これは出会うためか? 仕返しのためか?
とりあえず願掛けするしかないよね
この世は不公平だと実感が沸く。
嘉村美玲がなぜそう思うのかというと、つい最近付き合っていた彼氏に二股をかけられたうえにこっぴどくふられてしまったのだ。
ただ一言
「お前みたいなブスとつきあってやったんだから感謝しろよ」
だというものだった。
正直ふざけんなーーって感じになった。
それと同時にそんなくず野郎に惚れてしまった自分の見る目のなさに自暴自棄になりそうになる自分がいる。
今度こそは素敵な男性と出会いますように
そういうわけで、美玲はこの理不尽な事態をどうにかしてもらおうと思って佐賀市内から遙々鹿島の祐徳稲荷神社へと向かうことにした。
佐賀駅を出発して肥前山口駅で長崎方面の電車に乗り換える。
そして、肥前鹿島駅でおりて、あとは祐徳稲荷行きのバスに乗り込むというルートで向かうことにした。
特急だったら、乗り換えなしでいけるのだけど、お金がおしい。
ということで肥前山口で乗り換えが必須な普通電車で向かうことにした。
通勤時間でもないためか、電車のなかにはほとんど人の姿がなかった。
老夫婦らしき人が二人ならんで座っている姿と背広をきたサラリーマン風の若者がいるぐらいのものだった。
だから、ガタンガタンという音がまるでAGMのようにこだまし、窓のそとを流れていく喉かな景色に彩りを添えたているように感じられる。
本当にのどかで平和な時間が流れていく。
それを見ていると、わざわざ祐徳稲荷までいってなにを願うことがあるのかと思ってしまう。
本当はどうでもよいのかもしれない。
あのグズ彼のことも、自分の過ちもどうでもよくて、ただのんびりと流れる時間を感じていたい気持ちになる。
「なにか願い事でもあるのですか?」
ふいにサラリーマンらしき男が話しかけてきた。
なにを言い出すのかと不信に思ったのはいうまでもない。
「あのその」
それなのに無視することもできずに、私はうつむき加減で自分がふられたことや素敵な出会いをもとめていることを話してしまった。
なぜ見ず知らずにサラリーマンなんかにそんな話をしてしまったのか私もわからない。
ただそのサラリーマンはだまって私の話を聞いてくれた。
「見事なくずだ」
「え?」
サラリーマンの呟きに振り替える。
「すみません。なんでもありません」
「要するにあんたはその男に仕返しをしたかとやろう」
「はい?」
なぜ、そんな話になる?
え?
でも、違う方向から声が聞こえなかったかしら?
美玲がサラリーマンをみると、彼は美玲に背を向けてだれかに話しかけていた。
「なんばいいよるとや。むっちゃん」
サラリーマンの声はあせっている。しかし、最初に話かけた時の大人びた話し方でなく、まだ年の若い青年のような話し方をしている。
「だって、そういうことやろう?」
サラリーマンの向こう側から声がする。だれだろうとのぞき混むのだが、人の姿がない。
どういうことなのだろうと、首をかしげているとサラリーマンのすぐとなりのシートから小さな物体が床に落ちるところが見えた。
なんだろうと美玲は確かめるようにみる。
そしてぎょっとした。
そこにいたのは一匹のムツゴロウだったのだ。
「人間ってそういうもんやろうもん。しっかりせんかい。亮平」
しかも、人の言葉を話はじめたのだ。
「ムツゴロウがしゃべったああああああ」
美玲が思わず叫んだのはいうまでもない。
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