第34話*縁は異なもの味なもの(3)

 世間は広いようで狭い。ゲームの世界も例外はなかったようだ。

 モルス・ヴァーミリオン強襲イベント(2回目)において出会った黒騎士のリッターが幼馴染の瑞希だったとは…。

 この偶然の巡り合わせにただただ驚くばかりだ。

「…あ、でも、リッターさんと瑞希くんのキャラが全然違うよ?作ってたの?ボイスチェンジャーも使ってたし…」

 瞬きを繰り返すアヤにレイラスが横に体を傾けて耳打ちする。

「身バレ避けでしょ」

「…そう、花奏くんの言う通り。ゲームとはいえ…どこで知り合いとすれ違ってるかわからないからね。念には念を…だよ」

「そこのところはねーちゃんも見習ってほしい自己防衛意識」

 見た目も名前も、ほぼそのままなのだから。

「…うっ…、知り合いに出会うという可能性をほとんど考慮してませんでした!ごめんなさい!」

 ジト目の弟に気まずく告げながらアヤは続けた。

「…それにしても、すごい確率であの場にいたことになるよね瑞希く…じゃなくてリッターさん。わたしとヨミさんのドラゴン強襲イベントにたまたま遭遇しちゃうなんて」

 アヤの口から出たヨミの名に、リッターはぴくり反応を示す。

 たまたま、ではない。

「…それだよ、絢ちゃん。君はいつからヨミと交流を持ってるの」

 わずかに険しい口調になるリッターにアヤは戸惑う。

「ヨミさんと知り合ったのはゲームをはじめてすぐだよ。はじめてドラゴンに襲われた時に助けてくれたの」

 アヤが『オーレリアンの襟飾りブローチ』を初回ガチャで引き当ててしまったことで、『きょうだいシステム』実装のためのテストプレイヤーに選ばれ、トップランカーのヨミと兄妹設定になったことや、モルス・ヴァーミリオンというドラゴンに今後も強制イベントとして狙われ続けることなど、かいつまんであらましを語った。

「イベント発生時に一緒に行動していない場合はヨミさんがわたしの側に強制転送されちゃうみたい。初回がそうだったから」

 リッターは釈然としないままアヤに問いかける。

「絢…アヤちゃんは、公式にまず抗議しようと思わなかったの?事前に説明もなかったんだよね?同意もなく一方的にヨミと兄妹設定にされたり、ドラゴンに強襲されたりするのに」

「う、うん…」

「明らかに君の選択の自由と権利を侵害してるんだよ?…ドラゴンに死神モルスなんて名前がつけられているからには、元々ヨミ単体を狙った公式の嫌がらせだったはずだ。それに巻き込まれて…理不尽じゃないか」

 尤もな指摘である、と無言でレイラスは大きく頷く。

「そうかもしれないけど、なんとなく抗議するって意識がなかったなぁ。…ショックがなかったわけじゃないけど、ゲームなんだし強くなればドラゴン倒せるかもー?って思い直したし、ヨミさんの方から会いに来てくれてお話してる間に、まあいいかなぁ…って」

 もちろん、当惑しなかったわけではないのだが。

「ホント、ねーちゃん呑気過ぎ…」

 呆れた口調の弟に軽くムッとしながらも告げる。

「どちらかといえば、ポジティブと言って欲しい!」

「…つまり、ゲームをはじめたばかりで右も左もわからない君をいいように言いくるめて、なし崩し的に兄妹設定になることをヨミに承諾させられたわけだね。君の素直さにつけこんで…あいつらしいやり口だ」

 ヘルムで顔が見えないリッターの言葉の端々にヨミへの毒と嫌悪を感じてアヤは首をひねった。

「…あれ?…リッターさん、もしかしてヨミさん…苦手?」

 リッターは最古参プレイヤー。以前出会った時、ヨミとは互いに面識があるような口ぶりだった。リッターはそっけない態度をとっていたが、あれはキャラクターを作っていたというより、素の感情だったのだろうか。

