第20話 ルカの好きな人



◇◇◇



「ルカ、お夕飯作るの手伝います」


「病み上がりだが、大丈夫なのか?」


「ええ、ポーションも飲んだし、もう元気いっぱいですよ」


「じゃあ手伝ってもらおうかな」


というやり取りを経て、私はルカと台所で夕飯を作っていました。

私はにんじんを刻みながら、


「ルカは騎士様だったころ、やっぱりモテていたのです?」


とルカに聞きました。


「君、急にどうしたんだ」


ちょっと面食らったようにルカがこちらを向きました。


「だってほら、さっき私にポーションを持ってきてくださったときに、ルカが『騎士の頃から俺にはファンがいっぱいいる』っていったんですよ?

ふふっ、そんなこと言われたら気になっちゃうじゃないですか」


「あーいや、まぁそれなりに……」


「ふふふ、じゃあルカはどんな人と恋したんです?どんな人が好みだったのかしら」


「俺の好み……」


私の言葉に、ルカは長い溜息をつくと、


「わかった、観念して言おうじゃないか……」


と言いました。


「小柄で、大きな目をして」


「ふんふん」


「長い金色の髪、ときおりスカートにキイチゴをいっぱいいれて」


「ふむふむ……?」


「毎日祝福の祈りを捧げ、キラキラした魔法を使いスターシアを育てるルチ、」


「もー!

そういう冗談は結構ですから、ちゃんと教えてください!」


「あのな……。

俺の話なんかきいてもつまらんだろう。どうせなら君の恋の話でもきかせてくれ」


「私は恋したことがないので。

人の恋バナを聞いていた方が楽しいですし、好きですし、興味深いんですよね。

ふふっ」


まぁこれは本当です。巫女は基本的に恋バナ大好きですし、聖女も恋バナ大好きです。多分神殿に男子が少なすぎるせいですね、恋愛も禁止だし。


「しかし聖女であれば、婚約者がいただろう。

確か、魔術局の第一魔術師、だっけか。君は婚約者のこと、好きだったんじゃないのか?」


ふいにきかれて、私は我にかえりました。

婚約者、そうでした、いましたね。第一魔術師オズワルド。

でも、オズワルドのことが好きかと言われると……うーん、別に好きじゃないですね……。


「婚約者……のことは、好き、ではないですね。

うーん、どちらかというと、好きって言うより困った人っていうか……そもそも私、その婚約者に、婚約破棄をされて国を追放されたのです」


「は?どういうことだ」


ルカが目を丸くして私を見ます。

いやぁ驚いちゃいますよね。わかります。私もいまだにどういうこと!?って思ってますから。


「えーと、聖女は魔術局の第一魔術師と婚約することになっていますが」


「ああ、知っている」


「今の魔術局の第一魔術師であり、私の婚約者であったオズワルドが、ある日突然私を神殿から追い出したのです」


「なっ、むちゃくちゃだなっていうか、オズワルドと婚約……!?

どういうことだ、というか今はオズワルドが第一魔術師なのか?」


「はい、というか、オズワルドとはお知り合いですか?」


「いやまぁ、そうだな……、しかしオズワルドが第一魔術師に……なるほど。

君を追い出したのも、オズワルドならやりそうなことだな……」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る