第48話 州王様よりの使者

遺跡を出た俺たちが村に到着すると、村中がエラい騒ぎになっていた。

何でも村長が惨殺されたらしい。

そうか……デュラハンを倒したあの時に抜け出た魂達がやったのだろうね。アシュのおっちゃんが言ってた通りになった。村長の最期を聞いていたアシュのおっちゃんは苦虫を噛み潰したような顔をしていたよ……。

俺とアシュのおっちゃんは村人を助けた事により村長の企みが暴露されて、一躍有名人となった。

スタンピードを防いでくれたと村中に感謝されてちょっとした祭りとなった。

しかし、この世界は何かあると必ずと言っていいくらいお祭り騒ぎになるなあ。まあ、それだけ娯楽が少ないのもあるんだろうね。しばらくは神輿に担がれてやるとするか。


何日か後に村は村長の代理を立てて、俺とアシュのおっちゃんに改めて感謝の意を示してくれた。まあ、たまたまそうなったんだから良いのだけどね。


「この村の危機を救って下さった英雄お二人の偉業を州王様には使いを立てて“デュラハンスレイヤー”としての褒美を頂ける様にしたので、是非州王様にお会いになって下さい」


俺とアシュのおっちゃんは顔を見合せた……この流れって前にもあったよな……。


「いやいやホントにお構いなく……」


「おお……普通であればその名誉に胡座をかきそうなモノだが……流石は村の英雄、その人柄も素晴らしい!!」


何か村長の代理と取り巻きはエラい感激してるけど、俺らはそういうのにちょっとしたトラウマがあるのでねぇ……出来ればあんな事はアレっきりにしたいのよ!!


まあ、そう簡単にくつがえる訳もなく……おらが村の英雄として祭り上げられてしまった。トホホ……。


そして2日後、村人達からの熱い送迎を受けながら俺とアシュのおっちゃんは西遊記ならぬ東遊記ばりに再び東へと向かう事となった。と言っても俺達は帰るだけで、ありがたいお経を取りに行く訳じゃないけどね!

村から出てしばらく進んだ後、アシュのおっちゃんがボソッと呟いた。


「しかし困ったなあ……また嫌な予感しかしねぇが……」


「……気が合うね…俺も同じだよ……」


デュラハンスレイヤーとして州王様から褒美をって前のゴブリンスレイヤー時と全く一緒の流れなのよね……。村の人達にはまさか前にやられたゴブリンスレイヤーの件を話す訳にもいかないしねぇ……。

あ〜鬱だわ……。

とりあえず州都まではまだ先だしゆっくり考えれば良いよね。



そう思ってた時期が俺にもありました……。



次の村に向かっていた俺たちの前に明らかに何処かの騎士団と思われる様な集団が向かって来る。何かあったのだろうか?などと思っていたのだが……。


「少しお尋ねするが、もしかしてデュラハンスレイヤーの御二人とお見受けしましたが……」


何か仰々しい格好の騎馬隊が俺達を取り囲んで、このような事を聞いてきた。


「はあ……まあ、そんな風に言われてる様な……」


「おお!!やはりそうでしたか!我らは州王様の使者として御迎えに参りました!」


「そ、それは御丁寧に……」


「失礼ながら村長からの書状などを預かっておりませぬか?」


俺が村長代理から受け取った州王様への書状を出すと使者の人は確認をしてから、何故か満足気な顔で俺に書状を手渡した。


「では我らと一緒に州都に向かいましょう!!」


こうして有無を言わさず俺とアシュのおっちゃんは州王様の使いに連行される事になった。彼らは俺達の為に騎馬を連れて来てくれたが、俺は馬に乗れないのでアシュのおっちゃんの後ろに乗る事になった。

正直に言うとものすごくケツが痛い……。


俺は『眼』を上空から監視させた。この人達を信用しない訳では無いが、警戒は怠らないつもりである。


バリグナタ州の州王様の使いとして来てくれたのは、州王様の近衛騎士団の人達だったのだ。近衛騎士団の副団長のローレスさんは副団長だけあって隠してはいるがかなりの魔力の持ち主である。他の面々もかなりの実力者なのは動きを見れば分かる。俺も伊達に伍長なんてやってなかったからね。

