Appendix 2 用語集(1)
※ 本編を読んでいて、作中用語がわからなくなったときにご参照ください。
※ 最初からご覧になっても構いませんが、当然ながら本記事をお読みにならなくとも本編は楽しめます。
※ ネタバレには気を付けていますが、「魔術師誕生篇」で初めて明かされる設定についてはほぼ記述しています。物語を楽しむ上で、致命的なネタバレは避けた……つもりです。
〈精霊術関連〉
精霊術 Spiritual arts
第二次世界大戦後、アメリカの哲学者にして魔術師であるマイケル・リチャードソンは、この世界に遍く存在する超常的な存在や不思議な力を、検証可能で、反証不可能で、再現性のある、『科学』のような一つの大きな体系にまとめられないかと考えた。そして、彼とその仲間たちが、1950年代後半に提唱したもう一つの科学が、「精霊術 Spiritual arts」である。
精霊術では、この宇宙は全て『
この「
精霊術は、生まれつき使える
術の系統分類
精霊術では、術を行使した際に発生する力場の属性によって
まず、術師の情報の認識や伝達、判断力に作用する「超感覚的知覚系統(識術) ESP extra-sensory perception large-system」と、術師が外界の物体などに作用させて物理現象を引き起こさせる「念動力系統(力術) PK psycho kinesis large-system」の二種類に大別される。念動力系統はさらに「抽象現象群(理術) MTK meta physics kinesis group」と「物理現象群(気術) PSK physics kinesis group」に分類され、物理現象群は「火術系 PYK pyrokinesis」「水術系HYK hydrokinesis」「風術系 AEK aerokinesis」「地術系 GEK geokinesis」「光術系 PHK photonkinesis」の5つの基本系(basic small-system)と、「電術系 ELK electrokinesis」「影術系 SHK shadowkinesis」「生術系 BIK biokinesis」の3つの応用系(applied small-system)とに分類される。
スピリッツの分類学
この世界に存在するスピリッツは、いくつかの種類に大別できる。
一つ目は、「物質的精霊
二つ目は「|神霊的精霊
三つ目は「生物的精霊
力場と格律
「霊的格律
二つの霊力場が共振を引き起こすことがあり、それを「霊力場共鳴
現代実践魔術 Pragmatic magical arts
1950年代後半、リチャードソンは「誰でも学べて使うことのできる、スタンダートとなりうる技術と教養」として「現代実践魔術
現代呪文は、大きく分けて次の三つの大構造からなる。「
呪文には、呪文を補助するための《指示呪文
勁路
術師の身体をめぐる実体と霊体の中間的な器官。霊力はこれを介して体内外を循環する。特定の術を行使することによってこれが疲労することを「勁路負担
「霊極
全宇宙の霊力が集積された特異点である異空間と、そこへつながる次元の裂け目。1960年代初頭にリチャードソンと、その友人である魔導物理学者ノーマン・レモンによってその存在が示唆されたが、結局証明することはできなかった。その後、2012年に因幡現世が発見されたことにより、「門」が人間を宿主としてこの世に顕現するのだということが判明した。このことは術師界でも限られたものしか知らず、知る者は「門」の宿主のことを
現在確認されている「門」は、現世の〔
なお、霊極には千切れた時計塔が四角形を描くように浮かんでおり、賢治と現世の〔鍵と扉〕はそのうちの一つから与えられている。したがって、残る三つの「門」がこの世界に出現する、あるいはもう出現しているのではないかと考えられる。
〈世界観〉
術師界と汎人界
術師によって形成された社会を「術師界
