悪臭

お題：難しい嘔吐 制限時間：15分

悪臭

「ごほっ……げほっ……おえええええ、なんだよもう……」

　家に帰ってから、咳が止まらない。

　それも嘔吐してしまいそうになるくらいの勢いが喉の奥で渦巻いてる。

　気持ち悪い。

　なにか原因はあっただろうか？　

　気分を紛らわすために、今日一日の行動を思い出すことにした。

　朝6時起床。

　7時発の通学バスに間に合うように、身だしなみを整え朝食をとる。

　駅前に迎えにくる通学バスに6時50分に乗車。今日も同じ運転手、同じ乗客がいた。

　軽く挨拶をして、一番後ろの席から3つ前に乗り、ウォークマンを起動して眠る。

　この時、バスの中は異様な臭さがあった気がした。

　8時半学校に到着。

　その後授業に出て、学校のスケジュールを終える。

　教室では臭さはなかった。

　うちは進学校で、放課後は8割の生徒が自習をして帰る。その他は部活をしたり、早々に帰宅したりしてる。

　そういえば、自習に使ってる教室はなにか臭かったような気がする。バスでの臭いに似てたような？

「……ごほっ」

　思い返してみれば、同じ通学バスに乗ってた生徒が自習教室にいた。

　となると、原因はあの生徒だろうか。

　挨拶しても返さないし、人によく喧嘩をふっかけてる。

　そんな人だから、血の匂いがしてた……とか？

　いや、さすがに血で嘔吐感がでることはないだろう。

　その生徒がいるクラスメイトにメッセージを飛ばしてみると、ここ1週間ほど異臭を放ってたらしい。雑巾の臭いだとか、ゲボの臭いだとか、アンモニアの臭いだとか、様々な臭いの文句が教室内で起こったとのことだ。

　それで原因は何かと探る必要もなく、その生徒が教室に入ってくると明らかに空気が感染してったと。

　となると……、この嘔吐感は、未知のウィルスではなく悪臭に耐えきれなかったからなのか。

「おえええええ」

　消臭をしておこう。制服に臭いが残ってたら嫌だし。

「でもなぁ……」

　毎日同じバスという空間で過ごしてれば、肺に、喉に、その不潔さは進行してくる。

　そうなれば、ここで一旦消臭したとしても、まるで意味がない。

「げほって、ぼええ」

　あぁ、気持ち悪くなってきた。

　明日も同じなら、マスクしていこうかな……。