ローレスさんの話によるとリスカンドル州の“とある出来事”があり、それで念の為にと州王様が使者を派遣したのだと言う。


「何でもリスカンドル州の衛兵の連中が村を救ったゴブリンスレイヤー殿に喧嘩を吹っかけた挙句、更に州兵も加わって追いかけ回したとかで……最終的にはゴブリンスレイヤー殿を激怒させた挙句に何の褒美も取らせずに立ち去られたとか……。リスカンドル州の州王デルナドは大慌てで探させたらしいが、その行方はようとして知れなかったそうでな……全く、英雄に無礼を働いた挙句に逃げられるとは良い笑い物よ!フハハハハ!!」


うわ〜あああぁぁ……笑い物とか言われてるううう……。心無しかアシュのおっちゃんも顔色が悪い。もうリスカンドル州には絶対に戻れないな……まあ、頼まれても戻らないけどね!!


「まあ、その様な間抜けをせぬ様にコチラから迎えに来たと言う訳ですよ。行き違いにならずに本当に良かった」


「そ、そうですか……その様な事があったとは“全く”知りませんでしたよ……ハハハハ……ねぇ?」


「お、おう、そうだな。“全く”知らんな……」


これ以上はアシュのおっちゃんがヤバい!ボロが出るのも時間の問題だ。何とかせねば……そうだ!ココは誤魔化すに限る!料理でも振る舞うとするか!


「わざわざ出迎えて頂けて我々は感謝せねばなりませんね!そうだ!もし良かったら料理などを振る舞いましょう!」


「そ、それは良いな!こう見えてラダルは料理の達人でして……」


「いやいやその様な真似をされては……」


「こちらの感謝の証ですよ。これもデュラハンスレイヤーと旅をしたと言う話の種だと思って気楽に食べて下さいな」


俺は有無を言わさず料理を作る。

リュックの中の魔導鞄から調理用の魔導具と食材をバンバン出すと近衛兵の皆は驚いた様な顔をしていた。

とにかく具沢山スープは時間もかからないから……ジャイアントスパイダーの脚を使って出汁を取りながらスパイシーな感じに仕上げるか。

ヘスティア師匠の薬草をこちらで購入したスパイスと共に具材と煮ながらスープを作っていく。それと同時に串焼きの要領でオーク肉を焼きとんにしてみよう。辛めのスパイスと薬草にオーク肉を漬けてから焼いていくと良い香りがして来る。

ローレスさん達、近衛騎士団の面々も珍しい料理なのか興味津々の様だ。


薬草と香辛料の具沢山スパイダースープとオーク肉の漬け焼きとんの完成だ。

先ずはスープを飲んでもらう……どうかな?


「こ、コレは……」


「う、美味い!!」


どうやらツボにハマってくれたみたいである。俺とアシュのおっちゃんは皆に料理振る舞いながら、更にスープを使ってインディカ米を炊いてパエリアを作っていく。


「この料理は食べた事が有りませんな……何という料理で?」


「コレはパエリアと言う米料理ですね。インディカ米という長細い米を炊いて出汁を吸わせるんです」


「こちらには無い食材ですな……こんな貴重な物を頂いて、かえって申し訳ないですな」


「良いんですよ。皆さんの美味しそうな顔が料理を作った甲斐があったと言う事ですからね」


俺は調子に乗って結構な本数が入っていた『アワモリ』まで飲ませてしまった。コレがローレスさん達近衛兵のツボにハマって宴会のようになってしまった……野宿なのに……。この後は飲めや歌えの大騒ぎになった。多分ローレスさんたちは話を受けてから夜通し走って来たのだろうから変なテンションだったんだろうね……。

最後はアシュのおっちゃんまで酔い潰れて皆を寝かせたのは俺だった……。


《皆、お酒が好きなの》


「ソウデスネ……」


結局、朝まで俺と『眼』で周囲の見張りをする羽目になった……解せぬ。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇




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