術師界成立の切欠は、第二次世界大戦まで遡る。戦勝国側はアメリカを中心として、「大戦の原因の一つとして、科学への盲信の余り「もう一つの科学」と呼べる領域を侵したことにある。だから、この『もう一つの科学』と呼べる領域にも、科学の世界と対等な、国家のような社会共同体が必要だ」と考えた。だが、術師界の技術を戦後の混乱に乗じて悪用されないよう、情報統制する必要が有った。そこで、それまで明確ではなかった術師の世界(術師界)と術師以外の世界(汎人界)を徹底して線引きする、分離政策を施そうと考えた。それを実行する組織として戦勝国側は、『国際術師界共同体』、通称『共同体』という術師結社を設立した。共同体は、国連に加盟する全ての国にこの分離政策を行った。
そして日本においても、国連加盟前より術師界を設立する計画が進められた。そうして国連に加盟した1956年、日本政府は「術師界に関する法律」(通称術師界法)を発布したことを根拠として、1957年4月1日に日本術師界を創設した。
術師界の政治機構は、魔導院議会・術師界行政府・魔導最高裁判所のそれぞれが立法・行政・司法を司っており、汎人界と同じ三権分立構造になっている。基本的な行政区画の単位は「術師界特別指定自治区」であり、それぞれに置かれた地方自治体が統括する。一都道府県に一つ以上置くことを原則として日本全国で67か所ある。首都は、東京湾に浮かぶ人工島の上にある新東京自治区である。総人口は1,122,650人で、日本人の112人に約1人が術師という計算になる。自治区は、山間などを利用して作られることが多い。山のなかは神霊的精霊の存在など、霊力場が乱れやすく、予測し難い現象をたびたび引き起こすからだ(≒かつて山は異界だった)。こうした俗に異界や魔境といわれる山を利用し、術師界の結界を張っているのだ。別の言い方をすれば、「神域に守られている」という感じである。これを「界境 xoundary」と呼ぶ。現在では界境は人工的に作り出すこともできて、新東京自治区がその一例である。
術師界自治区は全て「術師界IC」と呼ばれる、隠された道路から入る事ができる。汎人にわからないよう、一見して何もないような場所に術はかけられていて、そこで「-・・- ・・-・・・・ ・・-(ま ど う)」というモールス信号を何らかの形(杖や車のライトなど)で送ると、空間系魔術による亜空間トンネルに移動して、術師界に入れる仕組みになっている。通行者は、受付に「術師界登録者カード」を提示するよう義務付けられている。
なお、術師界自治区の名称は旧令制国(~州)の名称が採用されている。全部で67箇所存在(2017年現在)する。ただし、備州など読みが他の自治区と被るもの(尾州・びしゅう、など)や、奥州・越州など範囲が大きすぎるものは、この命名法に縛られない。また旧畿内五国(山城・大和・河内・和泉・摂津)は、そのまま自治区として名前が採用されている。他の例外は、新東京、円島、遠野、琉球など。
円島及び円島自治区
本作の主要舞台。平塚海岸の東端から相模湾へと突き出ている、江ノ島のような
日輪山と月輪山に挟まれる形で、「円島自治区」は存在する。原型は因幡清一郎とその一派が拠点にしていた「
清丸町の西には「
亜人 Demi-homo
超能力を使える人間のこと。かつて妖怪や妖精と呼ばれた存在で、鎌鼬、化け狐、天狗、サラマンダー、ヴァンパイア、人狼など、無数の亜人が術師界で生活している。現在術師界では、ヒトの術師による亜人への差別が問題となっている。
日本の魔導教育
日本の魔導教育は魔導学校という教育機関によって学習するが、汎人界における学校制度と同じ、六・三・三・四制になっている。大きく違うところは、国数英理社といった既存の科目に、『魔導科』という専門の授業が加わるところである。
『魔導』の授業は小学一年生から習い始めるが、本格的に呪文を教え始めるのは三年生からであり、それまでは汎人界の『せいかつか』とほぼ同一の『まどう』という名前の授業がある。
中学から、魔導科は『