 だとしたら、珍しいことだ。リッター…いや、瑞希はいつも穏やかで負の感情をけして表に出さない青年だ。極端な言い方をすれば、嫌悪の対象など存在していないかのように。

 アヤの問いかけに、リッターは「それは…」と口ごもる。

「あいつはとにかく得体が知れない。…もちろんゲームだからプレイヤーは全員得体の知れなさはある。でも、それらを差し引いても、あいつだけは別格で異様なんだよ」

「…異様…かなぁ?」

 知れば知るほど謎めく人ではあるが、異様とまでは言い難い気がする。どこか浮世離れした風情はあるものの…。

 うーんでも、霞を食べて生活してるって言われたら、ちょっと納得してしまうところはあるかもしれない、ヨミさんって。

 綿菓子のような霞を食んでいるヨミを想像して、少し微笑ましい気持ちになる。

「もちろんアヤちゃんも知っていると思うけど、『グレートギルド』のこと」

 ここでリッターは話の角度を切り替えた。

「?…グレートギルド…?」

 何それ?すごい、ギルド?

 突然出てきた単語に、アヤはきょとんと見返す。

 レイラスが小さく息をついて代弁する。

「…リッターさん、そういう知識についてねーちゃんはまるでザルなんで確認するだけ無駄ですよ」

「…うっ、否定しないけどザルとは言い過ぎでしょ!」

 彼女の身近なところに存在するギルドはアヴァリスと鉱石掘りのモグラたちの界隈だけだ。他のギルドについてはまるで無知。

「…そ、そうか…いや、そうだね。アヤちゃんにとってはグレートギルドの存在は瑣末だね。君らしい」

 リッターは和むようにふふと小さく笑いを漏らし、改めて話を続けた。

「僕が離れている間にワールド内勢力図が塗り変わっていなければ、公式が功績を認め『グレートギルド』と名乗ることをゆるし、拠点を置く街の自治を委ねているのは4つの勢力。その大勢力のひとつが、このアルビオンの街に拠点を置く『キャメロット』。幹部クラスの円卓の騎士を中心にこのログレス地方全体の自治を行っているキングダムだよ。ギルドマスターの名は、アルトリウス」

「…円卓の騎士!…すごい、アーサー王伝説みたい」

 アヤは目を見開く。

「みたい、じゃなくてそうなんだよ、ねーちゃん。ここはアーサー王と円卓の騎士の街なんだ」

「ということは、ゲームの中で騎士道物語の再現してるんだね!胸アツ!…じゃあ、さっき助けてくれた爽やか恩人さんもキャメロットに属してるプレイヤーさんだったのかな」

「………。かもね」

 レイラスはある可能性を胸に秘めながら、曖昧に濁した。

「?…僕が来る前に何かあったの?」

「ねーちゃんがこの岩に引っかかったところを、助けてくれたプレイヤーがいたんですよ」

「…あぁ…そこはスタックしやすんだ。昔から」

 話がそれかけたが、リッターは仕切り直して続ける。

「僕はキャメロットのギルドマスターとは懇意にしているものだから、ギルドには属していないのだけれど食客的な立場で彼らの拠点を利用させてもらってきたんだ」

「ああ!だから、この街を待ち合わせの場所にしたのね」

 アヤは納得したが、レイラスは別のことを考えていた。

 いつもアヤとは付かず離れずの距離で護衛しているプレイヤーの気配がこの街に近づいた時点で消えていた。キャメロットに属しているプレイヤーたちの警邏に引っかからないためだろう。リッターの都合は、同時にレイラスにとっても好都合な結果となった。ヨミの影に話を聞かれる心配がない。

「ヨミの不気味な点は、まず私欲や野心がないことだ。そのくせ脅威を隠しもしない。薬と毒を使い分けるあいつの肚が読めないせいで、グレートギルドマスターたちですらヨミとの争いは避けている。…プライドもあって口には出していないけど、過去の『ギルド戦争』で辛酸を舐めているからね、アルトリウス以外は」

