天国にて君を待つ。

しのののめ

 

 俺は、妻のことを一生かけて守るって、決めたんだ。握りしめられた手は暖かく、握り慣れた手だった。意識がもうろうとするなか、はっきりと、優しく耳によくなじむ声が聞こえる。


「あなた、私の事が心配?」


 あぁ、心配だ、いつもドジばっかりする君だ、俺が居ないと、何をしでかすか気が気でない、そう思うが、言葉は喉に差し掛かったあたりでプツリと途切れて、声は出ない。しかしなんとか話そうとしている俺を見て妻が続ける。


「心配しなくたって、大丈夫よ、あなたが過保護なだけなんだから」


 そうか、おれが過保護なだけだったのか、でも心配なことに変わりはない。


「ねぇ、私を愛してくれて、守ってくれてありがとうね……来世では私なんかよりもっともっといい人を見つけるんだよ」


 妻は笑顔でそういう、そうだこの笑顔に俺は惚れたんだ、どんどん身体が冷たくなっていく、いよいよなんだろう。


「紗季、来世なんて……どうでもいい………俺は、天国で君を待つよ……」


 いつも笑う妻の最後の顔は泣いていたように見えた―——―







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