第26話 春奈推しの野球バカ(一回)

安藤春奈さんは、私以外の人とは徹底して会話をしない。

話すとしても挨拶や伝達だけで、しかも言葉少なげに終わらせようとする。


だから周囲からは

『極度の人見知り』とか『不愛想で感じが悪い』などと決め付けられてしまい、お陰で完全に浮いた存在になっていた。

それを私は知らなかったから、当初はイジメられているからあんなに暗いのだと思っていた。

けど実際はそうではなくて

安藤さんは只、自分が信じた相手にしか心を開かないだけの

裏を返せば誰も信じない


コミュ障じゃなくて鎖国でもない


『鎖(chain)girl』なのである。


そんなんだから嫌われても平気らしく、A子達の事ですら


『振った男のストーカー女がイジメてきてうっとおしい』


という認識位しかなかったみたいで

鬱陶(うっとう)しすぎて辛かったみたいだけど、相手をするのが面倒くさいから放置をしていただけらしい。


その真実を知ってしまった時の私の凹み様といったら

地盤沈下所の騒ぎでは無い・・・・・



私の勇気を返して・・・・・・・・・。





 打って変わって私と2人きりになると、安藤さんは別人と見間違う程の微笑を浮かべ、更に匠くんを彷彿とさせる感アリアリのマシンガントークを連発する。


凄い変わり様なもので気になり、勇気を出して冗談と本気を混ぜ込みつつ


「もしかして双子で、ちょくちょく入れ替わってる?」と」聞いてみたら


安藤春奈

「それ、面白くない」とドライに返された。


私の勇気を返して・・・・・・・・。



あっ、それと仲良くなった証に、お互い名前で呼び合う事に決まった。




 そもそも春奈と知り合う切っ掛けとなったのは、匠くんの話の中からだった。


「春奈推しがいるって言ってたよね」


最近は東京組のお陰で、満足に匠くんと過ごせていないから


「これはチャンスなのでは!」と考察も弾む。


ビルの一件のお礼方々、恩を売るのも悪くない話


1度会うだけなら、何とか春奈を説得できる・・・・かも?

いや!何とかお願いしてみよう!


ついでに匠くんも一緒に付き添ってもらえば・・・


デ・デ・デ・デッ・デートができる。



このミッションは重大ナリ。



 ここ最近から、昼休憩と放課後は春奈とデートというルーティーンに固定されているので

ランチの際に3度目の勇気を出して、ミッションの説明をした。


すると


春奈「夢が匠くんとデートしたいんだったらいいよ」

と直球を投げてきた。


夢「あbのぼボコん」


春奈「きゃはははっ、ナニそれー」


春奈「私ね、昔トラウマになる位の辛いことがあったんだよね、それ以来、恋どころか人を信じれなくなっちゃって、・・・・」


春奈「だからその人はどうでも良くて、言い方悪いけれど匠くんも」

春奈「わたしね、夢を応援したいんだ、夢が幸せになったら、私も生まれ変われる気がしてさ」


リアルな安藤春奈の声を聞けた。


やっぱりあのスタンスには裏があったんだなぁ


やっぱり皆色々あるよね。



何故か「ありがとう」と春奈にお礼を言い


ミッションを決行することとなった。














 









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