「…ギルド戦争…?そんな物騒な出来事がゲームで起こったの?今は穏やかそのものなのに…」

 戦争という言葉が不似合いなほど現状のオーレリアン・オンラインは落ち着いているように見えていたのだが。

「そうか…アヤちゃんは過去を知らないから、ヨミと自然に接することができているのかもしれないね」

 ワールド内に浸透し、違和感なく存在するようになった安寧。それは最初から平等に享受されてきたものではなかった。

 一息つくとリッターはアヤに説明をはじめた。

「ギルド戦争というのは、オーレリアン・オンラインのサービス開始後間もなく起こったプレイヤー間の紛争だよ」

 当時は皆一律スタートの真っ新な状態。つまり、プレイヤーに優劣はなかった。

 しかし次第にレベル差が生じると、強者が弱者を痛めつけるようになった。これをよく思わなかったプレイヤー同士が集団を形成し、弱者を助勢するようになる。そうして集団の力を強めるため、思想が近しいもの同士が寄り合い、組合ギルドを作り出した。

 プレイヤーは善良な者ばかりではない。争いの火種を放ったのは悪辣なプレイヤーたちだった。

 小さな火種は、燎原の火となってプレイヤーたちを駆り立て狂わせる。いつしか目的を違え、自衛行動は生存競争へと移り変わる。その混乱に乗じてワールドの覇権を狙う者まで現れ、ゲームは混迷を極めた。

 だが公式は荒れる惨状を顧みず放置し、沈黙した。この理由はいまだに明かされていない。

「本格的に争いがはじまると、大が小を吸収するかたちで最終的に4つの勢力にまで淘汰されたんだ。彼らの力は拮抗していて、こう着状態に陥った。このまま消耗戦になるかと思われた時…やつらが現れた」

 最小にして最強。ヨミ率いる『アヴァリス』だ。

「そこまで、誰一人ヨミやアヴァリスの存在を認識していなかった。…いや、させていなかった。完全なダークホースだよ。あいつはずっと息を潜めて事の成り行きを見守ってたんだ」

 高みの見物を気取り、薄笑みすら浮かべて。

 ヨミがギルド戦争に介入したのは、覇権などという玩具おもちゃを欲したからではない。

「ヨミは4つの勢力のギルドマスターに対して、『ワールドのためここらで手打ちにしてはどうか』と個別に提案したそうだ。だが、土壇場でしゃしゃり出てきたプレイヤーの意見に耳を貸すことはなかった。…必要以上の争いを望まなかったアルトリウス以外。だからヨミはに倣って、わかりやすく力を示すことにした。キャメロット以外の幹部クランをひと所に集めてたったひとりで鏖殺し、ギルドマスターたちの周囲を丸裸にしてみせた。…あいつは圧倒的すぎた」

「お、鏖殺…」

 さすがのアヤも息を飲む。

 愕然とするギルドマスターたちを前にヨミは微笑んで滑らかに述べた。

「創生に火と蛮行は付き物。そして蛮勇が原初の王となる。この世界は開闢かいびゃくしたばかり…未熟な歴史の1頁を否定はしない。けれどこれ以上無益な争いを続けるなら、さて次は君たちの番だ。数多のプレイヤーに必要な安寧は、頭上に『皇帝』を戴くことではない。尊厳と自由を守るための『秩序をもたらす王』なのだからね」

 ギルドマスターたちの肚の中はどうあれ、ヨミの介入によって引き際を得、協定が結ばれたのはまぎれもない事実。

 彼らがワールド内のパワーバランスを維持することで、正しく秩序が生まれた。はじめは歪だった平和も、次第に整えられ、なだらかになった。

「公式も正式に彼らを『グレートギルド』と名乗ることを許可して本拠地を置く街や地域の自治を任せるようになった。今、ゲームの中が比較的安全で穏やかなのは彼らの均衡と自治が行き届いているからだろうね。ヨミが提案しなければ、食い合って共倒れしていたかもしれない」

