスカット味が気に入って今はマスカットに落ち着いている。


暑い時期は冷たい炭酸水で割って、

寒い時はお湯で割って、

甘い香りと共にじんわり体があたたまり、ほろ酔う。


おしゃべりになるのは親子似てるようで、ゲラゲラとどうでもいいことを話してお酒を飲む。

良い時間だ。


そして「また飲もうぜー」

帰る私にそう言う。

なんとも軽いお誘いだ。



そんな父と最近、年末ジャンボ宝くじを交換しに行った。

やはり今年も当たったのはおまけの300円だった。


そして、スマホのキャンペーンで当たったスクラッチに挑戦した。

1000円分のスクラッチは5枚に交換できた。

ふたりでスクラッチをその場で削り、2枚当たった。


2枚で400円だ。

その小銭を手に、帰宅した。


それだけのことだが、楽しかった。

初めてスクラッチをした父は、「はぁー、これがスクラッチか~」と物珍しそうに削っていた。



ふたりで、スクラッチして夜は晩酌。

すんごい親子だな、と自分でも思う。

でもこうやって、この歳になっても仲良くて、一緒にお酒が飲めるなんて嬉しいことだ。



スクラッチをしに出かける私たち

母に

「コロナにならないように遊んできなさいよー」と言われたのは言うまでもない。



愉快な休日だったな。






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