高校に入ると、魔導に関する科目は三つに増える。一つが『呪文学』でそのまま。『精霊学』は、『魔導物理』『魔導化学』『魔導生物』『魔導地学』の四科に分かれる。三つ目の『魔導史』は、術師界成立後とそれに至るまでの歴史を習う。分量が『日本史』『世界史』と比べると少なくなるため、『政経』の内容もそれなりに入る。これは今までの『魔導科』には入らず、社会科の一部となっている。
大学では、学部・学科制となっており、汎人界と変わらず、自分の専攻する勉強をするのみである。
また特別訓練魔導学校という、教育機関がある。これは、生まれながらに山に暮らしていて社会常識が全く身についていない真祖などが、社会に出るために勉強する施設である。
術師結社 Artists Order
2人以上の術師が集まってできる、術師界の基本社会構成単位。「個人」と同等の権利主体となる点で、汎人界でいうところの『法人』にあたる概念。一般企業、公的機関、学校、病院、政党、市民団体、宗教団体、ボランティア団体、NPO……術視界におけるあらゆる組織は、術師結社である。妖魔同盟や退魔連合のように、複数の術師結社同士で連合を組んだり、傘下に置いたりする術師結社を、「総合術師結社」と呼ぶ。代表の呼称は、原型となった西洋の近代儀式魔術における魔術結社の名残で、「首領」が使われていた。だが、現在は一部の政治結社や宗教結社をのぞいて、使われないことが多い。
妖魔同盟と退魔連合
日本の術師界には、「
妖魔同盟、通称「同盟」と呼ばれる組織は、明治時代に因幡清一郎の手によって立ち上げられた、帝国から迫害された亜人や魔術師を保護し、相互扶助するための組織である。因幡は維新前より培ってきた津々浦々に渡る人脈をフルに使い、戦時下の難局もどうにか乗り越えた。結果第二次大戦終結時には、ほぼ全国の術師界にその影響力を行き渡らせるに至ったのである。
この状況を危惧したのが、戦後日本を占領した連合国側であった。既に築かれていた「妖魔同盟」という既存の政治的勢力の存在を懸念しました。そのため同盟と対抗し、抑止力となる勢力を作り上げることを日本政府に要請した。そうしてできた総合術師結社のが、退魔連合だ。退魔連合は、術師界の警察機構である陰陽保安局や魔導警察をはじめ、術師界行政府のいくつかの省庁に強い影響力を持っている。
戦後の混乱期から学生運動や労働争議吹き荒れる六十年代の闘争の時代にかけて、同盟と連合は武力の行使も辞さない激しい衝突を繰り広げてきた。1966年に休戦協定が結ばれて半世紀経過した現在となっては、両勢力の重鎮同士が膝を交わして同一の政策に取り組むことも珍しくはなくなった。だがそれはあくまで表面上でのことであり、水面下においては互いに腹を探りあい、様々な摩擦を引き起こしている。
マガツ
武力による亜人解放を訴える反社会的政治術師結社。活動拠点はインターネットであり、代表者や構成員の素性、その規模などは全く不明である。わかっていることは、「門」の保有者を奪取し、その謎を解き明かしてリチャードソンの権威をガタ崩れにすることと、「門」の力を使って暴力により術師界を解体することを目的としていることだけだ。
マガツの構成員であるべとべとさん使いの亜人・
術師界には、「
一般術師
高等術師
達人
賢者
魔導師
の順になっており、中卒が一般術師、大卒が高等術師、修士が達人、博士が賢者に該当する。魔導師の称号は名誉称号であり、術師界誕生以後でこの称号を与えられたのはリチャードソンただ一人である。リチャードソンの死後、その研究を引き継ぐ目的で発足した学術術師結社・リチャードソン協会は、この「霊極」の謎を解き明かしたものに、『
青い牙 B∴F∴ Bluefang
イソマツの提案でつくった秘密術師結社。現世が首領(団員No.1)、賢治が副首領(No.2)、桐野が会計(No.3)、イソマツが書記(No.4)。桐野がいけだやの舐めクジで当てたバッジ(B・L・U・E・F・A・N・Gの八種類)にヒントを得て、イソマツが考案した。
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