第47話 満月の夜、二人きりのダンス



そこでは、金色の妖精さんたちが集まって、緩やかな輪になって飛んでいました。

彼らは、ルカが来たのを認めると、笑いながら私たちの周囲に集まり始めたのです。


『ヴァイオリノ弾きがきた』

『音楽がきたじゃない』

『パーティーを』

『早く早く』


妖精さんたちの手拍子に請われるまま、彼はヴァイオリノを奏で始めました。

軽快なワルツの音に、妖精たちが手をつないで輪になっていきます。気が付けば、私たちの周りに、それはそれは大きな妖精の輪ができていました。


私の耳元で、まだ輪に加わらない数匹の妖精さんたちが、キラキラと鈴のような声で音をこぼしながら、


『ほらお姫様踊るのよ』

『輪の中で早く』


と囁きます。


「ええと、私はお姫様じゃ……」

『ドレスをきてるじゃない』

『私達が見えるじゃない』

『オェングス様の妖精郷に招かれたのよ』

『お姫様に決まってる!』

「ほら、いこう」


最後のききなれた低い声に振り向けば、ルカがそこにいました。

ヴァイオリノを鳴らしていた手を止め、私の手を恭しく取ったのです。


「その、私、踊りは苦手で……」

「大丈夫、リードは得意だ」


私はまごまごしながら、ルカに手を引かれ、妖精たちのサークルの真ん中に入りました。

妖精たちが鈴のなるような声で歌を歌い、足を踏み鳴らしてリズムをとる音がしました。妖精さんたち、足を踏み鳴らすと、つま弾くようにちりん、ちりん、っていうんですよ。なんとも不思議な……。


私とルカは、妖精の輪の真ん中で手を取って踊り始めました。あたりはキラキラした輝きと、鈴の音のような妖精さんたちの音楽に満ちて、とても不思議で、きれいでした。

それに。

それに、ルカのリードは、すごく素敵でした。

私を引っ張りすぎるでもなく、強すぎもせず、ルカに手を引かれると、次の一歩が、自然と踏み出せます。ダンスはさして得意じゃない私が、ダンスが上手になったという錯覚を起こしそうなほどです。


「うまいな、その調子だルチル」


「ルカのリードが上手だからですよ」


「君はほめ上手だな」


「いえ、本当の、ことですから……」


楽しい、と思いました。

ずっとこの時間が続いたらいいのに、なんて思うほど、すごく楽しい。だって、ルカに体を預ければ、ドレスがひるがえり、軽々とステップが踏み出せます。

まるで羽のある蝶々になったような気分です。しばらく二人で手をつなぎ踊りながら、ルカがふいに口を開きました。


「君がなぜリディス王国から、王命によって追われたのか、ようやくわかったんだ」


「え?」

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