第5章 VSオズワルド

第63話 【SIDEララ】小鳥を狙う鷹

神殿の廊下を歩いていた私は立ち止まり、無言で窓の外を眺めた。

夜も更けたというのに、月明かりの中、鷹が何羽も飛び回っているのが見える。


「ララ様、こんな時間に、鳥が多ございますね」


隣合って歩く年下の巫女の少女も、私同様窓を見上げる。うーん、察しが悪いわね。


「あれは鳥じゃない。魔法局の魔術。伝書バトを捕まえるための魔法の鷹よ」


「そうなのですか? 初めて見ました」


「本当なら、神殿の敷地までああいうものを飛ばすのは禁じられているのよ。神殿も魔術局に舐められたもんだわ。ここのところ、境界線を越えて神殿にまであれが飛び回ってる……。

私達の伝言を、魔法局が盗み見ようとしてるんでしょうねぇ」


「ルチル様のことででしょうか」


「まぁそうでしょうね……今日はここで。私はこのあと、神官長さまと話があるから」


巫女と別れ、神官長さまの部屋にいく。神官長さまは、よくきた、と私に声をかけると、仕事の片手間に顔を上げた。

私は、手短に要件を切り出す。


「少しお話が。

不思議なスターシアが巷に出回っているそうです」


「ああ、耳に入っている」


「食べると魔力が永久にあがっていくという話で」


「いやはや、そんなことがあるものかのとは思うが」


「私もそう思ったのですが、最初にそのスターシアを買い上げた魔術局の者たちが、商人たちを問い詰めて血眼で追加分を探しているという話ですから、嘘でもないのではないかと……とはいえ、本題はそこではないのです」


「ふむ」


「実は、私そのスターシアを手に入れたんです。こちらを見ていただければ、私の言いたいことがお判りになるかと」


私が差し出したスターシアを手に取り、しばらく眺めてから、神官長さまがさっと顔色を変えた。


「ルチル様の聖なる力が……かすかに残っている」


「そうです。これは、ルチル様が祝福を与えておつくりになったものでしょう」


「これを手掛かりにルチル様が見つけられてしまうかもしれんな……」


「魔術局は、このスターシアを取り扱ったジーラス商会に調査を入れたようです。

多分、このスターシアを取り扱ったジーラス商会には、ルチル様と接触したものがいたのだと思いますが……魔術局がその人物を見つけてしまったら、ルチル様が見つかってしまうのではないかと……」


ふーむ、と神官長さまは唸りました。


「よく調べた、ララ。

後手に回ったが、こちらもジーラス商会に探りを入れ、ルチル様と接触したものを特定するのじゃ。魔術局より先にそれができれば、ルチル様を守ることができるかもしれん。

良いな?」


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