第3話 ラーメンが食べたい

23時。


部屋の明かりを消して、テレビを付ける。

家族が起きてこないように音量を下げて、深夜番組をこっそり見るというスリル。


この時間に放送するドラマは大抵、学園ものか恋愛もの。それも晩ごはんを食べながら見れるようなものではなく、心をえぐるようなハラハラとした展開を迎える。


今日も胸くそ悪い展開でとても眠る気になれない。


テレビを付けたままSNSを開き、ネット民達と来週の展開を予想する。


1人、また1人と投稿が減っていき、我に帰る。



こんな夜中に食事系の番組をしてるのか。


サラリーマンが1人、小綺麗な居酒屋で食事をしている。


小皿に盛り付けられた料理が、1品ずつアップで写し出される。


枝豆、冷奴、焼き鳥、棒々鶏、麻婆豆腐、

〆のラーメン。


「ゴクッ」


思わず唾を飲み込む。


時計を見ると1時半を過ぎている。


ラーメンが食べたい。


1度そう思い込むと欲望は止められなかった。


音を立てないように台所まで行き、電気ケトルでお湯を沸かす。コポコポとお湯が沸く音に、誰かが起きてこないか心配になり、辺りを伺いながら戸棚にストックしてあるカップラーメンを手探りで探す。



味噌、醤油、塩、とんこつ、変わり種でいえばカレー、チリ、唐辛子、さすがにもう2時だ、唐辛子は辞めておこう。


空腹と溢れ出るよだれを飲み込み、手がそれらしい感触を見つける。



焼きそば



これではない、他に、



また、焼きそば



他は、



そば



「カチッ」



お湯が沸いた。

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