第50話 上位魔法とキマイラ戦
湖の上で正座……水の上なので土下座とは言わないのか?まあ、とにかく土下座に限りなく近い形で精霊がうなだれていた。
「大体が何で俺達の勝手な会話に割り込んで来て、『よくも悪口を言ったなあ?』とか言うかな?有り得ねえだろ?プライバシーの侵害だろうが!!あ?!」
『プププ、プライバシーとは??』
「何?精霊のクセにプライバシーも知らないの?かなり長生きしてるんじゃないの?ねぇ?」
『ま、まあ、長くは生きて居るが……聞いた事が無い単語なのだが……』
もう完全な言いがかりなのだが、怒り心頭の俺はそのまま押し切ろうとする。
「コッチの会話を盗み聞きした挙句に因縁つけて俺を呼び出すんだからな!コッチはいい迷惑だよ!そのくらいは分かるよね?」
『も、勿論分かっておる……だから良い物をあげると……』
「ほう……良い物をあげようとする者が魔物といきなり戦わせたりしようとするモンなんですかね?!どうなの?!」
『そ、それは……いつものヤツで……』
「はあ??何それ?『それいつもの定期です』みたいに言わないでくれる?あんなモンと戦わせて弱い奴なら死んでるぞ?あ〜!そういう事ですか、エサを撒いてアレで殺してやろうって訳ですか?!中々良い度胸してるな!精霊さんよお!!」
『こ、殺すなどと……ソコまではしない!!タダからかおう……』
「俺もバンパイアの王とガチでやり合った人間だからな!精霊だろうが悪霊だろうが相手になってやんよ!!」
『バ、バンパイアの王……』
《それはホントなの……》
『わ、分かった!こ、これを……』
精霊が何やら蓋が付いてる小さい壺を震える両手で差し出した。
「おい!『眼』鑑定!」
『甘露の雫の壺』
クラス︰A 属性︰精霊
『甘露の雫』と言う甘い蜜が溜まる壺。精霊の加護により使っても翌日には必ず元の量まで戻っている。但し全て使い切ってしまうと枯れてしまうので注意。『甘露の雫』の効能は体力微回復、魔力微回復、覚醒効果、毒回復、麻痺回復。
なっ!……こりゃあスゲェな……俺が喉から手が出るほどに欲しかった甘味である。この世界では砂糖が高級品なので甘味を手に入れるのはかなり難儀な事なのだ。しかしコレはそれを一気に解決してくれる物だ。しかも付帯効果もスゲエな……毒と麻痺回復はかなりの物だよ。
「こ、これは……コレをくれるのか??」
『も、勿論だとも!嘘は言わないわ!』
「そうか!そういう事は早く言ってよ〜。俺も鬼じゃ無いんだからさぁ〜!」
『へっ??』
《……主は料理好きなの》
「なーんだこんなにいいモノ貰えるならもっと早く来れば良かったよ……コレなら色んな料理に……照り焼きチキンとか……ぐふふふ……あっ、あのパンにつけても美味そう……」
《どうやら主の機嫌が直ったの》
『そ、そうなのか……ならばもっといい物をやろう。それには少し頼みたい事があるのじゃ』
「頼みたい事?えーー……コレから戻って色々な料理したいんですけど……」
『そ、そんな事言わずに……次のは精霊の杖だぞ!』
「杖は二つも持ってるからなぁ……」
《二つじゃないの。一つは金槌で杖では無いの》
「えー、ずっと杖だと思ってたんだからもう杖で良くね?」
《金槌が可哀想なの》
『ほ、他にも精霊の剣とかローブとかも有るのだぞ!!頼む!引き受けてくれ!!』
「う〜ん……仕方ないなぁ……何やればいいの?」
『あちらの方角にある洞窟に棲む魔物を倒して欲しいのじゃ。厄介な奴でのう……ここら辺の魔物はおろか動物まで食いまくるから自然の摂理が保てぬのじゃ』
「何の魔物?」
『キマイラとかいう厄介な魔物じゃ……再生能力に長けておる』
俺は【エナジードレイン】が届く範囲がどうか試してみる。うむ、何とか届く……ああ、コイツか……。俺はキマイラに【エナジードレイン】を発動させた。
『お主……今のは闇魔法のエナジードレインか?』
「ほう、俺のスキルの発動を見抜いたのか。流石は精霊さんだね」
『変わった発動のさせ方じゃが……しかし、コレは本来アンデッドの魔法で人間は使えないはず……お主は一体何者なんじゃ?』
「あ、俺の名前はラダル。ココから随分離れた場所の魔法兵だったんだ。転移で飛ばされて来たのだけどね」
『その歳で兵士か……なるほど強い訳じゃな。それにしてもいびつな魔力じゃな……コッチはふむふむ……なるほどコチラで吸い取って居るのか……この様なスキルは初めて見たぞ……』
「俺自身は魔力が少なくてね。それで身体の外に魔力を貯めようとしたのがこのスキルさ」
『何と……そのようなスキルが可能とは一切聞いた事が無い……しかもこちらの玉には……こ、これはバンパイアの……』
「へぇ〜良く見える眼だね。それはバンパイアの王を倒した時に吸収しちゃったんだ。でも俺は上位の魔法を使えないからさ、完全に無用の長物になってしまったよ……」
『ふむ……『器』の問題か……なるほどのう……そう言う事ならば使える様にしてやろう……但し、お主の身体が持たぬから一度使うとしばらく使えなくなるが……』
