第28話 文化祭 No.2

「これより第三十九回、文化祭を始めたいと思います。まず始めに校長先生からの挨拶です」


 文化祭の開始時刻になり、校長先生の挨拶が放送で校内に鳴り響く。

 そして挨拶が終わると、放送委員の生徒にまた変わり注意事項などが話される。


「以上を持って、開始宣言は終わりです。皆さん安心安全に文化祭を楽しみましょう」


 そしてチャイムが鳴り、皆呼び込みの準備を始めた。

 が、女装がマジで恥ずかしい…


 何故か俺と大雅は普通の女装ではなくて、俺はCAの格好で大雅はチャイナ服を着る事になった。

 そして女子達は俺と大雅の服を見ながら、ヒソヒソと話しているのが聞こえた。


「月舘君って、女装似合うよね」


「分かる!もはや女子でしょ。カツラ取らなかったら男だと思わないし」


「桜内君はなんか面白い。チャイナ服が似合ってないからかな?」


「それもあるし、元から面白いから面白く見えるんだよ」


 なんか俺、褒められてる?

 それはそれで、ちょっと嬉しいかな。

 自分では似合ってないと思っていたけど、女子から認められるとそれはそれでちょっとニヤけてしまう。


「おい、何一人だけ褒められてニヤニヤしているんだよ。俺なんか、面白いとか言われてるんだぞ…」


 横から泣きそうになりながら、俺に話しかけてくる大雅。

 そんな事言われても女子の判断だしなって思いながら、大雅を宥める事にした。


「まあまあ、俺は大雅のチャイナ服似合っていると思うぞ」


「顔の頬が緩んでるから信用できないが、一応ありがとな」


 えっ、そんな事はないと思うけど。

 俺は普通に本心で話しかけたのに。


 するとドアの外から話し声が聞こえてきた。


「女装男装カフェだって!面白そうだから入ってみようよ」


「面白そうって…まぁ、私はいいけど」


 それと同時に、一組目のお客さんが入ってきた。


「いらっしゃいませ。こちらでご注文してから席へと案内しますので、メニューをどうぞ」


「あっ…はい。ありがとうございます」


「分かりました」


 入ってきたのは女子二人で、上履きの色を見ると後輩だと分かる。そして、接客担当になっていた俺は大雅との話を切り上げ、お客さんにメニューを渡した。


 因みにメニューだが、クッキーと紅茶のクッキーセットとホットドッグと紅茶のホットドッグセットである。


「決めました!クッキーセットをください!」


「私もそれでいいです」


「かしこまりました。では出来次第、席へお持ちしますのでこちらの席はどうぞ」


 そして俺は二人を席まで案内をした後、調理担当に注文を伝えた。


「月舘くん、クッキーセット二つ出来たから運んでいいよ」


「了解」


 俺は首を縦に振ってから返事をして、お客さんの所に運ぶ。

 

「お待たせしました。クッキーセット二つです。どうぞごゆっくりお過ごし下さい」


 一言そう伝えて、俺はまた定位置へと戻る。


「奏風って接客業向いてるよな」


「どこがだよ。よくレストランで見るのを真似しているだけだし」


「それを実行できるのが、奏風の凄いところだよな」


「それを言うなら、大雅はさっきから何で隠れてるんだ?」


 俺が接客してる時もそうだけど、今も話しながら微妙にお客さんに見えない位置にいる大雅。

 そんな大雅を見ながら、俺は疑問に思い聞いた。


「えっ…それは、意外とこの服が恥ずかしくて」


「俺も恥ずかしいぞ?」


「奏風のはまだマシだろ!!俺なんかこの曲線美が出るし、脚なんか横の部分でるからすね毛剃ったりと大変なんだよ」


 チャイナ服は確かに色々と手入れ必要だな。


「大雅、頑張ったんだな」


 俺はただそれしか言えなかったが、大雅はこれでよく分からないが落ち着いていた。


 それから午前の部が終わりに近づいてお客さんも落ち着いて来た時、ドアを叩く音が聞こえた。

 音のなる方を向くと、菫姉がやはり来ていた。

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