「…噂で聞いてた以上に、なかなかの暗黒時代だったんですね」

 レイラスがオーレリアン・オンラインを始めた頃には、すでに4強のグレートギルドは存在しており、本拠地の街や地域の自治代行がなされていた。現在のワールドの姿のままに。

「…なんだか今のオーレリアンと温度差があって、ピンと来ないけど…複雑な時代があったんだねぇ。…ゲームなのに世知辛い…」

 リッターの話は、遠い歴史の一幕のようでどこか現実味が薄い。さらにヨミがワールドの安定に関わっているなど……もはや歴史の偉人レベルではないか。

「ヨミは…その気になれば盤面を覆し、自らが『皇帝』に就くことも出来た。にも関わらず、いちプレイヤーの立場を崩さない。…これが異様でないなら、何を異様を呼べばいいのか僕にはわからないよ」

 あの涼しい表情や言葉の裏に、どんな企みを潜ませているのやら…。

 リッターは複雑そうに呟いた。

 目的のために手を汚すことも厭わない冷酷さを持ちながら、漁夫の利を選ばず、ワールド全体の安寧を促したヨミの言動が解せないのだろう。

 しかし、もしかしたら。そう、もしかしたら。

 大半のプレイヤーはヨミを警戒するあまり、何重にもバイアスをかけているのではいかとも思うのだ。アヤの中のヨミの印象は、比較的単純なもの。

「ヨミさんは聖人君子ではないかもしれない。でも、平等な人だと思う。一見冷淡に見えるのは、平等だから。本当の意味で偏りがない人だと思うの。その分、感情の起伏が少なくて誤解されがちなんじゃないかなって」

 アヤは一度言葉を切り、そして自分の中にある感情を精査し、呟く。

「偏りがないから、一緒にいると落ち着くの。楽しいと思う」

 アバターの奥にいる現実世界の彼が何者であっても構わない。その目がどこを見ていてもいい。

 必要以上に詮索せず、踏み込まない。その距離感が…心地いい。

 執着しない彼が垂らしている気まぐれな蜘蛛の糸。それを握っているアヤ。

 切れなければいいと思ってはいても、しがみつく気はない。だから、今も彼と繋がっていられる。

「でも楽しいと感じている自分が、少し…怖い」

 今まで感じたことがないに不安を覚えるのだ。

「………」

 無言で姉を見下ろすレイラスは彼女が珍しく本心を晒していることに気を重くした。

 弟と幼馴染の前だからこそ、素の感情が漏れ出しているのだが…。

 想定した以上にアヤはヨミの本質に近づき、惹かれている。

 誰にも揺らせなかった彼女の心を揺らす男が現れたというのか。

 不愉快だ。

 これでアヤが泣きを見ることになったらどうしてくれるのだ。

 …あぁ、クソ。やっぱりに乗るんじゃなかった。

 苛立ち、内心で舌打ちする。

 漏れ出したアヤの本音にレイラスと近しく、けれどもっと単純な感情で苛立ち、震えるリッターがいた。アヤの両肩を掴み、軽く揺さぶる。

「駄目だよアヤちゃん!あいつだけは駄目だ!あんな得体の知れないやつ、リアルだってまともなわけがない!君が心を許していい相手なんかじゃない!」

 それは自分であるべきなのだ。何年も彼女を想い、見てきた。

 ゲーム世界の仮想兄などに彼女が心惹かれていいわけがない。そんなのは、許せない。

 よりにもよって、ヨミなどに。

「君に相応しい男はもっと別にいる。僕は…僕だって…!」

 本当は、君の仮想兄なのだ。

 モルス・ヴァーミリオン襲撃の際に、あの場にいたのは偶然などではない。

 唐突に公式から強制的に与えらたオーレリアンの耳飾りがヘルムの中の耳に今も有る。彼女にその事実を伝えないのは、彼女の兄になりたいわけではないから。『兄』では、困るから。

