女の胸には男のロマンが詰まっているなんて真っ赤な嘘よ!
さいとう みさき
おっぱいは人類の宝です(笑)
新しく買った下着の洗濯が終わったのでいそいそと脱衣所にまで持って行く。
今日の身体測定でも完全にその数値は上がっていた。
「やっぱりそうだったよね、最近きつかったもん」
そう言いながら私はまずお風呂に入る。
シャワーを浴び軽く体の汚れを落としてから湯煙の中、鏡に映る自分を見る。
にへっ
うん、こう見たって大きくなっている。
幼馴染の和弘には散々まな板だのおろし金だの馬鹿にされた。
だけどそれは去年までの事。
中二になった私の体は順調に成長をして女としてのシンボル、おっぱいだって着実に大きくなっている!
「ふん、な~にが女のおっぱいには男のロマンが詰まっているよ! 私にはそれがないからダメだって? どの口がそう言うのよ!? でも今日の身体測定、とうとう、とうとうトップとアンダー差がB判定になった! ふっふっふっふっ、中学生でBだなんて私、順調に行けばお母さんを超えられるかもしれないね!?」
私くらいの中学生になると女子は急激に成長する子がいる。
今までの男の子なのか女の子なのかもはっきりしない子だってそれらしくなり始める。
私だってそうだった。
中学一年までは幼馴染の和弘に散々馬鹿にされたけど、年末くらいから一気に成長を始め胸もどんどん大きく成って来た。
男子の中にはそれをからかう子もいるけど、実際急に胸が大きくなると痛い。
それだけじゃなく、突然先端が敏感になってこすれると痛い。
誰だ、刺激すれば気持ちよくなるって言った奴?
張っている胸なんて生理の時と同じで下手に触る事すら嫌だっていうのに。
しかし、面白いものでそれが過ぎるとどんどん大きく成っていきはっきりと揺れも感じ始める。
体を拭き、脱衣所に出る。
バスタオルでもう一度体を拭いてからタオルを頭に巻き付ける。
そして下着を穿いてからいよいよおニューのブラに手を伸ばす。
「くふふふふっ、とうとう私もBカップ! 和弘のやつ今に見てろよ!」
ピンク色のアクセントで小さな赤いリボンのついた可愛いやつ。
ワイヤーは入っていないので下位置をちゃんと合わせないとおっぱいがずれてしまうので気をつけなければいけない。
「よっと、やっぱりスポブラと違ってフックってやりずらいなぁ。うんしょっと」
前からはめて下位置を合わせ、肩掛けに腕を通してから後ろのフックを手探りで探して止める。
肩掛けの紐をかけて、ブラの中に手を入れ胸を真ん中に引き出すように調整する。
この時下の位置がずれないようにしないと曲がった状態で不快になってしまう。
カップの中にパッドは入れてないから肩ひもを調整して胸を吊り上げるようにする。
「んっ、出来た。おおっ! 憧れの谷間だ!!」
鏡が湿度で曇っているけどそれでもその向こうに映る私の胸元にはしっかりと谷間が見て取れる。
手で鏡をこすって良く見えるようにしてから自分の姿を見る。
「ぬっふっふっふっ~。素晴らしい! ピンク色にして正解だったわね! ああ、憧れの谷間が私にも!!」
思わず鏡の前でポーズと取ってしまう。
前から、横から、そしてわざと両手で挟んで更に谷間のアピール。
思わず笑みがこぼれだす。
「よぉしぃ、これで明日は和弘にぎゃふんと言わせてやる!」
別に下着姿を見せる訳ではないけど、制服の上からだって張り上げて胸の大きさくらいは分かる。
男子だって見て見ないふりしているけどおっぱいの大きな子の胸はいつもチラ見しているもんね。
バレバレだっての。
「もうまな板だのおろし金だの言わせないからね!」
私は意気揚々と部屋に戻るのだった。
* * * * *
「おはよう和弘!」
「ああ、おはよぅ‥‥‥」
幼馴染の和弘は家の前で待ち受けた私に挨拶され眠そうな顔をしていたけどきょとんとしている。
そしてバレバレである和弘の視線。
「何か私に言う事が有るんじゃない?」
「あ、えーとぉ‥‥‥」
わざと前かがみになって上腕で挟むかのような仕草で和弘を下からのぞき込む。
すると案の定和弘の視線は私の胸に行く。
「どうしたかなぁ~、和弘?」
「うぅ‥‥‥ お、お前‥‥‥」
動揺している、動揺している。
内心笑いがこみ上げて来るけど今は我慢。
「ん~? もしかして私の胸かなぁ? 女の胸には男のロマンが詰まっているって言わなかったっけ~? そうすると私の胸には和弘のロマンがいっぱい詰まっているって事よねぇ~?」
ニマニマが止まらない。
今まで散々言いたい放題言ってくれてたのも今日まで。
「うぅ‥‥‥」
唸るしかない和弘。
もう我慢できない!
「どうよ! これでもうまな板だの何だの言わせないわよ!! ちゃんと谷間まで出来たんだからね!!」
「はぁぁああああぁぁぁぁ‥‥‥」
私がドヤ顔で和弘に言い放つとがっくりと肩を落として和弘はうなだれる。
そして私は心底勝利を確信する。
「ふふふんっ! いい気分だわ! さて、学校に行こうかしら?」
「残念だ‥‥‥」
「ん? 何か言ったかなぁ?」
多分負け惜しみの一つでも言っているのだろう。
私はわざと耳をそちらに向けて和弘の言葉を待つ。
「残念だよ、せっかくの貧乳が‥‥‥ 俺、姉ちゃんのせいで、でかい胸って嫌いなんだ。お前ってさ、ちっちゃくてすっきりしているから良いなぁって思っていたのに‥‥‥ はぁぁああああぁぁぁ、せっかくの貴重な貧乳が‥‥‥」
「はい?」
和弘はそれだけ言い、とぼとぼと歩き出す。
そう言えば和弘のお姉さんって胸でかかったよね?
いや、おばさんもそうだった。
だからてっきり和弘も大きな胸が好きだとばかり思っていた。
「あ、あの和弘?」
「うん? なに?」
まるで私を知らない人の様な視線で見る。
固まる私を他所に真っ白になって力が抜けた状態でふらふらと歩いて行く。
「か、和弘ぉ――――っ!!」
私の魂の叫びがこだまするのだった。
誰よ、「女の胸には男のロマンが詰まっている」なんて言った奴はぁっ!!!?
―― END ――
女の胸には男のロマンが詰まっているなんて真っ赤な嘘よ! さいとう みさき @saitoumisaki
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