第22話 オルレアンの乙女 (安藤春奈編 2)
教室の中で近くに居ても、A子は全く反応しない。
田嶋さんを甚振(いたぶ)るのに夢中らしく
4人集まって何か話そうとも、簡単に詰め寄れて傍で聞けた。
他の3人も相当なポンコツで、A子に取り入ろうと互いに張り合っては、露骨なおべんちゃらを放っていた。
見ているだけでも反吐(へど)が出そうになる。
私はこんな奴等にヤられてたのか・・・
くそダサイ。
おっと!
早速例の【下駄箱異臭事件】の報告会を始めたので、スマホの録画をオンにして聞く。
あの臭いのはどうやらロシアの缶詰めらしく
それの汁を空になった小さい香水のボトルにスポイトで移してから、ZIPロックに入れて校舎に持ち込んでいたらしい。
使い終えたボトルは3人の内の1人がトイレで洗って、田嶋さんの教室のゴミ箱に投げ捨てた様だ。
後で田嶋さんの持ち物にでもするつもりね。
あそこのクラスの子達は、全員で田嶋さんを攻撃しているみたいだから、A子の援護射撃位は喜んでするでしょうね。
そうはさせない。
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隣のクラスを見てみると
何故だか田嶋さんが机ごと廊下に出ていて、それを大勢の人が取り囲んで冷やかしていた。
罵声が聞こえてくる
人を何だと思っているのだろうか?
田嶋さんを何だと思っているのか?
腹立たしい。
腹立たしいから
この光景を録画する。
田嶋さんの戦っている雄姿を納めたいとも思った。
彼女は戦士だ
無言で抵抗することしか出来ないけれど
理不尽な奴らに屈服しないで耐えて
反撃の時を待つ戦士だ。
私はあそこまではされていない。
端から見ていても苦痛極まりない
あんな攻撃までは受けていない。
そんな彼女は私の苦痛さえも引き受けた。
何もできずに
只カメラを向けるだけの自分に腹が立つけれど
いやいやここは冷静に
心を鎮めて
計画を進める。
チャンスなので教室に入ると
案の定皆廊下に出ていたので、簡単にゴミ箱を漁れた。
あった!
ハンカチでそれを掴む
少し匂いがするから間違いない。
見られていないかチェックするも問題なく、事件の証拠品を労せずにゲットできた。
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放課後もA子をマークする。
私は昨日までこの学校が大嫌いだった。
だからフラッグシップっぽい制服も嫌いで
登下校の時は決まって私服で移動していた。
少しでも着たくはない。
しかし今回の追跡では私服が必要と判断し
大概は駅なのだけれど、今日は学校で着替えた。
更に目深(まぶか)に帽子を被って変装?すると
あの間抜けな4人衆にはバレないだろうと思った。
推測通り気付かなかった。
尾行を続ける・・・・。
A子の延長線上には
田嶋さんが居るから
細心の注意を払う。
田嶋さんとA子が駅の西口で揉み合いになり、付近のビルの狭間へと移動していく。
慌てて間を詰めて録画を始め、動向を伺う。
。
A子の「謝れ」と叫んでいる声が聞こえてきた。
完全に脅しに掛かっている。
更に土下座を強要し
土下座させてから
蹴った。
なんて事を・・・・・。
散々蹴った後
4人ではしゃぎながら立ち去った。
そんな姿を見ていると
我を忘れそうになった。
あいつらはロクな死に方はしない
いや、させてはいけないと思った。
足癖の悪いカスめが。
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日が変わると更に悲惨な事になっていた。
彼女(田嶋夢)は学校から犯罪者にされていたのだ。
A子に暴行って?
冗談じゃない!
ここの教師達もアホなの?
少し冷静に考えたら、犯人ではないと直ぐに察しが付きますけど
いやいや
なんで一方通行で信用するのだろうか?
自分の生徒を注意深く見ていないからそうなるのだろうけど
頭が悪すぎる。
職員室での先公の会話は流石に収録出来なかったけれど
教室に戻れば
アホ(A子達)の報告会は聞けれた。
勿論録画する。
胸糞悪い会話を、楽しそうに話すアホ共。
まぁ今の内に笑っておきなさい!
数日後には笑えなくなるから。
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