【二次創作作品】ピアスで伝わる二人の体温

「のうクラウス、ちと聞きたい事があるのじゃが……」


 膝の上に座りのんびりと寛いでいたフェリシアは、軽く体を動かしクラウスの耳に手を伸ばす。


「なぜおぬしはいつも、片耳にピアスを着けておるのじゃ?」


 クラウスの片耳にあるピアスを弄びながらフェリシアはそう尋ねた。

時々手が耳に当たるのだろう、クラウスは少しくすぐったそうにしながら懐かしむように答える。


「んん、あぁこのピアスか…

 これは俺の誕生日の時、アイオン達から貰ったんだ。

 あいつら、俺が気になってた片耳ピアスを金がねぇ癖にお互い出し合って……。

 まぁそれからずっと着けてる。」


 そう言うクラウスの顔には笑みが零れていた。


「なるほどのぉ……

 とても大事にしておるのじゃな」


 目を細め、優しく耳に触れながらピアスを弄るいじる

クラウスは鼓動が早まり顔に熱が帯びるのを感じた。


「あ、あぁ…… まぁな」


 恥ずかしそうに顔をそらしながら答えるそんなクラウスを脇目に、フェリシアは複雑な感情が渦巻く。

ピアスは見て触るだけでわかる程古い物ではあるが、それでもきちんと手入れされていることが良くわかる。


 ……お互い金を出し合いピアスをあげ、そのピアスを大事にする程には仲が良かったであろう幼馴染3人。

けれど今ではお互いに剣を向け合う関係になってしまった。

そしてその一端は自分が担っている。


 もしかしたら………

そんなことを思っていると顔に少し出ていたのだろうか、不意にクラウスがフェリシアの頭を撫でる。


「……あいつらの事は確かに大事だった。

 でも、俺にだって譲れないものがある。

 遅かれ早かれいつかはこうなっていたかもしれない。

 それにな、俺はフェリシアと一緒の道を歩けて幸せだ。

 だからそんな悲しそうな顔をしないでくれ」


「………ふふ、まったくおぬしは……

 なぜそうすんなり恥ずかしい台詞を言えるのじゃ」


 フェリシアは体を動かし、クラウスと向かい合う様に膝の上に座り直すと、

腰に手を回し、顔を隠すように胸に押し付ける。

髪の隙間から見える耳は朱らんで見えた。


「その…なんじゃ、わらわもおぬしと…クラウスと一緒に歩めて…幸せじゃ。

 だから………

 これから先も、わらわと一緒に………いや…」


 ふと一抹の不安が溢れ出る。

確かにクラウスの言葉は嬉しかった。

それこそ複雑な気持ちが解消される位には。

それでも…


 種族の違い、自分の使命、幼馴染だった勇者たち、そして邪神。

尽きない不安の種がフェリシアの顔を曇らしていく。

ふと、クラウスが肩に手を置き、顔を上げさせ頬に手を添える。

迫りくるクラウスの顔。

少しカサっとした、されど温かい何かが唇に触れる。

しばらくすると、クラウスの顔と心地よい感覚が離れていった。


「……言っただろ?

 そんな顔すんなって。大丈夫。

 俺とフェリシアならなんだってできる。

 そうだろ?」


 その言葉にはきっと何も確証なんてない。

だが、フェリシアを勇気づけるには十分であった。


「………………き…す?」


 十分すぎる程だった。

フェリシアはキスされたと認識すると、頭から蒸気を出し、顔を林檎の様に真っ赤にさせると、ふっと意識を失いクラウスにもたれ掛かる様に眠った。


「あー………顔が熱いな…」


 そう一人ごちるクラウスは、それでもフェリシアを落とさぬよう強く抱きしめ、なんて声をかけようか考えることにした。

フェリシアが目を覚めるまでには顔の熱が引いている事を祈りながら。

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英雄ですが、人間不信になったので魔王を愛することに決めました しぐれ @Shigure_vt

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