「ま、マジか??使える様になるならそれでも良いよ!」
『ならばこの腕輪を着けると良いぞ。コレはお前の“器”を護ってくれる。しかし血魔法は絶大な理の力を持つ故、腕輪の効果だけでは“器”を護るのは一度が限界。その後は能力が発揮出来る特殊な理力が腕輪に貯まるまでは使えぬという訳じゃ』
『精霊石『器』の腕輪』
クラス︰A 属性︰精霊
本来の『器』のレベルから更に上の理の力を使える様に『器』の強度を一時的に増幅し分厚くさせる精霊石を装着されてる腕輪。赤く光ってる時に『器』の保護をする。
光が消えると精霊石に理の力が貯まるまでは使用出来ない。
「どのくらい貯まるまでは必要なの?」
『うむ、お主の器ではほとんどの力を使ってしまうから1ヶ月も貯めれば大丈夫じゃろう。その腕輪の精霊石が赤く光るでな。そうすれば使える』
1ヶ月……リーマンの給料日かよ……。
まあ使えなかった事を考えればまだマシなのかも知れない。
「よーし!じゃあ早速キマイラをイワせてくるかな!」
『へっ?!そのまま一人でキマイラに挑むと言うか??あやつは危険だぞ!何人かで行かぬか!!』
「せっかく上位魔法を使える様になってんだから試さないとね!最悪逃げ回ればいいだけだし」
《主はやる気なの……》
『一人では危険過ぎる!!止めた方が良いぞ!』
「大丈夫大丈夫、まあ何とかなるって」
俺は一生懸命に止める精霊をシカトしてとっとと洞窟の方に向かった。
洞窟内の魔力はかなりのものだ……そうだな……ゴブリンキング位はあるかも知れないね……かなりの強敵である。
確か使える【血魔法】はこうだった……自らの血液を【血魔法】により血の盾として使う事が出来る。【血魔法】
により魔力で超強化された血液は自由に形を変えながら使用者を守る。更に何度も血の盾に攻撃した武器は使用者に乗っ取られ持ち主を攻撃する。
それならば俺を守って貰おうじゃないの。
俺は【血魔法】を発動させた……。
ドックン!!
鼓動が一段階上がり身体の中に何が侵食してくる……それが全身に回ると身体の中全部から魔力が噴き出すように溢れ出る!!
身体が軽い……思考もハッキリしてきた……覚醒と言うやつなのか??
俺の魔力に気が付いたのか、巨大なキマイラが俺の方にやって来た。俺は魔法障壁を出現させて金槌に目一杯魔力を注いだ。
『隠密』を発動させた俺は瞬時にキマイラに接近し金槌でぶん殴る!!キマイラはぶっ飛んで壁に激突した。
頭が陥没した様だったがもう再生を開始している。俺は『溶岩弾(マグマバレット)』を連射してキマイラに攻撃を更に与える。マトモに当たってるが直ぐに再生してしまう……厄介だな。
キマイラは俺の位置を匂いで特定した様で襲いかかって来た!!
最初の攻撃は魔法障壁で阻んだのだが、次のファイヤーブレスで魔法障壁を砕き、そのまま俺に炎が襲いかかって来る!!
その瞬間、俺の身体から赤い霧が発せられて炎の前に立ち塞がる!
炎は俺の赤い霧が防いでしまう……コイツはスゲエな……。
それを見たキマイラは怒り狂って爪で何度も何度も切り裂こうと振り回すが、やはり赤い霧に防がれ俺には届かない。
ブレスを何度も吹きながら爪で切り裂こうと俺に迫るが赤い霧により全て阻まれてしまう。そのうち攻撃をしていたキマイラの前足が動かなくなって来た。チャンス到来!!
俺は【暴走する理力のスペクターワンド】を握りながら圧縮を掛けるとワンドが赤く輝いてくる!!俺はそのまま圧縮された魔力を暴走させ『溶岩砲弾(マグマロケット)』を発動した!!
物凄いスピードでキマイラを直撃した『溶岩砲弾(マグマロケット)』はキマイラの顔面にぶち当たり、そのまま身体を貫いた!!そして体内で爆発すると、キマイラの身体が火を噴きながらドロドロに溶けていく!!グロっ!!
そのほとんどが焼き溶けてしまったキマイラだが前足の辺りのドロドロの中から何かが再生しようとしている!!
俺は『溶岩砲弾(マグマロケット)』をもう一発撃とうとすると周りを取り囲んでいた赤い霧が俺の中に戻って行く……しまった!時間切れか!!
俺が『溶岩砲(マグマキャノン)』を発動させようとすると、その再生した小さな何かが俺に飛びかかってきた!!速い!間に合わない!俺がガントレットでブロックしようと手を出すとその腕に乗っかった何かが俺の顔をペロッ舐めた。
「へっ?!」
俺の腕の上で「ニャア〜〜」と泣いたのは顔が紫、身体が茶、手足と尻尾が赤の派手な色彩の三毛猫?であった……。
一体コイツは何なんだ??
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
いつもお読み頂きありがとうございます。
さて、新たなキャラが出て来ました。
猫です……。
この猫がどの様に絡むのか?それは次話でのお楽しみです。
皆様の応援のおかげでPVも凄い事に……。
本当にありがとうございます。
これからも宜しくお願いいたします。
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