七人の聖女と最後の悪魔

猫目もも

Prologue

始まるは永遠の物語

「神よ! お願いです!

「私の愛する人を、殺さないでください!

「他には何でも差し上げます! ですが、どうか、どうかこの方だけは──!」


 世界を俯瞰する世界樹。

 根元にて、全身を血に塗らした青年が焦りを帯びた声で泣き叫んでいた。

 膝をつく彼の腕の中では、命を零し続ける女性の体が抱きかかえられていた。

 長く艶やかな髪を地面に散らした女性。彼女は胸から大量の鮮血を溢れさせ、今に事切れてもおかしくはない。


 青年は女性の蒼白な頬に、悔し涙を流した。

 それは一滴とはいかず、何滴も何滴も続いて落ちる。

 不快であるはずが、女性は苦しそうに眉をひそめるだけで、降ろした瞼を再び上げることはない。


「神よ、どうして──」


 青年は唇から血を流し、遥か彼方の世界樹の樹頭を仰ぐ。


 そして自身を嘲笑するかのごとく息を吐いて、


「私達を、愛してはくれないのですか」






 青年の長い長い物語は、まさにここから始まった。

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