「……リ…リッターさん…?」

 語気を強めて言い募るリッターの勢いに驚き、戸惑うアヤから引き離すようにレイラスは腕を掴んで解き、間に入る。

「それくらいにしてもらえます?…

「……っ…!」

 冷めた眼差しと声音のレイラスに名を呼ばれてリッターははたと我に返る。

 アヤがヨミに無意識に惹かれていると感じ取って動揺してしまった。恥じ入る。

「…ご、ごめんね、アヤちゃん…。は君にあるのに…」

「ううん、大丈夫。わたしのことを心配してくれたんだよね」

 アヤは弟の後ろから覗き込むように笑みを浮かべた。いつもの、心を閉ざした笑顔だ。やるせなくなる。

 なぜ僕では駄目なのだろう。

 君に問いかけてみたくなる。

 けれどきっと君はいつものようにはぐらかしてしまうのだろうね。

「えーっと、ふたりとも…ごめんね。変なこと聞かせちゃって」

 微妙な空気が漂い、アヤは後悔する。やはり、言葉にするべきではなかったか。

 ゲームの中に本音を持ち込むべきではなった。

「…君は悪くないよ、アヤちゃん。原因は…諸悪の根源はあいつ…ヨミなのだから」

 アヤが心を開きかけているヨミへの嫌悪と嫉妬心にリッターの奥にいる瑞希は表情を歪めた。

「え?ええ?…それは違うよ…?!」

 慌てて誤解を解こうとするも無視される。

「一度、あいつとは話しておいた方がいいかもしれない」

「話ねぇ。もうさっさと襲撃すればいいんじゃないですか。『将を射んと欲すればまず馬を射よ』っていうし、あの人ご自慢の飛空挺爆破します?俺もあの人には思うところがあるんで手を貸しますよ」

 などと物騒な提案をする弟に、アヤはぎょっとして見上げる。

「ちょ、あんた何言ってるの?!」

 飛空挺『アヴァリスの矢』を爆破?!…ただのテロ行為ではないか。

 ヨミはもとより、アヴァリスのクラン全員を敵に回すことになる。……命知らずどころの話ではない。

「………………冗談だよ」

 ふいと弟は目を逸らして嘯く。

「その間は何?!やめてよ?!ヨミさんたちに失礼なことしたら、しばらく口きいてあげないから。そのつもりで行動しなさいね?!」

 不服そうな弟に釘を刺すついでにリッターを見やると、彼もなぜか目を逸らす。…まさか、弟の提案に乗るつもりだったのでは…。

「…とりあえず、まあ…アヤちゃんに嫌われたくないから襲撃はしないでおくよ…今は」

「今は?!」

 またもぎょっとするアヤをスルーし、リッターは続ける。

「ところでアヤちゃん、ヨミを呼び出せる?」

「え?…う、うん…それは大丈夫だと思うけど」

 海の家でタイミングよく顔をあわせることは稀なのだが、実は以前より連絡が取りやすくなったのだ。管理NPCのミオを介することによって。

「…でも…喧嘩したりしない?」

 甚だ不安だ。

「大丈夫だよ。いきなり斬りつけたりはしないから。アルビオンを自治しているキャメロットは騎士道精神が根底的な理念だからね。この地域での私闘はアルトリウスの許可が必要なんだ。…まあ、そういうわけだから…安心してヨミを呼び出して欲しい。あいつがどんなつもりで君と交流しているのか…僕自身の言葉で確かめたい」

「…賛成。俺もこの機会にあの人を見極めたいし」

 彼らがアヤを見つめる。

「…ふたりとも…」

 ヨミを警戒しすぎなのではないだろうか。

 戸惑う気持ちはあるが、断る理由はない。ヨミの意思次第ではあるのだが。

「…わかったわ。とりあえずヨミさんにお願いしてみる」

 アヤは小さく頷いた。


 その後、ミオ経由でアヤの伝言は無事ヨミに伝わり、アルビオンに召喚することに成功するのだが、しかし。

 彼女はすっかり失念していた。

 ヨミとグレートギルドとの一通りではない関係性を。

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